解決事例 CASE

名誉毀損罪

犯罪事実を言いふらす行為について、名誉毀損罪による刑事告訴が受理された案件

事件の概要
X(50代・女性)は、会社経営をしているY(40代・男性)から特定の業務を委託されていた。
Xが自身が行った業務量を過大に申告していたところ、気がついたYがXの関係者に対して、Xが詐欺行為をしている旨を言いふらした。
特に影響が大きかったのが、Xが社外取締役を務めるA社に対して、YがWeb上の問い合わせフォームを通じ、Xが詐欺行為をしたことを伝えた点である。結果的に、XはA社の社外取締役を解任されてしまった。
Xは別のB社の社外取締役も務めていたところ、B社にも言いふらされて解任される事態を避けたいと考えて、当職の元に相談するに至った。
解決結果
Yの行為について、名誉毀損罪で刑事告訴が受理された。
ポイント
Xがたとえ犯罪行為をしたとしても、それを言いふらすYの行為は名誉毀損罪に該当するため、Xは名誉毀損の点では被害者となる。
被害の拡大を防ぐには、Yを名誉毀損罪で告訴したうえで、示談交渉の中で「B社に言いふらさない」との合意を取りつけるのが理想的である。
しかし、Xが詐欺行為をしたのは事実であり、反対にYから詐欺罪で刑事告訴をされるリスクがあった(実際に警察に相談がなされていた)。

Xが告訴を受け処罰される事態を避けるために、事前に以下の方法をとった。
①Yに対して、Xの詐欺行為をこれ以上言いふらさないよう警告文を送付
②Yに対して、Xの詐欺行為に関する金銭賠償をすませる
③警察に対して、X自身が行った詐欺行為については自首する

①により、B社に言いふらされて被害が拡大する事態を防いだ。
②を行ったのは、自身の詐欺罪については賠償し、Xが起訴される可能性を下げるためである。示談には至らなかったものの、被害を賠償した事実はあるため、告訴を受けた際に起訴されるリスクは下げられた。
③については、Yから警察に詐欺被害の相談はあり、行為自体は捜査機関に既に発覚していたため、法律上の自首(刑法42条)には該当しない。もっとも、自ら犯行を申告することは反省の表れと受け取れるため、処分が軽くなる方向に作用する。
事前に①から③を実行したうえで、Yの名誉毀損について刑事告訴を行い、受理された。結果的に被害の拡大は防げ、X自身は告訴されずにすんでいる。
本件のポイントは、警告文を送付してけん制したうえで、自身が告訴された際のリスクも事前にケアした点である。

当事者双方が犯罪行為をしている状況だと、互いに告訴し合う事態が想定される。むやみに自身が受けた被害について告訴しても、かえって相手の反発を招いて告訴し返されてしまい、結果的に目的は果たせない。自身が攻撃を受けないようにタイミングを見て告訴する必要があるが、いつ何をすべきかの判断は難しい。
本件のように双方が犯罪行為をしているケースでは、弁護士に相談し慎重に対応を検討していただきたい。

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