解決事例 CASE
リベンジポルノ公表罪
高校内で性的動画を流出させた複数名について刑事告訴が受理された案件
- 事件の概要
-
A(10代・女性)は私立高校に通う高校生であったところ、同校に通い交際関係にあった男子生徒B(10代・男性)とのビデオ通話の際、Bより自慰行為を行うよう要求され、BはAの同意なくこれを撮影・録画した(以下、「本件動画」という。)。Aは学校生活を送っていたところ、友人より、Aの本件動画が出回っている旨告げられ、事件が発覚した。
これについて、学校側も事件を認知し、関与した生徒に対する聞き取り、動画の流出経路について調査に乗り出した。しかし校内に警察を関与させるのを嫌がり、対象生徒の退学処分で事を済まそうとした。そのため、A及びその両親に事件についての十分な説明がなく、本件動画の流出経路や誰が本件動画を保管しているのかが不明な状況であった。
A及び両親は、①本件動画の流出経路などの事件の実態の解明、②本件動画の流出に積極的に関与した者に対する刑事処罰を求め、当職に相談するに至った。
- 解決結果
-
B及び複数名に動画を流出させた悪質性の高い人物10名に対して、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第3条3項(公表目的提供罪)、Bに関して、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条2項、同条4項及び同条5項に該当するものとして刑事告訴が受理され、本件動画の削除が達成された。
また、Bより示談の申し入れがあり、示談金の支払い、動画の破棄及び違反した場合の高額な違約金を条件として示談が成立し、事件は解決した。
- ポイント
-
学校側から事件についての十分な報告がなく、誰が犯人か判明せず、刑事告訴ができない状況であった。そこで、当職から学校側に面談を申し入れて説明を求め、本件動画が40名以上の生徒に譲渡されていたこと、動画の流出経路については証拠資料を得た。しかし、学校側は誰が犯人であるかについては、頑なに口を閉ざし、犯人性について不明な状況が継続していた。犯人性の情報開示について学校側との任意交渉が決裂し、裁判を起こさなければこれ以上の情報開示は期待できない状況に陥った。
一方、リベンジポルノ公表目的提供罪についてはいわゆる親告罪であり6カ月以内に告訴をしなければならない時間的制約があり、裁判をしていては、告訴期間が徒過してしまう状況であった。
そこで、敢えて犯人が誰かわからない状況で刑事告訴を断行し、学校側の対応の不合理性、違法性について何とか警察を説得して刑事告訴を受理させ、犯人については警察の捜査により割り出すこととした。
刑事告訴を行うには、犯罪事実の特定が必要であり、犯人が誰か特定できていることが望ましい。しかし本件のように犯人が誰か不明な状況においても、犯人の特定ができない理由について警察を説得できれば、刑事告訴を受理してもらえる可能性がある。犯人が誰かが不明な事件であったとしても、刑事事件の追及については諦めず、警察を粘り強く説得することが重要である。