解決事例 CASE
詐欺罪
支払う必要のない費用を支払わせた行為について、詐欺罪の刑事告訴が受理された案件
- 事件の概要
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A(20代・男性)は、パイロットを志望していたところ、紹介により知り合った米国パイロットライセンス保有者のB(40代・男性)から、お金を払えばパイロットにさせることができるとの話があった。
A及びAの両親は、Bの説明を信じてBに対し、以下の費用(合計約5500万円)を支払った。
① プログラム受講費用
② スクールと提携している海外の航空学校へ支払う授業料
③ 海外の航空学校へ通学するための渡航費・交通費
④ コンサルティング費用
⑤ 訓練中に航空機を損傷させた場合の担保としての保証金(デポジット)
しかし、Aは、Bに言われるまま行動したにも関わらず、結局パイロットになることが出来なかった。
そこで、AはBを相手取って、民事裁判を起こし、1000万円を支払う旨の裁判上の和解が成立したが、裁判終了後、Bからの支払いはなかった。
そこで、何らかの刑事責任を追及することができないか、当職の元に相談に至った。
- 解決結果
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Bの行為について、詐欺罪での刑事告訴が受理された。
- ポイント
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本件については、Aはプログラムを受講し、海外の航空学校での授業を受けることはできていたこと、及び、BはAに対して「プログラムを受講すれば必ずパイロットになれる」とまでは言っていなかったことから、合計約5500万円を支払わせた行為全体を対象とする詐欺罪の立証は困難であった。
そこで、上記①から⑤のいずれかの費用を支払わせた行為について個別に詐欺罪が成立しないか、民事裁判においてBより提出された資料を精査することによって検討した。
その結果、Bが「訓練中に航空機を損傷させた場合の担保として、海外の航空学校より支払いを求められていたものである」と主張していた⑤の保証金について、「外国の航空学校が作成した費用一覧に保証金の記載がなかったこと」「航空学校より交付されたとされる保証金の請求書・領収書に不自然な点が存在すること」「BはAから支払われた保証金相当額を外国に現金で持ち込んで航空学校に対して支払ったと主張していること」等、外国の航空学校より支払を求められていたにしては不自然な点が複数存在することが判明した。
そして、上記不自然な点が複数存在することから、Bによる「外国の航空学校より航空機を損傷させた場合の担保としての保証金の支払いを請求されている」との主張は虚偽であることは明らかであるため、⑤の保証金を支払わせた行為が詐欺罪に該当すると指摘して、警察に対する告訴を行ったところ、同告訴は受理された。
本件のように、支払った費用全額については詐欺罪の立証が困難な場合であっても、一部の費用については立証が可能という場合もあるため、諦めないでご相談いただきたい。