解決事例 CASE

私文書偽造罪

権限なく内容虚偽の離職証明書を作成し、公共職業安定所に提出した行為について、有印私文書偽造罪・同行使罪の刑事告発が受理された案件

事件の概要
相談者A(60代・男性)は、B社の代表取締役であるところ、同社の従業員で労務を担当していたC(30代・女性)より退職の申入れがなされた。Aは、Cに対し、公共職業安定所に提出するC自身の離職証明書の作成を指示した。
この点、B社においては、「外部にB社名義の書面を提出する際には、必ずAの決裁を経なければならない」と定められていたところ、Cは、出勤日数を水増しするなどしたB社名義の内容虚偽の離職証明書を作成し、Aの決裁を経ることなく無断で、これを公共職業安定所に提出した。
Aは、Cの行為が文書偽造罪に該当するのではないかと考え、当職に相談するに至った。
解決結果
B社名義の内容虚偽の離職証明書を作成し、Aに無断でこれを公共職業安定所に提出した行為が、有印私文書偽造罪・同行使罪に該当するとして、同罪の刑事告発が受理された。
ポイント
本件において、文書偽造罪・同行使罪が成立するためには、「Cが何ら権限を持たないにもかかわらず、B社名義の離職証明書を作成して提出した」といえることが必要であった。
この点について、Cから、「そもそもAから離職証明書を作成する指示を受けていたのであるから、CはB社名義での離職証明書を作成する権限を有していたといえるため、Cの行為は文書偽造罪・同行使罪にはあたらない」と反論されることが予想された。
そこで、告発の際には、「B社においては、外部に書面を提出する際は、必ずAの決済を経なければならないと定められていたことから、たとえ作成の指示を受けていたとしても、Aの決裁を経ずにB社名義の書面を作成し、これを外部へ提出する行為については、文書偽造罪・同行使罪にあたる」と説明した。
その上で、「Cの行為が文書偽造罪・同行使罪に該当しないとすると、書面を作成する指示を受けていれば、内容虚偽の書面を作成・提出しても全く問題ないということになってしまうため、文書偽造罪の保護法益である『文書に対する公共の信頼』が害される結果となり、許されない」と主張した。

以上の通り、CはAから離職証明書を作成する指示を受けていたとしても、Cの行為は文書偽造罪・同行使罪に該当することを丁寧に主張・説明することで、有印私文書偽造罪・同行使罪での刑事告発が受理された。

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