解決事例 CASE

名誉毀損罪

パワハラに関する事実無根の報告を行った行為について、名誉毀損罪の刑事告訴が受理された案件

事件の概要
相談者A(30代・男性)は、ある日、勤務先B社の代表者Cから呼び出され、「B社の取引先であるD社の役員Eより、『AがD社の職員に対してパワハラを行っていたと報告があったので、事実関係の調査を行った』と連絡があった」と告げられた。
しかし、Aには心当たりがなかったことから、後日、AがEに確認したところ、ある日、Aの同僚であるF(30代・男性)から電話がかかってきて、「AがD社の職員に対してパワハラを行っている」との報告を受けたとのことであった。
Aは、Cに対し、パワハラを行っていたという事実は一切ない旨主張したが、聞き入れてもらえず、最終的には、Fによる虚偽の報告を原因として、AはB社を解雇させられてしまった。
そこで、Aは事実無根である虚偽の事実を報告したFに対し、名誉毀損罪で刑事告訴を行うために、当職に相談するに至った。
解決結果
FがEに対し、Aのパワハラに関する虚偽の事実を報告した行為が名誉毀損罪に該当するとして、同罪の刑事告訴が受理された。
ポイント
名誉毀損罪が成立するためには、「公然と事実を摘示」する必要がある。
「公然と」とは、不特定または多数人に事実を摘示することであるところ、本件において、Fは、特定個人であるE1人に対して電話でパワハラの事実を伝えていることから、「公然と」の要件を満たすかが問題となった。

当職は、「摘示された事実が伝播する可能性がある場合には、『公然と』の要件を満たす」と判断した判例を引用し、本件ついても、Aがパワハラを行っていた事実が不特定または多数人に伝播する可能性があることを指摘し、「公然と」の要件を満たすと主張した。
告訴の交渉時において、警察からもこの点を指摘されたが、以下の事実から、「伝播可能性」が非常に強かったことを主張した。
・「Fの発言内容が、AがD社の職員に対してパワハラを行っているというものであったこと」及び「FはD社の役員であるEに対して当該事実を伝えていること」からすれば、D社としては、パワハラに関する事実確認等の調査を実施し、その結果をB社に対して報告せざるを得なかったこと。
・ハラスメント行為についての事実調査が、D社のみならず、Aが以前勤務していた会社や関係会社に対しても実施されたことにより、パワハラの事実がかなり広く伝播してしまったこと。
その上、Aは、Fによる虚偽の報告を原因として、B社を解雇されており、本件犯罪行為によって経済的に極めて深刻な不利益を被っていることから、当罰性の高い起訴すべき事案であることを説得した。
その結果、名誉毀損罪での告訴が受理された。

本件のように、名誉毀損罪における公然性が問題となるような場面でも、「伝播可能性」があることを事実関係から適切に主張できれば、名誉毀損罪での刑事告訴を受理してもらえる可能性がある。
名誉を毀損するような表現で不利益を被った場合には、諦めずにご相談下さい。

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