基礎知識

最終更新日:2024.02.08

再開発の立ち退き対象になったときの選択肢はなにがある?

駅前などの都市部で、大規模な区画整理やビルの建設によって効率的な土地の活用を図る「市街地再開発」

再開発を行なうにあたっては従来の商店街や住宅などを取り壊す必要があるため、お店・ビルオーナーや分譲住宅の住民(地権者)、ビルのテナントや集合住宅の入居者(賃借人)に土地や家を明け渡してもらわなくてはなりません。

もし、自分が所有する物件や住んでいる家がこういった「立ち退き」の対象になってしまったら、どうすればいいのでしょうか?

あとで後悔しない最適な判断をするためには、まずは自分にどのような選択肢があるのかを知ることが欠かせません。

この記事では、再開発立ち退き対象になったときの立場別の選択肢と、地権者と賃借人それぞれのメリット&デメリットについて解説します。

再開発の立ち退きは、無視したり断ったりできない

ひとことで「立ち退き」といっても、実はいくつかの種類があります。

  1. 個別の建物で、所有者都合による建て替えや売却・取り壊しにより、入居者が立ち退きを求められるケース
  2. 個別の賃貸契約で、入居者による賃料未払い・違反行為等で契約更新を打ち切られるケース
  3. 都市計画や公共事業のために一定の区域内のすべての店舗や住居が立ち退きを求められるケース など

このうち、例えば1.の個人所有のアパートなどでは、入居者(賃借人)は借地借家法等で手厚く保護されています。

もし大家さん(賃貸人)が「取り壊して駐車場にしたいから退去してほしい」と思っても、入居者が「急に言われても困る。立ち退きたくない」と主張すれば、よほどの正当事由がない限り強制的に追い出すようなことは不可能です。

しかし、3.のような再開発法にもとづく「市街地再開発事業」の場合は、いくら立ち退きたくないからといっても、断ったり、無視し続けたりはできません。

もしも法的手続によって送られてくる「明渡し請求」を無視すれば、裁判で明渡しを命じられたり、低額の立退料で立ち退くことになったり、最終的には都道府県知事から代執行が行なわれ、ある日家財道具を強制的に運び出されてしまう……といったことも起こりえます。

ここが再開発による立ち退きの際にもっとも注意すべき点です。

▼「再開発で立ち退きをしなかったら…」詳しくはこちらの記事もご覧下さい
再開発組合からの立退き請求に応じないとどうなるか(未公開ですが、公開後にリンクを設置して下さい)

さらに、立ち退きを求められるのがその土地を所有している人(地権者)なのか、家賃を払って入居している人(賃借人)なのかによっても取るべき選択肢は異なります。

以下にそれぞれの選択肢とメリット・デメリットを示しましたので、「この中で自分はどれに当てはまるのか」を確認してみて下さい。

地権者の選択肢【店舗や物件オーナー・分譲住宅所有者など】

まずは、土地を所有している「地権者」の取れる行動は大きく分けて以下の2つです。

  1. 権利変換…再開発で新しくできるビルの床を取得する
  2. 地区外転出…金銭の補償(立退料)を受けて地区外に引っ越す

再開発後のビル床権利を取得する「権利変換」

権利変換では、地権者はいったん土地を明け渡したのち、再開発で建設されたビルの一部の床を取得できます

メリットとしては、住居なら設備の整ったきれいな新築の部屋で暮らせますし、店舗であれば新しくロケーションの良い場所で商売ができて、来店客が増えるかもしれません。

賃貸物件のオーナーにとっても、ビルの資産価値向上により賃料アップや収入増加が期待できるでしょう。

権利変換で手に入る新しい床(=家や店舗・オフィスなどのスペース)は、「等価交換」という法則により、面積や部屋の階層など諸条件を総合して以前の土地と同じ価値になるように定められています。

ただし、この価値とはあくまでも「権利変換を実施した時点での価値」であり、マンションの部屋は土地と比べると時間経過とともに資産価値が減少していくというデメリットがあります。

地権者/権利変換を選んだら

【メリット】
新しい家や店が手に入る
賃貸収入がアップする

【デメリット】
年月とともに資産価値が下がる

立退料を受け取る「地区外転出」

いっぽう、再開発で建設されたビルの床を取得せず、地区外に引っ越したり店を移転したりする選択肢もあります。

この場合は土地を手放す対価として金銭を受け取ることができ、そのお金を「立退料(たちのきりょう)」といいます。

立退料は法的に金額が決まっているわけではなく、転居や移転にかかる費用・立ち退きによって営業ができなくなる間の補償などの実情に即した金額を個別交渉で決めていきます。

もともと今の住まいが生活スタイルに合わなくなってきて「いずれ引っ越してもよい」と考えていた人、ビジネスモデルの転換や年齢にともなう規模縮小を検討している人にとっては、この機会に土地や物件を手放して新生活へ踏み出せるのはメリットだといえます。

反対に、住み慣れた地域の人間関係を失いたくない人や、地元の常連客に支えられている店舗や経営者にとっては、地区外への転出はデメリットが大きいでしょう。

地権者/地区外転出を選んだら

【メリット】
立退料で心機一転

【デメリット】
人間関係や常連客を失う

賃借人の立ち退きの選択肢【テナント・集合住宅入居者など】

自分が再開発対象エリア内の土地や建物を所有しているのではなく、賃借人(マンションやアパートの入居者、貸店舗の経営者など)である場合も、基本的には以下のいずれかを選ぶことになります。

  1. 権利変換…再開発で新しくできるビルを賃借して入居する
  2. 地区外転出…金銭の補償(立退料)を受けて地区外に引っ越す

再開発後のビルに入居する「権利変換」

権利変換を利用する場合、いったん前の店舗や家を出たのち、再開発後に建設された建物内に新たに借家権を手に入れて戻ってくることができます。

住み慣れた土地での生活を続けられ、地元のお客さんを失わずにすむのがメリットです。

ただし1つ注意しなくてはならないのは、再開発で建設されたビルに入居する権利はあるものの、家賃・賃料は前と同じではない点です。

ビルの設備や外観・安全性などが最新のものになることで家賃や賃料が大幅に上がることも少なくありません。

賃借人/権利変換を選んだら

【メリット】
変わらぬ場所で生活や商売ができる

【デメリット】
家賃やテナント賃料が高くなる

立退料を受け取る「地区外転出」

もう1つは、地区外へ引っ越しや移転して戻ってこない「地区外転出」という選択肢です。

住宅の場合、以前より不便な立地になったり、転園転校しなくてはならない可能性があります。

お店であれば常連客を失ったり、以前と同水準の面積や立地・賃料のビルがうまく見つからないなどのデメリットが考えられます。

このような理由から、立退料は単なる引っ越し費用や休業補償だけでなく、立ち退きによって発生するさまざまな不利益をカバーする金額を提示してもらう必要があります。

もし十分な立退料を受け取ることができれば、それを資金によりよい住まいや店舗で再スタートできるのはメリットだといえるでしょう。

賃借人/地区外転出を選んだら

【メリット】
よりよい住まいや店舗が見つかる可能性

【デメリット】
予定外の生活の変化や店舗経営の危機

選択肢を理解して最適な判断を

自宅や店舗が再開発の立ち退き対象となってしまったら、地権者なのか賃借人なのか、再開発工事が終わったときに元の場所に戻りたいのかそうではないのか……によって、取るべき選択肢は少しずつ異なります。

自分がどの立場に当てはまるのか、どのようなメリットとデメリットがあるのかを理解し、後悔しないようにベストな判断をしましょう。

  • 「よく考えて判断したいけど、再開発組合から返事を迫られて焦っている…」
  • 「残るべきか転出するべきか、うまくシミュレーションができない……」
  • 「立退料がいくら受け取れるのか知りたい」

といった疑問やお悩みは、法律の専門家である弁護士に相談するのがもっとも確実です。

なかでも再開発は専門性が高く、取り扱った経験のある弁護士は限られている分野のため、再開発について注力している弁護士にご相談されることをお勧めします。
リード法律事務所では、再開発についてのさまざまな疑問について、経験豊富な弁護士が無料で相談を受け付けています。お気軽にご連絡ください。

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