解決事例 CASE

その他

本人の同意を得ずに本人名義の訴訟委任状を偽造し、これを裁判所に提出した行為について、有印私文書偽造罪及び同行使罪の刑事告発が受理された案件

事件の概要
依頼者であるA(50代・男性)は、母親が亡くなったため、共同相続人である姉Bと遺産分割協議を行い、AがBに対して代償金を支払うこととなったが、その後、Bと連絡がつかなくなり、代償金を支払うことができない状態に陥ってしまった。Aが困っていたところ、突然、Bの夫Cの弟D(60代・男性)から、遺留分を支払えと請求された。

法律上、遺留分が認められないDからの請求であったため、当然Aは支払いを拒否したが、その後、突然、Cが弁護士を立てて「代償金支払請求訴訟」を起こしてきた。
Aにおいて詳細を確認したところ、Bが亡くなったため、Bの相続人であるCが代償金の支払いを請求するために、Aに対して当該訴訟を提起したとのことであった。

この点、訴訟が提起された時点において、Cは重度のアルツハイマー型認知症であり、自分の意思で弁護士を選んで依頼するとは到底考えられなかったことから、Aは、本件訴訟は、Dが、Cを利用して代償金を不当に得ようと考えて起こしたものであると推測した。

しかしながら、DがCを利用して本件訴訟を提起したという直接的な証拠が存在せず、訴訟においてこれを立証するのが困難であったため、Aは、問題の解決を求めて当職に相談するに至った。
解決結果
Dが、Cが重度のアルツハイマー型認知症であることに乗じて、Cの同意を得ずにC名義の訴訟委任状を偽造し、これを裁判所に提出した行為につき、有印私文書偽造罪及び同行使罪に該当するとして、Dに対する刑事告発同告発が受理された。
ポイント
本件において、CはBの相続人である以上、訴訟委任状がDによって偽造されたものであると立証しない限りは、CのAに対する代償金支払請求の正当性が認められてしまう可能性が非常に高いものであった。また、DがCの財産を管理する立場にあったことと、本来請求する権利のない遺留分を請求してくるという経緯があったことすれば、仮に、訴訟において請求が認められ、AがCに対して代償金を支払うこととなった場合には、Dが支払われた代償金を不当に得る可能性も極めて高いものであった。
したがって、Aとしては、訴訟において、「訴訟委任状はDによって偽造されたものである」と立証する必要があったのだが、直接的な証拠が存在しなかったため、このままではC(D)の請求が認められてしまう恐れがあった。
そこで、DがC名義の訴訟委任状を偽造して提出したことにつき、刑事告発を行い、捜査機関によって偽造及び行使の事実を証明させる方が問題をスムーズに解決できると考えられたため、刑事告発をするに至った。

刑事告発を行うにあたり、まず、Cが自分で弁護士を選んで依頼することができる状態ではなかったことを証明するために、Cの担当医から診療録(カルテ)を取り寄せ、その内容を精査した。その結果、「現在の季節が分からない」「自分の名前が分からないし書くこともできない」などの記載を確認することができた。自分の名前も分からない人間が、本件の問題点を正確に理解し、自分の意思で弁護士に依頼するとは合理的に考えて困難であったことに加え、これまでの一連の経緯からすれば、Dは、代償金を不当に得るため、C名義の訴訟委任状を偽造し、訴訟提起を行った可能性が極めて高いと考えられたことから、これらの事実を主張した上で、Dに対する有印私文書偽造罪及び同行使罪で刑事告発を行ったところ、同告発は受理された。

本件のように、問題が複雑化し、民事訴訟で争うことが難しい案件であっても、弁護士が関係機関を通して証拠を収集することで、刑事告訴(告発)という形で問題を解決できるケースもあります。泣き寝入りする必要はありませんので、お困りの際はぜひ1度お気軽にご相談ください。

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