横領被害にあったら

最終更新日:2024.07.22

1000万円以上の業務上横領に遭ったら?会社がすべき対応を解説

業務上横領の被害が1000万円以上になると、民事上の請求をしても返金を受けるのは困難といえます。

少しでも返金される可能性を上げるには、刑事告訴が効果的です。1000万円以上の業務上横領をすると基本的に実刑判決となるため、刑務所に入るのを回避したい加害者が示談のために何とかお金を用意しようとするケースがあります。

この記事では、1000万円以上の業務上横領の被害に遭った際に会社がとるべき対応について解説しています。高額の横領被害に遭った会社関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。

業務上横領の被害額が1000万円以上だと刑罰はどうなる?

業務上横領罪は、業務上管理を任された財産を自分の物にする犯罪です。被害額が1000万円以上になると、会社にとっては大きなダメージになります。刑事裁判になれば加害者には実刑判決がくだされ、ただちに刑務所に収監される可能性が極めて高いです。

まずは、業務上横領罪が成立するケースや、1000万円以上の業務上横領をしたときの刑罰について解説します。

そもそも業務上横領罪とは?

業務上横領罪は、業務として管理を任された他人の財産を、加害者が自分の物にする犯罪です。よくあるのが、会社において財産の管理を任されている従業員が、権限を利用して着服するケースです。

具体例としては以下が挙げられます。

  • 経理担当者が、会社の口座から自己名義の口座に資金を移す
  • 集金担当者が、取引先から集めたお金を持ち逃げする
  • 店舗責任者が、売上額を少なめに申告して差額を自分の懐に入れる

業務上横領罪は、会社から権限を与えられた従業員による不正行為を処罰する犯罪です。背任罪との区別が難しいケースもあります。

業務上横領罪の成立要件や事例について詳しくは、以下の記事を参照してください。

参考記事:業務上横領罪とは?量刑と構成要件、背任罪との違いについて被害者向けに解説

また、管理権限がない従業員が会社の財産を奪ったときには窃盗罪、会社からお金を騙し取ったときには詐欺罪など、別の犯罪が成立します。

横領と窃盗の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参考記事:横領と窃盗の違いとは?具体例や被害者がすべきことを弁護士が解説

業務上横領罪の量刑

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。罰金刑は規定されていません。刑事裁判で有罪になれば、必ず懲役刑が言い渡されます。

通常の横領罪が「5年以下の懲役」であるのと比べて刑が重いです。業務における信頼を裏切る行為であり、被害額が大きくなりやすいため、法律上科せる刑罰が重くなっています。

実際に判決で言い渡される量刑を左右するのは、被害額です。被害額が大きければ大きいほど、刑期が長くなりやすいです。

他にも、以下の要素が量刑に影響を与えます。

  • 示談・被害弁償の有無
  • 犯行態様(手口、回数、期間など)
  • 犯行に至る動機
  • 前科の有無

被害額で大まかな量刑が決まり、他の要素によって多少変動するイメージです。特に被害を弁償して示談していると、刑が大幅に軽くなります。

1000万円以上だと基本的に実刑になる

業務上横領罪で被害額が1000万円以上だと、通常は実刑判決になります。

経験上、おおむね被害額が400万円程度を超えるかどうかが、執行猶予がつくか実刑になるかのボーダーラインです。1000万円は400万円を大きく超えており、実刑判決になる可能性が非常に高いといえます。

執行猶予がつくと、加害者が猶予期間を何事もなく過ごせば、刑務所には収監されません。実刑判決になれば確実に刑務所に収監されるため、執行猶予がつくかどうかは加害者にとっては大きな違いです。

被害額が1000万円以上の業務上横領罪では、刑事裁判になれば基本的に実刑判決がくだされます。被害の大半を弁償して示談しているようなケースを除き、執行猶予はつきません。裁判前に逮捕される可能性も高く、加害者への刑事上の制裁は大きくなります。

1000万円以上の業務上横領被害に遭った会社がとるべき対応

1000万円以上の業務上横領の被害に遭ったら、すぐに証拠を確保して、民事上の請求や刑事告訴を検討しましょう。特に刑事告訴が効果的な手段です。社内での懲戒処分も忘れないでください。

以下で、社内で業務上横領が起きたときの対応を解説します。次の記事もあわせて参考にしてください。

参考記事:業務上横領が起きたらどうすればいい?会社の対応について弁護士が解説

証拠を確保する

まずは、横領の証拠を確保してください。いかなる手段をとるにしても、証拠の存在は不可欠です。

証拠になり得る物の例としては、以下が挙げられます。

  • 横領に使った書類(契約書、請求書、発注書、領収書など)
  • 会社口座の入出金記録
  • 加害者が送受信したメール
  • 事務所や店舗の防犯カメラ映像

何が有力な証拠になるかはケースバイケースです。何が証拠になるかわからないときには、弁護士にご相談ください。

多額の横領をされていると、期間が長くなっている場合も多いです。証拠が消えないよう、早めに行動しましょう。

社内における横領の証拠になる物や集め方について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考記事:業務上横領が社内で起きた際の証拠の集め方・注意点を弁護士が解説

民事上の請求をしても返金は期待できない

証拠を集めたら法的手段を検討します。加害者が支払いに応じないときに主に考えられるのは、民事訴訟と刑事告訴です。

民事訴訟で勝訴し、相手に十分な財産があれば、被害を回収できます。しかし、被害額が1000万円を超える場合には、加害者の財産から全額を回収するのは困難です。横領によって加害者が得たお金は、すでに使っていて残っていないケースが多いです。

勝訴判決を得ても、相手からお金を回収できなければ意味がありません。強制執行をしてもお金を受け取れなければ、判決は絵に描いた餅になってしまいます。

民事訴訟は多くの被害者の方や弁護士が考える手段ですが、1000万円を超える業務上横領のケースではあまり効果がありません。

刑事告訴が有効

高額の横領をした加害者の法的責任を追及するには、刑事告訴が有効です。

刑事告訴とは、犯罪被害にあった事実を捜査機関に申告し、処罰を求める意思を伝える行為です。刑事告訴をすれば、刑罰を与えられるのはもちろん、返金や再発防止にもつながります。

以下で、刑事告訴のメリットを順に説明します。業務上横領罪で刑事告訴をするメリット・デメリットについて詳しくは、次の記事も参考にしてください。

参考記事:従業員による業務上横領は刑事告訴すべき?メリット・デメリットを解説

刑罰を与えられる

社内での横領は、何もしないでいると、部外者である警察や検察には明らかになりません。刑事告訴により被害の事実を伝えれば、加害者に刑罰を与えられます。

最終的に起訴して刑事裁判にするのかを決めるのは検察官です。たしかに、告訴しても結果的に不起訴処分になるケースもあります。

しかし、証拠が十分にあり1000万円以上の横領を確実に証明できる場合には、被害者が示談をして許さない限りは、検察官は起訴すべきと判断するはずです。しかも、刑事裁判になれば実刑判決がくだされる可能性が非常に高いです。

したがって、1000万円を超える業務上横領のケースでは、刑事告訴によって重い刑罰を与えられます。

示談により返金を受けやすい

刑事告訴により、返金を受ける可能性を高められます。

横領は、最初は軽い気持ちで少額からはじめ、繰り返しているうちに金額が膨らんでいく場合が多いです。たとえ罪の意識が薄くても、告訴された事実を加害者が知れば、自身に刑罰が科される事態を強く意識するはずです。特に被害額が大きいケースでは、インターネットで調べたり弁護士に相談したりすれば、実刑が確実との事実がわかるでしょう。

一般の人にとって、実刑判決がくだされ刑務所に収監されるのは耐え難い苦痛です。自由が制限されて家族と会えなくなるだけでなく、仕事ができず経済的にも大きなダメージを受けます。プライベートでも仕事でも、今まで築いてきた関係や信頼がすべて崩れる危機が訪れます。

そこで、刑務所に入るのを避けるために、加害者は何としてでも会社と示談したいと考えやすいです。手元にあるお金で足りなければ、示談に必要なお金を親族などから借金してまで用意するケースも存在します。とりわけ社会的地位が高いと、どうしても示談したいと考える傾向にあります。

刑事告訴は、本来は刑罰を求めるための方法です。しかし、結果的に加害者にプレッシャーをかけ、返金を受ける可能性を高められます。

横領で返金を受けやすいケースについて詳しくは、以下の記事で解説しています。

参考記事:横領されたお金は返ってくる?返済されやすいケースと方法を弁護士が解説

再発防止にもつながる

刑事告訴をすれば、横領を許さないとの会社の姿勢を示せるため、他の従業員が横領に及ぶのを防ぐ効果もあります。最終的に実刑判決が出れば、抑止効果はより大きいでしょう。

反対に、多額の被害があったのに甘い対応をすると、他の従業員が不正行為を深刻にとらえなくなるおそれもあります。厳しい姿勢を示して再発を防げる点も、刑事告訴をするメリットのひとつです。

懲戒処分も行う

社内での懲戒処分も行ってください。

1000万円以上の横領行為に及んでいれば、懲戒解雇が相当です。甘い処分をすれば、他の従業員への誤ったメッセージになるだけでなく、世間からも厳しい目を向けられるおそれがあります。

後から無効を主張されないよう、懲戒処分に際しては、証拠をそろえたうえで弁解の機会を与えるなど、適正な手続きを踏んでください。

1000万円以上の業務上横領被害を弁護士に相談するメリット

高額の横領被害に遭った際には、弁護士に相談・依頼するメリットが大きいです。具体的なメリットとしては、以下の点が挙げられます。

証拠収集のサポートを受けられる

いかなる手段をとるにせよ、加害者の責任を追及するには証拠が不可欠です。とはいえ、何を集めればいいかは簡単にはわからないでしょう。また、高額の横領では被害額・回数に比例して証拠の量も増えやすく、集めるのが大変です。

弁護士は、事案に応じて何が証拠になるか、どう集めればいいかをアドバイスします。加えて、有罪にするにはどの程度の証拠が揃えばいいかも判断できます。証拠が不足していて認定できる被害額が少ないときには、実刑判決になるラインに達するまで泳がせる方法をとることも可能です。

被害者自身では難しい証拠収集も、弁護士のサポートを受ければ安心です。

刑事告訴が受理されやすくなる

被害者自身が警察に出向いて告訴しようとしても、簡単には受理してもらえません。「証拠が足りない」「犯罪にはならない」などと理由をつけられて、拒否されるケースが非常に多いです。

そこで、弁護士に依頼するのが有効です。刑事告訴に強い弁護士がつけば、受理されやすい告訴状の作成方法や警察への説得のコツを知っているので、受理可能性が高まります。

ただし、刑事告訴に精通している弁護士は限られています。刑事告訴に力を入れていて、経験豊富な弁護士を探して依頼するようにしましょう。

示談交渉を任せられる

被害者自身が加害者に返金を求めても、相手にしてくれないケースがあります。また、加害者が弁護士をつけていれば、不利な条件で示談を強いられるリスクも高いです。交渉や準備に時間をとられ、精神的なストレスもかかるでしょう。

弁護士には示談交渉も任せられます。プレッシャーをかけて交渉できるため、加害者が返金に応じやすくなります。被害額が1000万円以上のケースでは、弁護士費用を支払っても返金額が増えるのであればメリットが大きいです。弁護士が窓口になれば、会社にかかる負担が軽減できるメリットもあります。

金銭面だけでなく、時間的・精神的負担の側面から見ても、弁護士に依頼して交渉を任せるのが得策といえます。

1000万円以上の業務上横領に遭ったらリード法律事務所にご相談ください

ここまで、1000万円以上の業務上横領被害に遭った際の対処法について解説してきました。

業務上横領罪で被害額が1000万円を超えると、基本的に加害者には実刑判決がくだされます。厳しい刑罰が予想されるため、刑事告訴により加害者にプレッシャーをかけるのが有効です。結果的に、当初は難しいと考えられていた金額が返金されるケースもあります。

高額の横領被害に遭ってお困りの方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は、犯罪被害者の弁護に力をいれており、横領でも告訴を受理させてきた実績がございます。被害者の皆様に寄り添って、加害者の責任を追及するために全力でサポートいたします。

1000万円以上の業務上横領被害に遭った方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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