性犯罪にあったら

最終更新日:2024.04.16

不同意性交等罪における「暴行・脅迫」の要件とは?具体例も解説

不同意性交等罪の成立要件のひとつに「暴行・脅迫」があります。改正前の強制性交等罪では必須の要件であり、暴行または脅迫が認められないために泣き寝入りを強いられる被害者も存在しました。

この記事では、暴行・脅迫を中心に不同意性交等罪の成立要件について解説しています。ご自身の受けた被害が犯罪に該当するか知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

不同意性交等罪とは?

不同意性交等罪とは、同意がないのに性交等を強要する犯罪です。2023年7月に施行された法改正により、従来の強制性交等罪と準強制性交等罪が統合され、名称が変更されました。

改正されたのは次の点です。

  • 成立要件が明確化された
  • 陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為も処罰対象になった
  • 性交同意年齢が16歳に引き上げられた
  • 夫婦間でも成立する点が明記された
  • 公訴時効期間が5年延長された

以下では成立要件について詳しく解説します。

不同意性交等罪の成立要件

不同意性交等罪が成立するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 同意しない意思を形成・表明・全うするのが困難な状態であった
  • 暴行・脅迫などの原因があった
  • 「性交等」をした
  • 加害者に故意が認められる

順に解説します。

同意しない意思を形成・表明・全うするのが困難な状態であった

中心となる要件が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じ」たことです(刑法177条1項)。

同意しない意思を「形成」するのが困難な状態とは、性交等をするかを判断するきっかけや能力がない状態です。例としては、眠っている、障害がある、フリーズ状態にあるなどが挙げられます。

「表明」するのが困難な状態とは、性交等をしたくない意思は生じたものの、外部に表明できない状態です。上司と部下の関係にあり、拒否感を示せば不利益が予想されるケースが該当します。

「全う」するのが困難な状態とは、拒否の意思を示したものの、意思を実現できない状態です。たとえば、強く押さえつけられて身動きがとれないケースです。

同意しない意思を「形成」「表明」「全う」できない状態のいずれかにあることが、メインの要件になります。

暴行・脅迫などの原因があった

同意しない意思を形成・表明・全うできない状態になる原因として、条文で8つの類型が挙げられています(刑法177条1項、176条1項各号)。

具体的には以下の8つです。

1号暴行・脅迫暴力や脅しにより性交等を強要する
2号心身の障害障害ある状態にさせて、または元から障害のある人に性交等をする
3号アルコール・薬物酒や薬物を摂取させて、または酩酊状態にあることを利用する
4号睡眠その他意識不明瞭睡眠など意識が不明瞭な状態にさせて、またはその状態を利用する
5号同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない不意打ちで性交等に及び、拒否する時間を与えない
6号予想と異なる事態に直面し恐怖・驚愕予想外の事態に直面して意思表示ができない(フリーズ)状態を利用する
7号虐待に起因する心理的反応虐待により生じる恐怖心、抵抗を無駄と考える状態などを利用する
8号経済的・社会的関係の利用上司と部下、教師と生徒などの関係を利用する

参考:性犯罪関係の法改正等Q&A|法務省

以上の類型にダイレクトにあてはまらなくても、類似する理由があれば要件を満たします。

また、行為がわいせつでないと勘違いさせたり、人違いをさせたりして性交等に及んだケースも処罰対象になります(刑法177条2項)。具体的には、医療的に必要な行為だと誤解させた場合や、恋人だと勘違いさせて別人が性行為をした場合です。

改正前の強制性交等罪では「暴行または脅迫」が要求されており、準強制性交等罪を含めても成立する範囲が限られていました。改正により、フリーズ状態や上下関係を利用した場合など、従来罪に問いづらかった類型についても処罰対象になる点が明確になっています。

「性交等」をした

同意しない意思を形成・表明・全うできない状態の被害者に「性交等」をしたことが要件です。

従来は「性交等」が以下の行為と定められていました。

  • 性交
  • 肛門性交(アナルセックス)
  • 口腔性交(オーラルセックス)

すなわち、男性器(陰茎)を被害者の女性器(膣)・肛門・口のいずれかに挿入する・させる行為が「性交等」に該当します。男性が被害者となって、陰茎の挿入を強いられるケースも含まれます。

これらに加えて、改正により「膣や肛門に(陰茎以外の)身体の一部や物を挿入するものであってわいせつなもの」も追加されました。手指や器具を挿入する行為は、従来改正前の強制わいせつ罪で処罰されていましたが、現在は不同意性交等罪の処罰対象です。

加害者に故意が認められる

これまで紹介した客観的な要件に加えて、加害者の内心に故意が認められることも成立要件のひとつです。

具体的には、

  • 暴行・脅迫などの原因行為があった
  • 被害者が同意しない意思を形成・表明・全うできない状態にあった
  • 性交等をした

ことのすべてを加害者が認識していなければ成立しません。

16歳未満であれば同意の有無にかかわらず罪になる

被害者が16歳未満であれば、性交等があったときには同意の有無にかかわらず加害者を罪に問えます(刑法177条3項)。16歳未満の被害者は、性行為の意味や結果を理解できず、同意する能力がないと考えられるためです。

性交同意年齢は改正以前は13歳とされていましたが、16歳に引き上げられました。

ただし、被害者が13歳以上16歳未満のときには、5歳差以上の場合に限り成立します。同世代の性行為を一律に違法にするのは望ましくないためです。

たとえば、18歳と14歳のカップルについては、同意があれば罪になりません。加害者20歳、被害者14歳のときには、同意の有無にかかわらず、性交等があれば成立します。

同世代の場合の例外はありますが、性交等をされた被害者が16歳未満であれば、基本的に同意の有無にかかわらず罪になります。

不同意性交等罪における「暴行・脅迫」要件とは?

「暴行・脅迫」によって性交等を強いるのは典型的なケースです。不同意性交等罪における「暴行・脅迫」の要件について詳しく解説します。

暴行・脅迫の法的な定義

刑法において一般的に「暴行」とは、他人の身体に向けて物理的な力を行使することを意味します。殴る・蹴るといった行為が典型的な暴行です。他にも、身体を押さえつける、髪の毛・衣服を引っ張るといった行為が暴行に該当します。

「脅迫」の法的な意味は、相手を恐れさせるほどの害悪を告げることです。たとえば「殺すぞ」「ボコボコにしてやる」「従わないとネットで広めるぞ」といった言葉が脅迫に該当します。

強制性交等罪では「反抗を著しく困難にさせる程度」が要求されていた

暴行や脅迫は法的に上記の意味で用いられますが、犯罪によっては、より強い暴行または脅迫が要求される場合があります。改正前の強制性交等罪(強姦罪も含む)では、判例上「反抗を著しく困難にさせる程度」の暴行または脅迫が必要であると解釈されていました。

両手両足を縛って抵抗できないようにするなど、該当すると明らかなケースでは問題は生じません。しかし、性交に伴う通常の動作をしているだけであれば「暴行・脅迫」がないとされ、罪に問えない可能性がありました。

従来の強姦罪や強制性交等罪では「反抗を著しく困難にさせる程度」の暴行あるいは脅迫が必要とされ、成立する範囲が狭まっていたといえます。

不同意性交等罪ではハードルが下がった

改正後の不同意性交等罪では、暴行・脅迫が「同意しない意思を形成・表明・全うできない状態」に至るひとつの原因として位置づけられました。強制性交等罪で必須の要件とされていたのとは大きく異なります。

暴行または脅迫は必須ではなくなり、必ずしも強い暴行や脅迫がなくても、状況によっては不同意性交等罪が成立するようになりました。

不同意性交等罪における暴行・脅迫の具体例

不同意性交等罪における暴行や脅迫の具体例としては、以下が考えられます。

【暴行】

  • 顔面を殴る
  • 腹を蹴る
  • 両手両足を縛る
  • 馬乗りになる
  • 無理やり身体を押さえつける
  • 首を締め付ける
  • 脚を強引に開く

【脅迫】 ※()内は不利益が生じる対象

  • ナイフを突きつける(生命・身体)
  • 「逃げたら殺す」(生命)
  • 「大人しくしないと殴るぞ」(身体)
  • 「声を出したらこれまでのことを全部世間にばらす」(名誉)
  • 「終わるまでここから出さない」(自由)
  • 「応じないと金は返さない」(財産)

他にも多種多様な事例が考えられます。ご自身の受けた被害が不同意性交等罪に該当するか知りたい方は、弁護士にご相談ください。

暴行・脅迫がないと不同意性交等罪の要件にあてはまらない?

たとえ暴行や脅迫がなくても、他に「同意しない意思を形成・表明・全うできない状態」になる原因が認められれば、不同意性交等罪は成立します。

たとえば、以下のケースで罪になり得ます。

  • 知的障害があった
  • 飲酒させられた
  • 眠っていた
  • 恐怖のあまりフリーズ状態に陥った
  • 幼少期から虐待を受けていて抵抗する発想がなかった
  • 相手が上司であった

法改正により、暴行・脅迫以外の要件が明記されました。暴行や脅迫がないケースでも、泣き寝入りする必要はありません。

不同意性交等罪になるかわからないときは弁護士にご相談ください

ご自身の受けた被害に不同意性交等罪が成立するかわからなくても、弁護士にご相談ください。弁護士に相談・依頼するメリットは以下の通りです。

犯罪になるか判断できる

弁護士に相談すれば、受けた被害が不同意性交等罪に該当するかがわかります。

条文上は成立要件が明確になったとはいえ、実際の運用はこれからです。一般の方にとっては解釈が難しい場合もあるでしょう。不同意性交等罪には該当しないものの、不同意わいせつ罪にはあたるケースも考えられます。

加害者に刑事責任を追及できるかどうか知るために、まずは弁護士に見解を聞きましょう。

刑事告訴してもらえる

犯罪が成立するときには、刑事告訴が可能です。弁護士には刑事告訴も依頼できます。

被害者自身が警察に相談しても、「証拠が足りない」「同意があったとみなされる」といった理由で、簡単には受理してもらえません。法改正から日が浅いため、旧法の解釈をもとに拒まれる事態も想定されます。

弁護士には、証拠収集から告訴状の作成、警察とのやりとりまでお任せください。法律のプロが進めると、告訴が受理されやすくなります。ご自身では大変な刑事告訴を弁護士に依頼すれば、精神的・時間的な負担を減らせる点もメリットです。

示談交渉も任せられる

刑事告訴だけでなく、加害者との示談交渉も任せられます。

不同意性交等罪では、有罪の場合には原則として実刑となり、加害者は刑務所に収監されます。性犯罪に対する世間の目は厳しくなっており、明るみになれば職場を解雇される、配偶者から離婚されるといった事態も生じるでしょう。

加害者としては、起訴を避けるために被害者との示談交渉に積極的になりやすいです。高額な示談金を用意する可能性も高まります。

もっとも、加害者には大半のケースで弁護士がついているため、被害者が自力で交渉すると言いくるめられるリスクがあります。

そこで、被害者も弁護士をつけて対等に交渉を進めるのが得策です。高額な示談金を受け取れれば弁護士費用を支払ってもプラスになりやすく、精神的なストレスを軽減できるメリットもあります。

もちろん、示談に応じるかは被害者の意向次第です。弁護士は被害者の皆様の意思を尊重しますのでご安心ください。

まとめ

ここまで、不同意性交等罪の要件について、暴行・脅迫を中心に解説してきました。

強制性交等罪においては、暴行・脅迫要件のハードルが高く、罪に問えないケースもありました。法改正により成立範囲が明確化され、加害者への責任追及がしやすくなっています。

不同意性交の被害を受けてお悩みの方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は被害者の方々からご依頼を受け、不同意性交罪含む多くの性犯罪について、刑事告訴を数多く受理させてまいりました。証拠収集、告訴状の作成、警察とのやりとり、加害者との交渉などをすべてお任せいただけます。

罪になるかどうかわからなくても構いません。被害を受けた際には、まずはお問い合わせください。

メニュー

お問い合わせ・相談

記事カテゴリー

03-6807-5708 受付時間 平日 9:00~21:00 LINE相談 相談フォーム