解決事例 CASE
詐欺罪
水増し請求の指示行為について、詐欺罪の刑事告訴が受理された案件
- 事件の概要
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リフォーム工事の管理業等を行っている株式会社Bの代表取締役であるA(男性)は、B社がリフォーム工事を委託していた職人C(男性)より、「今までB社に対して水増し請求を行っていた」と告げられた。
AがCに対してその詳細を確認したところ、次のような事実が発覚した。
・実際には行っていない工事費用を含めた内容虚偽の請求書をB社に提出することで、水増し請求を行っていた。
・Cは、職人の手配やスケジュール管理を行っているD(男性)に指示されて、水増し請求を行っていた。
・水増し請求で不正に得た利益は、全額Dに渡していた。
そこで、Aは、不正請求の首謀者であるDから騙し取られた金額を回収するために、当職に相談するに至った。
- 解決結果
- 自首をすることで、Cに対して刑事処分が下されないよう対応し、Dについては、水増し請求の指示を行っていたことが詐欺罪に該当するとして、同罪の刑事告訴が受理された。その後、Dの弁護人との示談交渉により、B社から騙し取った金額以上の示談金の支払う内容での示談が成立した。
- ポイント
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Dの行為は、B社から金銭を騙し取る行為として刑法上の詐欺罪に該当するものであったため、詐欺罪での刑事告訴を行い、その上で示談交渉を行うことは十分可能なケースであった。
しかし、詐欺の実行犯はCであったことから、Dのみを対象とした刑事告訴を行った場合、Cに対しても刑事処分が下されるおそれがあった。
この点、Aとしては、詐欺の首謀者はDであり、Cはただ指示に従っていただけに過ぎなかったこと、Cは自ら不正請求を認めたこと、Cは詐欺によって一切利益を得ていないことから、Cに対する刑事責任の追及は望んでいなかった。
そこで、Dを対象とした刑事告訴を行う前に、Cが詐欺を行ったことについて自首を行い、Cに対して刑事処分が下されないよう対策を取ることとした。
まず、弁護士がCと面談を行い、Dから具体的にどのような指示を受けていたのか等、本件の事実関係についてその詳細を確認した。
その上で、Dと面談を行い、DがCに対して水増し請求の指示を行っていたことを認めさせた。
C及びDとの面談で確認した事実関係を整理し、弁護士において自首報告書を作成して、Cとともに警察へ行き、自首をした。
Cの自首が完了した後、Dに対する刑事告訴を行い、無事受理された。
当該告訴が受理された後、Dに弁護人が就任し、同弁護人との間で示談交渉が行われることになった。
その結果、DがB社から騙し取った金額以上の示談金の支払う内容での示談が成立した。
本件のように、犯罪の指示役と実行犯が別れている場合、自首等の方法により、一方に対する刑事責任の追及を免れることも可能である。
方法は様々だが、実際にどのような方法を取るべきかはそれぞれのケースによって異なるため、慎重な判断が必要になる。
刑事告訴を検討しているものの、どのように対応すべきか迷った場合には、まずは1度相談していただくことをおすすめする。