解決事例 CASE

詐欺罪

実体の無い架空の売買契約を締結させられたことについて詐欺罪で刑事告訴が認められた案件

事件の概要
A(40代・男性)はB(30代・男性)から高級腕時計の購入を持ち掛けられ、Bに対して腕時計の購入代金を支払ったが、一向に腕時計が引き渡されず、購入代金の返還もなされなかった。その後、Bと連絡が途絶えた。Aは警察の刑事告訴の相談にいったものの、受理を拒否され、Bに対する民事及び刑事責任の追及を求め当職に相談するに至った。
解決結果
当初AはBに対して、民事での購入代金分の返還を求めていた。しかし、当職からBに対して、内容証明郵便を送付するなどしても、Bと連絡が取れない状況が続いていた。また、Bはフリーターであり、給与などの差押えが困難であり、その他不動産など強制執行の引き当てとなる資産を一切有しておらず、もはや民事での解決が困難な状況であった。

そのような状況の中、民事責任の追及ができないのならせめて刑事責任を追及したい、とのAの意向を受けてBに対する刑事責任を追及することとした。

そこで、腕時計を引き渡す意思がないにもかかわらずこれを偽り、男性から購入代金を騙し取った行為が刑法上の詐欺罪(刑法246条1項)に該当するものとして刑事告訴を行い、同告訴は受理された。

その結果、Bは逮捕され、その後、Bより示談の申出があった。AはBからの示談に応じた結果、Aは購入資金の返還及び慰藉料の支払いを得ることができ、事件は解決した。
ポイント
本件は、相手方が詐欺行為を行っており、この場合、相手方の行為は、民法上は不法行為(民法709条)、刑法上は詐欺罪(刑法246条)に該当し、民事・刑事両方の刑事責任の追及が可能である。相手方の行為が刑法上の犯罪に該当する場合、大抵の場合、民法上不法行為に該当するので、相手方に対して、民事責任と刑事責任の両責任を追及できる場合が多い。

この場合、民事責任と刑事責任の両方を追及していくこと、民事責任のみ追及すること、刑事責任のみ追及すること、いずれのやり方も可能である。

刑事責任を追及する場合、示談の提示がある場合が多く、この場合、刑事責任の追及を手段として、お金が支払われ、結果として民事責任の追及に繋がることになる(示談を受け入れる場合、相手方に刑罰を与えることはできない点には注意が必要である)。

本件は、民事責任の追及が一度失敗し、その後、刑事告訴により民事責任の追及ができた事例であるが、刑事告訴は、民事事件を一挙に解決する手段としても極めて合理的である。

犯罪行為に巻き込まれ、相手方に金銭賠償を希望する際は、刑事告訴を手段として行うことを検討してみてはいかがだろうか。

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