【概要】A(30代・女性)はB(30代・男性)と交際関係にあったところ、AはBから継続的に暴力を受けていた。Aは、ある日、Bと口論になった際、激高したBより、爪で引っかく、肘で打つ、ハサミで切りつけるなどの暴行を受け、創傷、肋骨不全骨折、擦過傷の障害を負った。Aは翌日病院に行き、全治2週間の診断書を取得した。
AはBに対する刑事責任の追及を求め、警察に相談に行ったものの刑事告訴の受理を断られた。その後、内閣府が設置するDVサポートセンターの職員が同行して刑事告訴に行ったものの、やはり受理を断られた。そのような状況で当職に相談するに至った。
【結果】Bの行為について、傷害罪での刑事告訴が受理された。
【ポイント】Aは当職に依頼する前、警察に告訴の相談をしたが断られた。また、内閣府が設置する、DVサポートセンターに依頼し、専門の相談員が複数名告訴に同行したものの、やはり警察に刑事告訴の受理を断られた事案であった。
理由は不明であるが、警察は、夫婦間や男女間の暴行事件について、告訴を受理したがらない。本件でも当職から警察に対し、何故告訴を受理しなかったのか尋ねると、交際関係があるので痴話喧嘩に過ぎず、警察が介入するような問題ではない。微罪処分として処理するつもりであったとのことであった。しかし、交際関係があろうとDVは障害罪に該当するれっきとした犯罪である。こちらに告訴の意向があるにも関わらず、告訴を受理せず微罪処分とすることは違法であるので、そのような警察の対応には厳しく対処することが重要である。
2
介護職員がクレジットカード等を窃取した行為について刑事告訴が受理された案件
【概要】A(40代・女性)は障害者総合支援法による障害支援区分6の認定を受け、自立歩行が困難な障害を抱えていた。Aの自宅には複数名の介護士が日常的に出入りしていた。Aがクレジットカードの利用明細書を確認したところ、覚えのない利用履歴が複数記載されていることに気づいた。
B(30代・女性)はAの自宅に出入りする介護職員で、AはBの勤務態度に問題があり怪しいと感じていたものの、決定的な証拠を掴めずにいた。
そこで、クレジットカードを不正利用した人物に対して、刑事責任の追及を行うことを目的として当職に相談するに至った。
【結果】BがAの自宅からクレジットカードを窃取した行為について、窃盗罪(刑法235条)に該当するものとして、刑事告訴が受理された。
Bは起訴された後、刑事裁判が開かれ、Bに対して罰金刑が確定した。
【ポイント】A名義のクレジットカードが何者かに複数回利用されていることは、利用履歴から明らかであった。しかし、その利用がBの犯行であることを裏付ける証拠を欠いていた。
そこで、警察を介して、不正利用が疑われる店舗に連絡をとり、防犯カメラの映像を提供してもらった。そのうち、ガソリンスタンドでの利用について、犯人の車と性別、体格、服装などの映像が出たものの、映像が不鮮明で決定的証拠にはならなかった。また、飲食店での不正利用した際の防犯カメラの映像は保存期間が切れており、映像を確認できなかった。しかし、その際のレシートを分析すると、ポイントカードにポイントが付与されていた。当職の調査により、ポイントのIDからポイントカード保有者を割り出せることが判明し、その旨警察に情報共有したところ、同ポイントカードのIDからBが利用していたことを突き止めることができた。
また、A名義のキャッシュカードで銀行においてキャッシングがなされようとした事実も発覚し、銀行の防犯カメラの映像にBの姿態が写っていた。
上記のような捜査を行い、Bを逮捕し、Bはその後起訴され有罪判決を受けるに至った。
刑事告訴を行うには、犯罪事実の特定が必要であり、犯人が誰か特定できていることが望ましい。しかし本件のように犯人が誰か不明な状況においても、警察に対して、犯人を特定できる情報の提供があれば、犯人が不明が状況においても、刑事告訴を受理してもらえる可能性がある。犯人が誰かが不明な事件であったとしても、刑事事件の追及については諦めず、警察を粘り強く説得することが重要である。
3
遺産分割未了の共有財産の使い込みに対して刑事告訴を行なった案件
【概要】被相続人である母X(90代・女性)が死亡したところ、XにはA(60代・男性)とB(50代・男性)の二人の子がいた。Xの死亡時、X名義の預金口座に数千万円の預金が存在したが、AB間において遺産分割がなされていなかった。
被害者AがX死亡後にX名義の預金口座を調査したところ、X死亡後に預金全額が引き落とされていたことが発覚した。X名義の預金通帳及び印鑑はBが保管していたものの、AがBに預金引出しの件について問いただしても合理的な説明が無い状態であった。
Aは単独で警察に告訴に乗り込んだところ、警察から告訴を断られ、①預金引出者の特定、②同人に対する刑事処罰を求めて当職に相談するに至った。
【結果】X死亡後のBによる預金の無断引出し行為について、横領罪(刑法252条1項)に該当することが警察署において認められ、刑事告訴が受理された。その結果、Bから引き落とした遺産全額の返還の意思表示があり、紛争は解決した。
【ポイント】本件の問題点は①共有財産の使い込みについて横領罪を認めた裁判例が存在しないこと、②Bが犯人であることの証拠が乏しいことであった。
① 共有財産の使い込みについて横領罪を認めた裁判例が存在しないことについて
前例踏襲の特徴が強い裁判の傾向からすると、同種の事例で有罪判決が無いことは深刻な問題であった。具体的には、横領罪は委託者と受託者との間にある委託信任関係に裏切る点に犯罪としての本質が求められるところ、委託者たるXが既に死亡しているので、委託信任関係が観念できないという問題である。
この問題点を突破するため、証拠関係を徹底的に見直し、BからAに対するメールのうち、BがXから財産の処分を一任されていた、という一文を見つけ出し、X死亡後もBがXの財産を委託信任されていた事実の証明に成功した。
② Bが犯人であることの証拠が乏しいことについて
この点については、X名義の引き落としがされた場所を全て調査したところ、いずれも、Bの居住地及び勤め先の近隣のATMから引出しがされている事実が発覚し、Bが犯人であることの証明に成功した。
本件は、弁護士大山が介入する前、主に①の理由、すなわち前例が無いという理由で警察に告訴を断られていた案件であるが、上記のとおり、証拠関係を徹底的に調査することで法的な問題点の克服に成功している。このように警察に一旦告訴を断られた案件についても、証拠面や理論面のフォローにより告訴は可能であることを知って頂きたい。
警察に告訴を断られた案件についても是非ご相談ください。
4
投資詐欺(ポンジスキーム)について詐欺罪で刑事告訴が受理された案件
【概要】A(50代・女性)は、B(30代・男性)から、マンションや高級外国車を対象とした投資運用を行う旨持ち掛けられた。Aは、Bに対して出資を行ったところ、約束通り一定の配当があった。Bを信用したAは、1年半の間に約2億円の出資をしたところ、一部配当金が支払われたのみで、その後支払が途絶えてしまった。
後に同投資取引は全て実態の存在しない虚偽・架空の取引であったことが判明した。Aは、Bに対する刑事責任の追及を求め当職に相談するに至った。
【結果】Bの真実は実体の存在しない虚偽・架空の取引であったにもかかわらず、これがあるかのように偽り、Aに約2億円以上出資させた行為について、詐欺罪に該当するものとして刑事告訴が受理された。
【ポイント】本件はAが事前に警察に告訴の相談に行ったが、証拠がない、民事不介入との理由により告訴を断られた案件であった。
確かに、AB間の投資について契約書が存在しなかった。しかし、計画的に詐欺行為を働く犯人が、わざわざ自己に不利な証拠を作ることはむしろ稀である。この点については、AB間の送金履歴や当事者間のメール・ラインなどのやり取りを整理して提出することでクリアした。
もっとも、証拠を集めることが捜査機関たる警察の役目であり、その証拠が無いことを理由に刑事告訴の受理を断ることは本末転倒である。
警察からこのような反論はよくあるが、証拠を充足させることの他、そもそも、証拠が足りないことをもって刑事告訴を拒否できないことについて理解させることが重要である。
また、民事不介入についても、犯罪被害者が警察の介入を求める以上、同原則は妥当しない。警察官の理解を促し、この問題についてもクリアした。
証拠が足りない、民事不介入という理由で刑事告訴を拒否されることは多いが、そのような場合にも警察官の誤った理解を正し、粘り強く交渉することで刑事告訴は可能である。
そのような理由で告訴を断られた方にも、是非ご相談頂きたい。
5
高校内で性的動画を流出させた複数名について刑事告訴が受理された案件
【概要】A(10代・女性)は私立高校に通う高校生であったところ、同校に通い交際関係にあった男子生徒B(10代・男性)とのビデオ通話の際、Bより自慰行為を行うよう要求され、BはAの同意なくこれを撮影・録画した(以下、「本件動画」という。)。Aは学校生活を送っていたところ、友人より、Aの本件動画が出回っている旨告げられ、事件が発覚した。
これについて、学校側も事件を認知し、関与した生徒に対する聞き取り、動画の流出経路について調査に乗り出した。しかし校内に警察を関与させるのを嫌がり、対象生徒の退学処分で事を済まそうとした。そのため、A及びその両親に事件についての十分な説明がなく、本件動画の流出経路や誰が本件動画を保管しているのかが不明な状況であった。
A及び両親は、①本件動画の流出経路などの事件の実態の解明、②本件動画の流出に積極的に関与した者に対する刑事処罰を求め、当職に相談するに至った。
【結果】B及び複数名に動画を流出させた悪質性の高い人物10名に対して、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第3条3項(公表目的提供罪)、Bに関して、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条2項、同条4項及び同条5項に該当するものとして刑事告訴が受理され、本件動画の削除が達成された。
また、Bより示談の申し入れがあり、示談金の支払い、動画の破棄及び違反した場合の高額な違約金を条件として示談が成立し、事件は解決した。
【ポイント】学校側から事件についての十分な報告がなく、誰が犯人か判明せず、刑事告訴ができない状況であった。そこで、当職から学校側に面談を申し入れて説明を求め、本件動画が40名以上の生徒に譲渡されていたこと、動画の流出経路については証拠資料を得た。しかし、学校側は誰が犯人であるかについては、頑なに口を閉ざし、犯人性について不明な状況が継続していた。犯人性の情報開示について学校側との任意交渉が決裂し、裁判を起こさなければこれ以上の情報開示は期待できない状況に陥った。
一方、リベンジポルノ公表目的提供罪についてはいわゆる親告罪であり6カ月以内に告訴をしなければならない時間的制約があり、裁判をしていては、告訴期間が徒過してしまう状況であった。
そこで、敢えて犯人が誰かわからない状況で刑事告訴を断行し、学校側の対応の不合理性、違法性について何とか警察を説得して刑事告訴を受理させ、犯人については警察の捜査により割り出すこととした。
刑事告訴を行うには、犯罪事実の特定が必要であり、犯人が誰か特定できていることが望ましい。しかし本件のように犯人が誰か不明な状況においても、犯人の特定ができない理由について警察を説得できれば、刑事告訴を受理してもらえる可能性がある。犯人が誰かが不明な事件であったとしても、刑事事件の追及については諦めず、警察を粘り強く説得することが重要である。
6
レイプ被害について、強制性交致傷罪で刑事告訴が受理された案件
【概要】A(20代・女性)は深夜0時にホストクラブに入店し、明け方の3時頃まで飲酒を継続し、泥酔状態となり同店のカウンターに突っ伏して眠り込んでしまった。
Aが午前5時頃目を覚ましたところ、同ホストクラブのスタッフB(20代・男性)、店の外に連れ出された。Aは泥酔状態であり、なす術もなくBに数分間強引に手を引かれて歩き、屋外の駐車場に連れて行かれ、Bの性器を無理矢理挿入された。
なお、屋外の駐車場に辿りつくまで、Aは数回転び、全治2週間の裂傷を複数個所に負っている。
Aは、事件の翌日警察署に相談に行き、警察は膣内に残った犯人の精液を採取するなどし、Aが何者かに無理矢理性行為をされたことが明らかな状況であったたにも関わらず、刑事告訴の受理を断られた。Bに対する刑事責任の追及を求め、当職に相談するに至った。
【結果】Bの泥酔状態にあるAを無理矢理性交し怪我をさせた行為について、刑法第181条2項(強制性交等致傷罪)、同法第178条2項(準強制性交等罪)に該当するものとして刑事告訴を行い、同告訴は受理された。
【ポイント】Aが警察から刑事告訴の受理を断られた理由は、犯行場所についてのAの記憶が曖昧であり犯行場所が不明であること、AはBとの面識がなくBが誰であるかを特定できない点であった。
この点については、当職より警察に対して以下のように説得した。すなわち、犯行場所について、仮に不明であったとしても、歩いた時間と店の所在場所などから駐車場の位置はある程度割り出せること、刑事告訴を受理したうえで、犯人を取調べすれば判明すること、そもそも、犯行場所について捜査することは警察の役割であり、それが出来ないという理由で刑事告訴の受理を拒む理由には全くならないこと、万一、駐車場の位置が不明であったとしても、起訴するうえで支障はない事を説明し、この点の問題をクリアした。
また、Bが誰か不明である点については、店舗に赴き従業員から聞き取りを行うなどして割り出しは十分可能であること、また、Aは泥酔状態になるまえ、Bとラインを交換していたところ、ラインのIDから個人を特定する方法により犯人の割り出しも可能である、この点についても警察官を説得し、刑事告訴を受理させた。
本件のように、犯行が起きたことが明らかな場合であっても警察は刑事告訴を受理しないことが多い。このような場合、警察が告訴を断る理由を明らかにし、これを一つ一つクリアしていくことにより刑事告訴は可能である。
当職の扱う事件のほとんどは、既に警察に被害届や刑事告訴の受理を断られた案件である。警察に被害届や刑事告訴を断られた場合も諦めず、当職まで相談して欲しい。
7
営業秘密の持ち出しについて不正競争防止法で刑事告訴が認められた案件
【概要】A(40代・男性)は建築事務所を経営する一級建築士であるが、勤務態度に問題のある従業員B(30代・女性)を解雇したところ、Bは、Aが他社と秘密保持契約(NDA)を締結したうえで保有する秘密情報をAに返還しないまま退職した。
また、AはBより解雇は不当であるとして損害賠償の支払いを求められていた(別件)。
AはBからの①秘密情報の返還、②Bに対する刑事責任の追求を求め、当職に相談するに至った。
【結果】持ち出された情報が不正競争防止法2条6項に規定する「営業秘密」に該当するものとして、同営業秘密を無断で持ち出した行為について、同法21条1項3号ロ「営業秘密侵害罪」に違反するものとして刑事告訴を行い、同告訴は受理された。
その結果、無事に秘密情報の返還に成功し、更に、請求されていた不当な損害賠償(別件)についても全て放棄させた。
【ポイント】本件の問題は、Bが何らかの秘密情報を持ち出していることは判明しているが、具体的にどの情報を持ち出しているかが不明な点にあった。刑事責任の追求には犯罪事実を特定する必要があることとの関係上、この点は犯罪成否に直結する深刻な問題であった。
データフォレンジックによりBが在籍時にしていた全データ処理を洗い出す方法があったが、事務所の運営を数日ストップすることができずに、その方法は見送られた。
苦肉の策であったが、Bの代理人弁護士に対して、Bが保有するデータの買取りを希望すること、その為に保有するデータの一覧を提出して欲しい旨の申し出を行い、Bの代理人弁護士をしてBが保有するデータの一覧を提出させ、これをもって自白証拠とした。