最終更新日:2023.10.16
殴る蹴るなどの暴行被害を受けたら刑事告訴できる?怪我していない場合は?
暴行の被害を受けた際には、怪我をした場合には傷害罪、していない場合には暴行罪で加害者を刑事告訴できます。
この記事では、刑事告訴するメリットや、暴行被害を受けた際にすべきことを解説しています。被害者の方はぜひ最後までお読みください。
以下の記事では、暴行罪の要件・量刑や事例などについて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
暴行罪の事例や量刑について解説、暴行被害に遭ったらどうすればいい?
目次
暴行を受けたら刑事告訴できる
法律上の「暴行」とは、他人の身体に対して物理的な力を行使することです。
殴る・蹴るといった典型的な暴行以外にも、たとえば以下の行為が法律上の暴行に該当します。
- 胸ぐらをつかむ
- 髪の毛や服を引っ張る
- 刀を振り回す
- 人の近くに石を投げる
暴行により怪我をした場合は傷害罪、怪我には至らなかった場合は暴行罪が成立し、加害者に対する刑事告訴が可能です。
暴行罪や傷害罪で加害者を刑事告訴すると、以下のメリットがあります。
加害者に刑事罰を与えることができる
刑事告訴をすれば、加害者に刑事罰を与えられる可能性があります。
刑事告訴とは、捜査機関に被害の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思を示すことです。告訴を受けた捜査機関が必要だと判断すれば、加害者は起訴され、刑事裁判で刑罰をくだされます。
警察は、世の中で起きたすべての事件に気がつくわけではありません。暴行が密室や人通りの少ない路上で行われていれば、警察に発覚しづらいです。知られていない事件であっても、被害者が刑事告訴により申告すれば、警察や検察を動かせます。
暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役」「30万円以下の罰金」「拘留」「科料」のいずれかです。拘留とは「1日以上30日未満」の期間にわたって、刑事施設に収容される刑罰をいいます。科料は、罰金に似た刑罰で、金額が「1000円以上1万円未満」のものです。大半のケースで懲役や罰金が言い渡され、拘留や科料になるケースはほとんどありません。
被害者が怪我をしていれば傷害罪となり、法定刑は「15年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と暴行罪より重いです。受けた被害が大きいと、実刑判決がくだされて犯人が刑務所に収監されるケースもあります。
刑事告訴により、こうした刑罰を加害者に科せる可能性が高まります。
示談交渉することも可能
刑事告訴によって、刑事処分だけでなく示談交渉が進むケースもあります。
暴行を受けた際には、加害者に対する民事上の慰謝料請求権が発生します。ただし、刑事裁判で有罪判決がくだされても、被害者への賠償が直接命じられるわけではありません。
慰謝料を受け取るためには、交渉や訴訟によって加害者に請求する必要があります。交渉に応じてくれるかは相手次第ですし、訴訟までするのは大変な手間です。勝訴したとしても、相手に財産がなければ現実にはお金を受け取れません。
刑事告訴は、直接的には刑事処分を求めるものです。付随的な効果として、重い刑罰を避けたい、前科をつけたくないといった理由で、加害者が示談交渉に積極的になる場合があります。
示談交渉の中では、被害弁償についてもセットで話し合われます。刑罰による不利益を回避するために、どうにかしてお金を用意しようとする加害者も多いです。示談がまとまれば、民事訴訟を経ずに慰謝料を受け取れます。
すなわち、刑事告訴をきっかけとして加害者が示談交渉に応じ、結果的に慰謝料を支払ってくれる可能性があるのです。
治療費を請求することも可能
暴行の加害者に対しては、慰謝料だけでなく治療費も請求できます。
暴行により怪我をして傷害罪で告訴したときには、示談交渉を通じて治療費の支払いがなされる場合があります。他にも、仕事を休まざるを得なかったときの休業損害なども請求が可能です。
怪我はしておらず暴行罪にとどまるときも、病院に行っていれば診察代を請求できます。服をつかまれて破れたなど、物的損害があった場合も賠償の対象になります。
刑事告訴をすれば、示談交渉の中で慰謝料以外の賠償金も支払ってもらえる可能性があるのです。
家庭内暴力(DV)も暴行罪として刑事告訴できる
家庭内暴力(DV)の被害に悩まれている方も多いでしょう。
DVもれっきとした犯罪です。家庭内であったとしても、殴る、蹴る、突き飛ばす、髪を引っ張る、物を投げるといった行為は、法律上の暴行に該当します。怪我に至っていないときには暴行罪、怪我を負ったときには傷害罪として処罰の対象です。
しかし、警察はDV被害者から被害届や告訴状を受理しない場合があります。受理しない理由としては「家庭内の問題だから介入しない」「証拠がない」などが挙げられます。
DV被害について警察に取り合ってもらえないときには、弁護士にご相談ください。弁護士がつけば、刑事告訴が受理される可能性が高まります。当事務所では、実際にDVについて刑事告訴を受理させたケースがございます。
長年に渡るDVは大変悪質です。暴行罪や傷害罪での刑事告訴も検討してください。
暴行被害に遭ったら
暴行の被害に遭った際には、気が動転して冷静に対応するのが難しいかもしれません。怪我をしているときには、まずは病院に行く必要があります。
犯人の責任を追及するためには、証拠を集めたうえで被害届や告訴状を提出しましょう。具体的には、以下の流れで進めてください。
証拠を集める
加害者の責任を追及するためには、証拠が不可欠です。「暴行を受けた」と訴えても、証拠がないと信用してもらえません。できる範囲で証拠を集めましょう。
証拠としては、暴行の様子をとらえた防犯カメラの映像や、目撃者の証言、痕跡が残った衣服などが挙げられます。
怪我をしているときには、すぐに病院に行って診断書を取得しましょう。時間が経ってしまうと、暴行と怪我との因果関係を証明できなくなり、傷害罪に問えないおそれがあります。
怪我の有無にかかわらず、証拠は時間とともに消えてしまいます。加害者の責任を追及できるよう、早めに動いてください。
被害届・告訴状を出す
証拠を集めたら、警察に被害届または告訴状を提出します。
現行犯逮捕されるようなケースは別として、暴行の被害は警察に判明しづらいです。被害者が申告すれば、捜査機関が動くきっかけになります。
被害届と告訴状の違いは、告訴状には犯人の処罰を求める意思表示が必ず含まれる点です。暴行罪や傷害罪は親告罪ではないため、起訴するのに告訴は必須ではありません。とはいえ、より強力な効果を持つ告訴をした方が、警察に動いてもらいやすいです。
もっとも、警察が被害届や告訴状を受理しないケースも多いです。理由としては「証拠が足りない」「民事不介入」「他の重大事件の捜査で忙しい」などが挙げられます。被害を訴えられているのに受理しないのは、不誠実な対応といえます。
弁護士に相談する
警察に取り合ってもらえないときには、弁護士にご相談ください。
弁護士は証拠を収集・精査したうえで受理されやすい告訴状を作成し、警察を説得します。警察であっても、法律を正しく理解できているとは限りません。受理すべきことを法的に説明すれば、警察が相手にしてくれるケースが多いです。
警察とのやり取りも弁護士がサポートするため、精神的な負担も軽減されるはずです。証拠がなくなる前に弁護士に依頼すれば、告訴が受理されやすくなります。加害者の刑事・民事両面での責任を追及するために、早めにご相談ください。
暴行被害で刑事告訴する際によくある質問
暴行被害について刑事告訴をお考えの方からよく受ける質問をまとめました。
医師の診断書は必要?怪我していない場合は?
暴行を受けていれば、怪我をしていないときでも暴行罪は成立します。医師の診断書がなくても刑事告訴は可能です。
暴行により怪我をしたときには、傷害罪となります。怪我の事実を証明するために、病院に行って医師に診断書を作成してもらいましょう。
時間が経過すると、暴行が原因で怪我を負ったと証明できなくなってしまい、傷害罪での告訴が難しくなるおそれがあります。すぐに病院に行くようにしてください。
子供同士の喧嘩は暴行罪として告訴できる?
子供同士の喧嘩でも、暴行があれば暴行罪や傷害罪に該当し得ます。告訴して罪に問えるかどうかは、加害者の年齢によります。
加害者が13歳以下(14歳未満)の場合には「刑事未成年」として扱われ、刑事責任能力がないとして犯罪は成立しません。いくら体格がいい子供であっても、13歳以下であれば暴行罪や傷害罪での処罰は求められないのが法律上のルールです。
14歳以上の未成年については、刑事責任能力があり罪に問えます。とはいえ、凶悪事件を除いて大人と同様の刑罰は科されません。少年審判により、少年院に送られたり、保護観察になったりする可能性があります。
なお、刑事処分を求められなくても、加害者本人や親権者への民事上の損害賠償請求は可能です。
まとめ
ここまで、暴行の刑事告訴について解説してきました。
暴行があった際には、怪我に至らなかった場合は暴行罪、怪我があれば傷害罪が成立します。いずれにしても、刑事告訴をすれば、刑罰が科されたり、示談交渉が進んで賠償を受けられたりする可能性があります。
もっとも、警察が告訴を受理してくれないケースも多いです。加害者に暴行の責任を追及したい方は、リード法律事務所までご相談ください。
当事務所は犯罪被害者のサポートに力を入れており、暴行に関して傷害罪で告訴を受理させた事例が多数ございます。暴行を受けて刑事告訴を検討している方は、お気軽にリード法律事務所までお問い合わせください。