詐欺被害にあったら

最終更新日:2023.07.03

詐欺罪とは?量刑や詐欺手口の種類、被害に遭ったらすべきことを解説

詐欺罪は、被害者から財産をだまし取る犯罪です。詐欺には様々な手口があり、オレオレ詐欺など特殊詐欺の被害は社会問題にもなっています。悪質な詐欺の加害者には、厳罰が科されるケースも多いです。

この記事では、詐欺罪の要件、量刑、手口や、被害に遭った際にすべきことをまとめています。詐欺の被害に遭われた方は、ぜひ参考にしてください。

詐欺罪とは

詐欺罪とは、簡単にいえば、他人から財産をだまし取る犯罪です(刑法246条)。

詐欺罪は犯罪の中でも件数が多く、犯罪白書(令和4年版)によると認知件数、検挙人員ともに刑法犯の6%近くを占めます。犯罪の認知件数全体が減少傾向にある中、詐欺罪の件数はここ10年ほど横ばい傾向です。

特殊詐欺の被害をニュースなどで耳にする機会も多く、身近に潜む犯罪といえるでしょう。

まずは、詐欺罪の構成要件や量刑について解説します。

詐欺罪の構成要件

詐欺罪が成立するための構成要件は、以下の4つです。

①欺罔行為(あざむく行為)

まず、他人に財産を処分させるような「欺罔行為(あざむく行為)」があったことが要件です。欺罔行為とは、被害者をだまして財産を受け取るために、ウソの事実を伝える行為をいいます。

たとえばオレオレ詐欺のケースでは、息子になりすまして「交通事故を起こして示談金が必要になった」と伝える行為が、欺罔行為に該当します。

典型的には、被害者にウソをつく行為が欺罔行為にあたります。積極的にウソをつく場合だけでなく、釣銭の間違いに気がついて黙っている場合など「言うべきことを言わない」ことも欺罔行為の一種です。

釣銭が多いことにその場で気がついたときには「お釣りが多いです」と伝える義務があります。にもかかわらず黙っていれば「言うべきことを言っていない」として欺罔行為とみなされます。

なおただし、財産の引渡し処分以外に向けられたウソは、欺罔行為にはあたりません。たとえば、ウソをついて相手を土下座させても、財産の引渡し処分に向けられた欺罔行為はないため、詐欺罪は成立しません。

②錯誤(だまされる)

錯誤とは、欺罔行為によって、被害者が「財産を渡す必要がある」とだまされることです。だまされなかったときには、詐欺未遂罪になります。

③交付行為(財産を引き渡す)

だまされた状態で、被害者が交付行為(財産を引き渡す行為)をしたことも要件です。

だまされているにせよ、交付行為は一応は被害者の意思に基づいたものです。ウソで気をそらした隙に加害者が財産を持ち去ったときには、交付行為はなく、詐欺罪は成立せずに窃盗罪になります。

④財産移転(財産が加害者側の物になる)

財産が加害者の元に移転すれば詐欺罪が成立します。

金銭や宝石などの「財物」に限らず、「財産上の利益」が移転したときにも詐欺罪に該当します(刑法246条2項)。たとえば、飲食代金の支払いや借金の返済を免れたケースです。

以上が詐欺罪の構成要件です。

なお、①から④の過程すべてに因果関係が認められなければなりません。欺罔行為があったものの、だまされはせず、犯人を不憫に思って財産を渡した場合には、因果関係がないため詐欺罪(既遂)は成立しません。このときは詐欺未遂罪になります。

詐欺罪の量刑

詐欺罪を犯した加害者には「10年以下の懲役」が科されます。懲役のみで罰金刑はありません。

被害額が大きいケースや、組織的な特殊詐欺など悪質なケースでは、執行猶予がつかず実刑判決になる可能性が高いです。

詐欺は未遂も処罰対象です(刑法250条)。欺罔行為があったものの、被害者がだまされなかったり、財産が移転しなかったりした場合には、詐欺未遂罪となります。

詐欺の手口

詐欺罪における欺罔行為の手段・方法に制限はありません。実際に詐欺には様々な手口があり、古典的なものだけでなく、新たな手法も日々出現しています。

代表的な詐欺の手口は以下の通りです。

名称手口
特殊詐欺オレオレ詐欺、還付金詐欺、架空料金請求詐欺などの総称
結婚詐欺・国際ロマンス詐欺結婚すると思わせて金品をだまし取る
フィッシング詐欺偽メールを送り、ID・パスワードなどを入力させる
寸借詐欺借りると見せかけて金銭をだまし取る
投資詐欺・副業詐欺ありもしない儲け話で金を集める
無銭飲食・宿泊料金を支払うつもりがないのにサービスを受ける
無賃乗車(キセル)全区間の乗車券を持たずに不正乗車する
訴訟詐欺裁判所にウソの申立てをして勝訴判決を得る
保険金詐欺交通事故などをでっち上げて保険金をだまし取る
霊感商法霊感があると装い、壺・印鑑などを売りつける

他にも、詐欺には紹介しきれないほど様々な手口があります。

以下で、特殊詐欺など近年問題になっている手口を中心に詳しく解説します。

特殊詐欺

特殊詐欺は、電話などで信頼させ、被害者から預金口座に振り込ませるなどして金銭をだまし取る手口の総称です。「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」といった名称でご存じの方も多いでしょう。

特殊詐欺の被害総額は令和3年のデータで約282億円にものぼっており、詐欺の中でも特に問題になっている類型です(参考:犯罪白書(令和4年版)|法務省)。

特殊詐欺の手口としては以下が挙げられます。

オレオレ詐欺

親族、警察官、弁護士などを装って電話をかけ、事故・事件の示談金といった名目でお金が必要であることを告げ、金銭をだまし取る手法です。犯人が「俺、俺」と名乗っていたことから名づけられました。

銀行振込みだけでなく、現金を宅配便で送らせたり、手渡しさせたりするケースもあります。特殊詐欺の中でも典型的な手口です。

預貯金詐欺

警察官、銀行協会などを名乗り「不正利用があったため」などと告げてキャッシュカードの交付が必要と信じ込ませ、だまし取る手口です。

似た手口に、被害者が気づかないうちにキャッシュカードをすり替えて盗みとる「キャッシュカード詐欺盗」があります。キャッシュカード詐欺盗は、法律上は窃盗罪です。

架空料金請求詐欺

事業者や裁判所を名乗ってメールやハガキを送り、存在しない利用料金を支払わせる手口です。振込み以外に、プリペイドカードを購入させるケースもあります。

還付金詐欺

自治体や税務署などの職員を名乗り、医療費や税金が還付されると告げ、ATMを操作させて犯人の口座にお金を振り込ませる手口です。被害者自身がお金を受け取れると思い込ませる点が特徴といえます。

以上が典型的な特殊詐欺ですが、他にも融資保証金詐欺、ギャンブル詐欺、交際あっせん詐欺などがあります。

結婚詐欺・国際ロマンス詐欺

結婚詐欺や国際ロマンス詐欺は、被害者の恋愛感情を利用した手口です。

結婚詐欺では、結婚するつもりと見せかけて被害者に近づきます。結婚する段階になって「実は借金がある」など告げて金銭をだまし取るのが典型例です。お金を渡すと、連絡がとれなくなってしまいます。

SNSなどで外国人を装って近づき金銭をだまし取る手口もあり、国際ロマンス詐欺と呼ばれます。

いずれも、被害者の恋愛感情を逆手に取った悪質な詐欺です。加害者から「本当に結婚するつもりだった」などと言い逃れをされるケースもあります。詐欺罪に問うためには、結婚するつもりがなかった点の立証がポイントになります。

フィッシング詐欺

フィッシング詐欺とは、メールを送って偽サイトに誘導し、ユーザーID・パスワードやクレジットカード番号などの個人情報を盗み取る手口です。

「フィッシング詐欺」という名称ですが、情報を知られただけでは詐欺罪は成立しません。財物や財産上の利益は交付されていないためです。

通常、フィッシング詐欺は不正アクセス禁止法違反に該当します。情報が利用されて財産的な被害が生じると、詐欺罪となる可能性が出てきます。

寸借詐欺

寸借詐欺は、少額の金銭を借りると見せかけて、実際にはだまし取る手口です。

加害者は「財布を忘れたから少しお金を借りたい」「お金を盗まれた。帰りの電車賃を貸して欲しい」などとウソをつきます。

被害者の善意につけ込んで少額の金銭をだまし取る点が、寸借詐欺の特徴です。

被害額が少なかったとしても、詐欺であることに変わりはありません。寸借詐欺では、加害者の連絡先がわからなかったり、「返すつもりだった」と主張されてしまったりして、追及しづらくなる問題があります。

投資詐欺・副業詐欺

近年ブームになっている投資や副業に関する詐欺もあります。

投資詐欺では「年利○%以上」「元本保証」といった文句で金を集めるケースが多いです。実際には集めた資金は運用されておらず、だまし取られてしまいます。

副業詐欺の例としては、「簡単に儲かる」とうたって中身のない情報商材を売りつけるケースが挙げられます。

▼詐欺罪で刑事告訴された成功事例はこちらの記事をご確認ください。

投資詐欺(ポンジスキーム)について詐欺罪で刑事告訴が受理された案件

詐欺罪と窃盗罪・強盗罪・恐喝罪の違い

詐欺罪と勘違いしやすい犯罪が、窃盗罪・強盗罪・恐喝罪です。これらはいずれも被害者の財産に対する犯罪ですが、暴行・脅迫の有無や、財産移転に関する被害者の意思に違いがあります。

簡単にまとめると、次の表の通りです。

財産移転
被害者の意思に基づく被害者の意思に反する
暴行脅迫あり恐喝罪強盗罪
なし詐欺罪窃盗罪

以下で詐欺罪と窃盗罪・強盗罪・恐喝罪の違いを順に解説します。ご自身の受けた被害が詐欺以外の犯罪に該当しないかをご確認ください。

詐欺罪と窃盗罪の違い

窃盗罪は、他人の財産を盗み取る犯罪です(刑法235条)。

詐欺罪と窃盗罪の違いは、被害者の意思に基づいて財産が移転しているか否かです。

詐欺罪では、だまされているにせよ、被害者の意思に基づいて財産が加害者に交付されています。対して窃盗罪では、被害者の意思に反して財産が加害者の手元に渡ります。

たとえば、玄関先で「近所で火事が発生している」とウソをつかれて被害者が外に出て、その隙に財産を奪われたケースで、成立するのは窃盗罪です。加害者がウソをついているものの、財産の移転に被害者の意思が介在していないため、詐欺罪には該当しません。

このように、ウソによって財産を奪われても、詐欺罪でなく窃盗罪になるケースがあります。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。罰金の可能性もある点で、詐欺罪よりは刑罰が軽くなっています。

詐欺罪と強盗罪の違い

強盗罪は、暴行や脅迫を用いて強引に他人の財産を奪う犯罪です(刑法236条)。

強盗罪でも、窃盗罪と同様に、被害者の意思に反して財産が移転します。被害者の意思で財産が交付される詐欺罪とは異なります。

また、強盗罪は暴行や脅迫を伴う点も、詐欺罪との違いです。

強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」と非常に重くなっています。

詐欺罪と恐喝罪の違い

恐喝罪とは、暴行や脅迫により、財産を交付させる犯罪です(刑法249条)。

恐喝罪では暴行や脅迫を伴う点が、詐欺罪とは異なります。だまして交付させるのが詐欺罪、脅しによって交付させるのが恐喝罪です。

恐喝罪では暴行・脅迫があるものの、強盗罪と異なり、被害者の意思に基づいて財産が移転します。抵抗できないほどの暴行・脅迫がある強盗罪に対して、その程度までは至っていないものが恐喝罪です。一応は被害者の意思が介在している点が、詐欺罪と恐喝罪で共通します。

恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、詐欺罪と変わりません。

詐欺の被害に遭ってしまったら

詐欺の被害に遭われた際には、犯人の処罰や被害の回復のために、すぐに行動する必要があります。

ポイントとしては以下が挙げられます。

証拠を確保する

詐欺では、犯行の証拠を確保するのが重要です。

詐欺の犯人の多くは証拠を残さないように動いており、後から特定や立証ができないようにしています。特に、だます意思があったかは内心の問題であるため、証拠がないと「金は返すつもりだった」との犯人の主張を崩すのが難しいです。

実際に、詐欺罪の検挙率は5割程度であり、他の犯罪(強盗・傷害・暴行・脅迫・恐喝・横領・放火など)の8~9割程度と比べると低くなっています(参考:犯罪白書(令和4年版)|法務省)。

処罰できない事態を防ぐために、電話やメールの記録、犯人の銀行口座、ウェブサイトの情報など、残せる証拠はすべて確保しておくようにしましょう。

速やかに相談する

「詐欺に遭ったかも」と感じたら、すぐに関係機関に相談してください。

まず考えられるのが、警察への相談でしょう。もっとも、被害金額が少なかったり、証拠が不十分であったりすると、取り合ってくれないケースも珍しくありません。金の貸し借りなど、犯罪にあたらない民事的なトラブルだと判断されて、相手にされない可能性もあります。

他の相談先としては、国民生活センターも考えられます。国民生活センターでは消費者問題の相談を受け付けており、詐欺被害へのアドバイスを受けることも可能です。しかし、個人間のトラブルについては相談を受け付けていません。

他の機関で十分に対応してもらえない場合には、弁護士への相談をご検討ください。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談すれば、事情を踏まえて、必要な証拠収集や手続き全般をサポートしてもらえます。

警察に対しては、証拠を整理して、法律的に犯罪が成立することを示せます。やりとりも任せられるため、面倒な手続きによるストレスから解放されるでしょう。

また、民事でも依頼できるため、金銭的被害の回復を図ることも可能です。

ただし、被害者からの依頼を受けている弁護士は多くはありません。弁護士を選ぶ際には、被害者側の実績があるかを確認するとよいでしょう。

詐欺被害に遭ったら弁護士に相談を

ここまで、詐欺罪の要件、量刑、手口や、被害に遭った際にすべきことなどを解説してきました。ここまでお読みになって「自分の受けた被害は、やはり詐欺だった」とお感じになった方は、すぐに弁護士にご相談ください。

リード法律事務所では、被害者の方々からご依頼を受け、詐欺罪について刑事告訴を受理させた実績が多くあります。詐欺被害に遭われた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

▼リード法律事務所の詐欺罪の解決事例はこちらをご覧ください

詐欺罪の刑事告訴受理の実績一覧

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