解決事例 CASE

建造物損壊等罪

賃貸の玄関ドアを故意に損傷させた行為について、建造物損壊等罪の刑事告訴が受理された案件

事件の概要
A(男性)は、所有する建物をB(男性)に賃貸し、Bは家族と共に同建物に居住していた。
ある日、Aは、Bより「建物の玄関ドアが損傷した」との連絡を受けたため、施工業者とともに確認したところ、玄関ドアの下側にある留め具などが損傷していることが発見された。

Aが、Bの入居前にドアを確認した際には、ドアの損傷は一切確認できなかったが、Bは、「ドアの留め具は入居時より破損していた」と主張した。

Aが対応を検討していたところ、突如、BからAに対して、建物の賃貸借契約を解約し、同建物から退去する旨が記載された書面が送られてきた。

突然の申し入れだったため、契約の解約にかかる協議を行ったところ、協議の最中に、Bは「過失により損傷させてしまったと思う」「玄関ドアの損傷は経年劣化によって生じた」などと、主張を二転三転させた。
そのため、AとBのどちらが玄関ドアの修繕義務を負うかについて争いが生じることとなり、双方ともに弁護士を立てて話し合うことになった。

Bの代理人弁護士は、「玄関ドアの損傷はBの故意過失によるものではないため、玄関ドアについて修繕義務を負うのは賃貸人であるAであること」および「Aが玄関ドアを修繕しないことによってBが損害を被ったので、Aはその損害を賠償する責任を負う」と主張してきた。
Aは、玄関ドアの損傷はBの故意によるものであり、かつ、玄関ドアを損傷させる行為は器物損壊罪に該当するため、Bからの損害賠償請求に応じる義務はないと考えた。

そこで、Aは、Bの刑事責任を認めさせ、Bからの請求を取り下げさせることができないかと考え、当職に相談するに至った。
解決結果
Bが玄関ドアを故意に損傷させた行為が建造物損壊等罪に該当するとして、同罪での告訴が受理された。
ポイント
器物損壊罪は、告訴がなければ公訴を提起できない親告罪であり、Aが相談に来た時点においては、既に告訴期間が経過していたため、同罪での告訴ができない状態にあった。そこで、非親告罪である建造物等損壊罪で告訴ができないかを検討した。

裁判例をリサーチし、玄関ドアを金属バットで殴打してドアを凹ませた事案において、建造物等損壊罪を認めた判例があることが判明した(最決小平成19年3月20日)。同判例を引用し、本件においても、建造物損壊罪の客体となる玄関ドアの一部が損傷している以上、建造物等損壊罪が成立すると主張した。
また、本件では、直接的な証拠がなかったこともあり、Bが玄関ドアを故意に損傷したことを立証できるかが問題となった。

この点、玄関ドアの損傷具合を確認した施工業者の意見を引用したうえで、損傷の状況を詳細に説明し、「損傷状況からみれば、当該損傷は、経年劣化または過失によって発生したものではなく、Bが故意に損傷させたことは明らかである」と主張することで、Bが故意にドアを損傷させたことを立証した。

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