解決事例 CASE
信用毀損罪
内容虚偽の書面をFAXで送信した行為について、信用毀損罪の刑事告訴が受理された案件
- 事件の概要
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ある日、B社の取引先複数社から、次のような書面がFAXで送られてきたと報告があった。
・「B社は〇月〇日をもって倒産する」
・「B社は取引先へ支払わなければならない代金を踏み倒すつもりだ」
B社が倒産する事実は存在せず、上記書面記載の内容はすべて虚偽だったものの、その内容は、B社の信用を著しく毀損するものであった。
B社の代表取締役であるA(男性)は、これ以上の被害を防ぐためには、速やかに上記書面を送信した者を特定し、送信行為を止めさせる必要があると考えた。
Aには、上記書面を送信した人物に心当たりがあったが、同人が送信したという確定的な証拠は存在せず、ほかに送信者を特定する方法に心当たりはなかった。
そこで、Aは、上記書面の送信者を特定し、これ以上の被害拡大を防ぐことを求めて、当職に相談するに至った。
- 解決結果
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B社の取引先複数社に対し、内容虚偽の書面をFAXで送信した行為が、B社に対する信用毀損罪に該当するものとして、同罪の告訴が受理された。その後、警察の捜査により、送信者が特定された。
送信者に弁護人がつき、示談交渉を行った結果、B社に対する示談金の支払いと、今度同様の行為を一切行わないことを誓約する示談が成立した。
- ポイント
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インターネット上における誹謗中傷の書き込みなどと違い、本件では書面がFAXで送信されていることから、「発信者情報開示請求」等の手続きで送信者を特定することは困難であった。
一方で、FAXはコンビニエンスストアの店舗から送信されていること、および送信元の店舗は特定できていることから、同店舗に設置された防犯カメラ映像を確認できれば、Aの心当たりがある人物かどうかをその容姿から確認できる可能性があった。
この点、店舗に設置された防犯カメラ映像の開示を受けるためには、「弁護士会照会等の法令に則った手続きを行う」もしくは「刑事告訴により、警察に開示請求を行ってもらう」必要があった。
しかし、防犯カメラ映像は、撮影後1〜2週間で自動的に削除されてしまうことが多いため、これらの手続きの準備をしている間に、映像が消えてしまう可能性が極めて高かった。そのため、後日警察の捜査が入った際に、撮影された防犯カメラ映像を確認できるよう、保全措置を取っておく必要があった。
そこで、当職は、FAXが送信されたコンビニエンスストアに対し、当該FAXの送信時刻に撮影された防犯カメラ映像を保存しておくことを要求する通知書を、速やかに送付した。
その後、上記内容虚偽の書面をB社の取引先に対して送信する行為が、B社の信用を毀損するものであるとして信用毀損罪での刑事告訴を行い、同告訴は受理された。
本件のように、情報の発信者が誰か特定できない事案でも、弁護士会を通して照会をかけたり、捜査機関を通して証拠を収集することで、情報の発信者を特定できるケースもあります。個人では特定が困難な事案であっても、諦めずにご相談ください。