性犯罪にあったら

最終更新日:2024.04.23

レイプ被害に遭ったときの対処方法は「被害届を出す」だけではない

レイプ(同意のない性交)は、近年の法改正で定義が見直され、以前は犯罪とみなされなかったケースでも欧米諸国並みに厳重に処罰されるようになってきました。

もしも自身が性犯罪(レイプ)被害に遭ってしまったとき、相手に処罰を与え、心身や経済的な被害を回復させるためにはどのような手続きをすれば良いのでしょうか。

本記事では、一般的に知られている「警察に被害届を出す」方法と、それ以外にできることについても解説します。

最新の法改正により、レイプは「不同意性交罪」に

性犯罪(レイプ)は2017年までは「強姦罪」、その後法改正で「強制性交罪」(刑法177条)と罪名が変わりました。

しかし、従来の法律は被害の現状に即しておらず、実態はレイプであるのにも関わらず無罪や不起訴となるケースが近年相次いでいました。そこでより実態に合ったものとするため、2023年6月に性犯罪に関する刑法の改正案が国会で可決・成立、同年7月より施行される見込みです。

改正法では、強制・準強制性交等罪は罪名が変更され、強制性交罪は「不同意性交罪」と呼ばれるようになります。

“同意のない性的行為は犯罪”と明確にいえるようになり、犯罪の定義や要件も幅広いケースをカバーできるようになり、現在の「暴行・脅迫」だけではなく、以下の8つの行為が具体的に示されました。

1.暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
2.心身の障害を生じさせること又はそれがあること
3.アルコール若しくは薬物を摂取させること又はその状態にあること
4.睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はそれらの影響があること
5.同意しない意思を形成し,表明し又は全うするいとまがないこと
6.予想と異なる事態に直面させて恐怖させ,若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し,若しくは驚愕していること
7.虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
8.経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること

これまでの法では「被害者が反抗するのが著しく困難であること」が犯罪成立の要件とされていました。

そのため、恐怖で体が動かなかったり、仕事上の力関係や経済的な理由で性交を拒否できなかったりした場合「抵抗しなかった」と判断されてしまっていた事例も、法改正によって犯罪と認められる可能性が高まります。

強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪も同様に統合し「不同意性交等罪」に名称が変わります。

性被害(レイプ)に遭ってしまったら

自身がレイプ被害に遭ってしまった場合、最優先することはまず身の安全を確保し、必要に応じて受診や治療を行うことです。72時間以内に緊急避妊薬を服用すれば、望まない妊娠を防げます。

その後、警察に被害届を出すのが一般的な流れとなります。証拠保全のため、可能なかぎりシャワーやお風呂で体を洗う前に病院や警察に向かって下さい。

被害届を出すといっても、実際には「何をどう届け出ればいいのか分からない」「家族や知人に知られたくない」「自分が悪かったのでは…」などの心配から、すぐに行動に移せないことも少なくないでしょう。

すみやかに相談に乗ってもらえる機関として、全国のワンストップ支援センター(#8891)や警察の専用電話(#8103)があります。

被害後は混乱していて何から話せばいいかも分からないかと思います。ワンストップ支援センターでは、以下のような心配や不安に対するアドバイスや、適切な機関や専門家の紹介を受けることができます。

  • 妊娠や性感染症
  • 精神的なダメージ
  • 警察への相談
  • 法律や裁判について
  • 今後の生活について
ワンストップ支援センター 電話 #8891

性被害(レイプ)は証拠が残りにくい 

レイプ犯罪は、密室で行われることが多いという性質上、目撃情報や証拠が残らないことがよくあります。

被害を思い出すような物品は一刻も早く処分してしまいたいと思うのは無理もありませんが、被害時の衣服や下着などは捜査時の証拠となるため保管しておきましょう。

また以下のようなものは証拠となり得ますので、できる限り残しておきましょう。

  • 友人や家族へ被害を伝えるLINEやメール
  • 日記
  • 通院時のカルテ
  • ケガをした場合の写真やカルテ

通院した場合、診断書は必須ではありませんが、あればより強い証拠となります。

さらに被害者本人の供述調書があると立件の可能性が高まります。

レイプ事件の時効はいつ?

改正前の法律では、強制性交罪は最長で15年以上の懲役・禁錮にあたる罪に該当し、公訴時効は10年でした(刑事訴訟法第250条2項)。

犯罪のあった日から10年が経過すれば加害者に刑罰は科せられない規定でしたが、法改正により、不同意性交罪は10年から15年、不同意わいせつ罪は7年から12年に公訴時効が延長されました。

警察が対応してくれない場合に取れる方法

性犯罪(レイプ)に遭ってしまい警察に被害届を出そうとしたが、受け取ってもらえなかった……という話を耳にすることがあります。

この時の理由としては「個人間のできごとであり犯罪とはいえない」「証拠がない(足りない)ので事件として扱えない」などと言われることが多いようです。

法改正により以前より犯罪として成立する要件の幅が広がったため、被害届が受理される確率も高くなることが期待されますが、それでも受け付けてもらえない場合には「刑事告訴」という方法もあります。

参考記事:【被害者向け】刑事告訴について分かりやすく解説

刑事告訴は捜査機関(おもに警察)へ告訴状を提出することで成立します。

被害届は提出しても必ず捜査が行われるわけではなく、警察の判断でそのまま放置されることもあり得ますが、告訴状はひとたび受理されれば必ず警察には捜査の義務が生じます

参考記事:【被害者弁護】不同意性交被害に遭った際に弁護士に相談する意味・メリットとは

レイプで刑事告訴できるケースとできないケース

レイプ事件で被害届が受理されない場合の手段である「刑事告訴」ですが、なかには刑事告訴が難しいものもあります。

例えば、該当の事件が数年前など相当の時間が経過していて、物的証拠もまったく残っておらず、完全に被害者の記憶だけである場合、やはり刑事告訴は難しくなってしまいます。

しかし、それ以外であれば刑事告訴が可能です。たとえば、なかなか気持ちの整理がつかず事件から数ヶ月経ってしまったような場合でも、前述したようなある程度の証拠が残っていれば刑事告訴を検討する価値はあります。

参考記事:不同意性交等罪の問題点は?対処法を被害者向けに解説

レイプ被害の損害賠償(お金)は受け取れる?

レイプ被害に遭い心身に大きなダメージを受けた場合、その損害に対し賠償金を請求したいというのは正当な考えです。

ただ、そのために民事訴訟を起こすのと刑事告訴をするのでは若干結果が異なります

民事訴訟では個人間の紛争とそれにまつわる金銭的な問題を解決することが目的のため、被害の度合いにより金額は変わりますが、判決の結果、慰謝料として200~600万円程度の金額を受け取れる可能性があります。

一方、刑事告訴の目的は犯人(加害者)の処罰であるため、有罪判決が下っても必ず被害者が金銭を受け取れるとは限りません。ただし、示談金を受け取る場合には民事の慰謝料より高額な示談金を受け取れる可能性があります。

それでも刑事告訴を選ぶメリットとしては次の2点が挙げられます。

  1. 加害者の刑事責任を追求できる(処罰を与えられる)
  2. 民事の相場を上回る示談金の受け取りが期待できる

2.について、加害者の立場で考えてみると、もし前科が残ってしまった場合、勤め先の解雇やその後の再就職が難しくなるといった社会的な制裁が待っています。それを恐れて示談金を払う加害者もいるため、民事訴訟の判決で受け取れる相場額を上回る場合が多いのです。

とはいえ、示談金をつり上げることだけが目的だと警察が判断してしまうと、刑事告訴が受理される可能性は極めて低くなります。

あくまでも、被害届が受理されなくて困っている、加害者に誠意が見られない、被害者の受けた傷を軽く見ている…といった場合の手段として刑事告訴は有効です。

レイプ被害は弁護士に相談を

性犯罪(レイプ)は重大かつ卑劣な犯罪であり加害者はしかるべき罰を受けるのが当然です。

しかし、レイプ事件の被害者は一般の事件以上に心身に大きなダメージを受けていることが多く、事件のことを思い出すと体調に異変をきたしたり、被害届や告訴状を警察に出すことだけでも困難が伴ったりすることも少なくありません。また勇気を振り絞って被害届や告訴状を出したのにも関わらず受け付けてもらえなければ、その心労はさらに大きなものとなるでしょう。

そのような場合も、泣き寝入りせず、弁護士のサポートを受けてみてはいかがでしょうか。

受理されやすい被害届や告訴状の作成、代理提出や警察署への提出時同行、窓口での受理の交渉など、弁護士にできることは非常に数多くあります。

また加害者と接触したくない被害者に代わって連絡を取ったり、裁判時の付き添いや、示談になった場合の交渉まで被害者を幅広く支援します。

弁護士や法律事務所にはそれぞれ特に詳しいジャンルや分野があるので、刑事告訴や被害者の支援に力を入れていて実績のある弁護士に相談するのが成功のコツです。

▼当事務所でのレイプ事件の支援事例はこちら

レイプ被害について、強制性交致傷罪で刑事告訴が受理された案件

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