解決事例 CASE

私文書偽造罪

株式譲渡契約書を偽造した行為について、私文書偽造罪の刑事告訴が受理された案件

事件の概要
A(女性)は、株式会社B社の代表取締役であったC(男性)と親密な関係にあった。Cは、末期がんを患っており、もう先が長くないと感じていたため、自身の保有するB社の株式全部をAに遺贈する内容の遺言書を作成し、これをAに交付した。この時、Aは、Cより「遺言書を作ったことについては、自分のビジネスパートナーであるDに伝えておく。自分の死後、株式譲渡の手続きについてはDに相談してほしい」と伝えられていた。そして、遺言書を交付してから約1年後、Cは亡くなった。

Cの死後、Aは、遺言書に基づき、Cが保有していた株式を自分に移転させる手続きを行うためDに連絡した。しかし、Dからは「Cから遺言書が存在することなど聞かされていない」「そもそも、自分はCが保有していたB社の株式全部の生前贈与を受けている」と言われてしまった。

その後、Aは、Dと直接会い、遺言書に基づき、Cが保有していたB社の株式全部については自分に遺贈されていると主張した。しかし、Dは「遺言書の作成後に生前贈与を受けたため、遺言書の内容が撤回されている。したがって、Cが保有していたB社の株式全部を受け取る権利は自分にある」と反論されてしまった。

そこで、Aは、弁護士を立てて、Dを相手取り、「自分はCよりB社の株式の遺贈を受けているため、B社の株主である」との確認を求める民事訴訟を提起した。裁判では、Cから株式の生前贈与を受けていた事実を証する証拠として、CD間で締結された「両者の署名捺印がある株式譲渡契約書」がDより提出された。Aとしては、遺言書が存在する以上、CがDに対して株式を譲渡した事実は存在せず、株式譲渡契約書はDによって偽造されたものであると主張したが、Aの主張は認められず、請求は却下されてしまった。

Aとしては、自分のことを一番に考えてくれていたCが遺言書の内容を反故にするとは考えられなかった。
そこで、株式譲渡契約書は偽造されたものだと主張するために、当職に相談するに至った。

解決結果
Dが株式譲渡契約書を偽造したことが私文書偽造及び同行使罪に該当するとして、同罪の刑事告発が受理された。
ポイント
本件においては、Dが株式譲渡契約書を偽造したことを証する直接的な証拠が存在しなかったため、任意交渉や民事訴訟において偽造の事実を立証するのは極めて困難であった。したがって、私文書偽造及び同行使罪での刑事告発を行い、捜査機関の捜査により、Dが株式譲渡契約書を偽造した事実を発見してもらうほかなかった。

この点、告発を行うためには、Dが偽造を行ったことを疑わせる事実を複数積み上げていくことによって、偽造が行われたことを主張する必要があった。

まず、弁護士がAと面談を行い、生前のCとの関係性や、Cが亡くなった後の事情などについて詳細にヒアリングを行った。その上で、関係資料を精査し、Dが偽造を行ったことを疑わせる点を複数洗い出した。

本件においては、「AとCとの関係が親密だったことから、Cが株式譲渡の約束を反故にすることは考え難いこと」、「Dに株式を譲渡するにしても、そのことをAに連絡するはずであること」、「株式譲渡契約書はCが無くなる直前に作成されており、極めて不自然であること」など、偽造の事実を疑わせる事情を複数確認できた。

これらの事情から、Dが株式譲渡契約書を偽造したことは明らかであると主張した結果、無事刑事告発が受理された。

本件のように、犯罪が行われた事実を証する直接的な証拠が存在しなくても、犯罪が行われたことを疑わせる事情を洗い出すことで、刑事告発を受理させることができるケースもあります。証拠がないからといって諦めるのではなく、まずは1度ご相談ください。

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