性犯罪にあったら

最終更新日:2025.05.26

不同意性交罪、証拠がなくても大丈夫?被害にあったらどうすればいいか弁護士が解説

「不同意性交罪では何が証拠になるの?」「証拠がなくても大丈夫?」とお悩みでしょうか。

意思に反して性行為を強要された際には、不同意性交等罪が成立します。加害者の責任を追及するために必要なのが証拠です。証拠になるものとしては、防犯カメラ映像、被害時に着ていた服や持ち物、ケガをしたことを示すカルテや写真、相手とのLINEのやりとりなどが挙げられます。

「証拠がない」という方も、すぐに諦める必要はありません。弁護士に相談した結果、証拠に気がつける場合もあります。もちろん、被害者の証言も重要な証拠です。

この記事では、不同意性交等罪が成立する条件を簡単に説明したうえで、証拠になるものを解説しています。被害に遭われた方やそのご家族に知っていただきたい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

そもそも不同意性交等罪はどんなときに成立する?

性行為の強要は、従来「強制性交等罪(かつての強姦罪)」や「準強制性交等罪(かつての準強姦罪)」で処罰されてきました。法改正により両罪はまとめられ、2023年(令和5年)7月13日以降の犯行には「不同意性交等罪」が適用されます。

不同意性交等罪では、同意のない性行為について、犯罪になると認められやすくなっています。まずは、不同意性交等罪が成立する条件を見ていきましょう。

参考記事:不同意性交等罪とは?刑事告訴の流れを弁護士が解説

なお、2023年7月12日以前の犯行については、改正前の強制性交等罪などが適用されます。

参考記事:【被害者向けに解説】強制性交等罪とは?構成要件や法定刑、被害後にできること

判断できない・拒否の意思を示せない・強引に進められた

まずは、被害者が性行為について「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」であることが必要になります(刑法177条1項)。

同意しない意思を「形成」「表明」「全う」できないとは、簡単にいえばそれぞれ以下の意味です。

  • 形成できない:性行為をするかどうかを判断できない
  • 表明できない:性行為をしたくないと判断できても意思を示せない
  • 全うできない:性行為をしたくないと意思表示しても強引に進められた

法律では、同意しない意思を「形成」「表明」「全う」できない状態に陥る原因として、以下の8つが挙げられています。

1号暴行・脅迫暴力や脅しにより性交等を強要する
2号心身の障害障害ある状態にさせて、または元から障害のある人に性交等をする
3号アルコール・薬物酒や薬物を摂取させて、または酩酊状態にあることを利用する
4号睡眠その他意識不明瞭睡眠など意識が不明瞭な状態にさせて、またはその状態を利用する
5号同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない不意打ちで性交等に及び、拒否する時間を与えない
6号予想と異なる事態に直面し恐怖・驚愕予想外の事態に直面して意思表示ができない(フリーズ)状態を利用する
7号虐待に起因する心理的反応虐待により生じる恐怖心、抵抗を無駄と考える状態などを利用する
8号経済的・社会的関係の利用上司と部下、教師と生徒などの関係を利用する

参考:性犯罪関係の法改正等Q&A|法務省

他に、行為がわいせつなものでないと勘違いさせたり、人違いをさせたりして性行為に及ぶケースも処罰対象です(刑法177条2項)。

不同意性交等罪における同意について詳しくは、以下の記事をお読みください。

参考記事:不同意性交等罪の「同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない」を弁護士が解説

「性交等」をした

「判断できない」「拒否の意思を示せない」「強引に進められた」のうちいずれかの状態であるときに、実際に「性交等」がなされると不同意性交等罪が成立します。

性交等」とは以下のいずれかの行為です。

  • 性交(セックス)
  • 肛門性交(アナルセックス)
  • 口腔性交(オーラルセックス)
  • 膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為(例:膣内に指を入れる)

上の3つは以前より含まれていましたが、法改正により1番下の行為も不同意性交等罪の処罰対象となりました。

被害者が16歳未満だと同意があっても犯罪になる

被害者が16歳未満のときは、同意があっても不同意性交等罪が成立します(刑法177条3項)。以前は13歳未満とされていましたが、法改正により性行為に同意できる年齢が引き上げられました。

なお、同世代の性行為を一律に規制するのは望ましくないため、被害者が13歳以上16歳未満で同意があった場合には、加害者と5歳差以上の場合に限り不同意性交等罪が成立します。たとえば、17歳と13歳のカップルについては、本心からの同意があれば罪にはなりません。19歳と13歳の場合には、同意があっても犯罪です。

性別は問わない・夫婦間でも適用される

被害者の性別は問いません。男性であっても被害者になります。また、同性間での同意のない性行為も処罰対象です。

また、夫婦間でも不同意性交等罪は成立し得ます。夫婦の間であっても、関係が壊れているケースなどで同意なく性行為がなされる可能性はあり、処罰の対象です。以前から夫婦間でも成立するとされてきましたが、2023年の法改正によりこの点が明確になっています。

不同意性交罪の証拠になるもの

不同意性交等罪の被害を受けた際には、加害者の処罰を求めることができます。ただし、裁判で有罪にするためには証拠が不可欠です。

証拠はおおまかに物的証拠と証言に分けられます。

参考記事:刑事事件の証拠になるものとは?証拠の種類や証拠調べ手続きについて解説

物的な証拠

物的な証拠があれば、客観的に被害を証明できます。証拠になり得るのは、たとえば以下の物です。

  • 防犯カメラ映像
  • 被害時の着衣や持ち物
  • 行為時に負ったケガを証明するもの
  • 加害者とやりとりしたメッセージの内容

順に詳しく解説します。

防犯カメラ映像

防犯カメラ映像は非常に有力な証拠です。行為をしている場面が映っていれば直接の証拠になります。

実際には、不同意性交等罪は密室で行われる場合が多く、行為中の映像が残っているケースは少ないでしょう。しかし、以下のように前後の状況が映っていれば、犯行があったと推測させる証拠になります

  • 加害者と被害者がホテルに一緒に入った
  • 被害者の自宅を加害者が訪れている
  • 泥酔している被害者を加害者が抱えていた

映像から顔や行動がはっきりとわかれば、映っている事実そのものを否定するのは困難です。犯人の責任を追及する際には大変効果的といえます。もっとも、映像の保存期間は短い場合が多いため、早めに確認する必要があります。

被害時の着衣や持ち物

被害を受けた際に着ていた服や持っていた物に加害者の体液・指紋などが付着していた際にも、有力な証拠になります。

たとえば、着衣に付いていた精液をDNA鑑定して加害者のものとわかれば、2人が性行為をしたと推測できます。また、持ち物に指紋がついていれば、犯人の特定が可能です。

着衣や持ち物だけでなく、膣など被害者の身体に残っていた体液から犯行を証明できる場合があります。痕跡が消えないうちに調べてもらうようにしましょう。

行為時に負ったケガを証明するもの

行為時に負ったケガを証明するものは、暴行があった事実の証拠や、不同意性交等致傷罪が成立することの証拠になります。

具体的には、事故後に行った病院のカルテ、ケガした部位の写真などが利用できます。犯行との因果関係を示すために、事故直後の記録が望ましいです。記録さえ残っていれば、時間が経ってから被害を訴えることも可能です。

加害者とやりとりしたメッセージの内容

メール・LINE・SNSなどで加害者とやりとりした際のメッセージの内容も有力な証拠です。

たとえば、加害者がLINEでホテルに行くことを指示していたり、事後的に「気持ちよかった」など性行為をしたことを示唆するメッセージを送ったりしていれば犯行の証拠になります。もっとも、被害者が加害者に「大好き」「またしたいね」などと好意的なメッセージを送っていると、同意があったと受け取られ、マイナスに働くおそれがあります。

いずれにしても、やりとりしたメッセージの内容は重要な証拠です。残しておくようにしましょう。

目撃者・被害を相談された人の証言

物理的に残っている証拠だけでなく、目撃者や被害者から相談を受けた人の証言も証拠のひとつです。

目撃者の場合、行為の現場を直接見ているケースは稀ですが、家に入った・泥酔していたなど、前後の状況を見ただけでも有力な証拠になり得ます。目撃者が当事者と利害関係がない第三者であれば、信ぴょう性も高いです。

目撃者だけでなく、被害後に相談を受けた家族や友人の証言も、被害状況や同意の有無に関する証拠になります。口頭だけでなく、メールやLINEで相談していた記録がないかも確認しましょう。

被害者の証言

被害者の証言も重要な証拠です。被害を経験しているのは被害者自身に他ならず、不同意性交等罪においても被害者の証言は重視されます。

ただし、信用できないと判断されてしまうケースもあります。他の客観的な証拠と矛盾していないか、被害者がウソをつく理由があるかといった点がポイントです。

証言の他に、被害者が書いていた日記なども証拠になります。

不同意性交罪の証拠がなくても弁護士にご相談ください

ここまでお読みになって「自分には証拠がない」と感じた方もいらっしゃるでしょう。すぐに諦める必要はありません。証拠が手元にないときは、お早めに弁護士にご相談ください

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリットとしては以下の点が挙げられます。

  • 証拠に気がつける
  • 刑事告訴がしやすくなる
  • 加害者との交渉も任せられる

順に詳しく解説します。

参考記事:【被害者弁護】不同意性交被害に遭った際に弁護士に相談する意味・メリットとは

証拠に気がつける

被害者の方が「証拠はない」と思っていても、専門家から見れば存在している場合もあります。弁護士に相談すれば、何が証拠になるか、どのように収集・保存すればいいかがわかります。

弁護士のサポートにより思いもよらぬ証拠に気がつければ、加害者に罪を問う道が開けるのです。

刑事告訴しやすくなる

ある程度の証拠があれば、刑事告訴ができます。刑事告訴とは、犯罪被害を受けた事実を捜査機関に伝え、犯人の処罰を求める意思を示す行為です。一般的には、警察に告訴状を提出して行います。

刑事告訴を受けた警察は、法律上捜査を進めなければなりません。被害届を提出しても放置される場合がありますが、告訴状を出せば確実に捜査をしてもらえます

告訴をきっかけに捜査がなされた後は、検察官が起訴すると判断すれば刑事裁判になり、最終的には裁判官により判決が下されます。不同意性交等罪で法律上科せる刑罰は「5年以上の懲役」(最高20年)です。被害者がケガをして不同意性交等致傷罪が成立すれば「無期または6年以上の懲役」に処されます。基本的には執行猶予がつかず、加害者は初犯でも刑務所行きとなる可能性が高いです。

不同意性交等罪は、通常は被害者が警察に伝えないと発覚しません。刑事告訴をきっかけに捜査が進めば加害者に重い刑罰を科せる可能性があるため、告訴は有効な手段です。

もっとも、警察はなかなか告訴を受理してくれません。「証拠が足りない」「同意していたのではないか」といった理由で告訴を断られ、途方に暮れる被害者が多いのが実情です。

弁護士には刑事告訴も依頼できます。弁護士に告訴状の作成や警察の説得を任せることで告訴が受理されやすくなり、結果的に加害者の刑事責任を追及できるのです。

参考記事:不同意性交等罪とは?刑事告訴の流れを弁護士が解説

加害者との交渉も任せられる

加害者からすると、告訴により刑罰が現実味を帯びると、何としてでも避けたくなります。刑務所行きを避ける近道は、被害者と示談して許しを得ることです。そのため、刑事告訴をした後に、加害者側が示談を持ち掛けてくる場合があります。

被害者自身が交渉に対応すると、脅されて無理やり示談を強いられる、言いくるめられて不利な条件で応じてしまうといったリスクが存在します。交渉の場に出ること自体がストレスにもなるでしょう。

弁護士には加害者との交渉も依頼できます。弁護士に任せれば、法的に不利な条件で示談に応じる事態を避けられます。交渉に伴う精神的なストレスも軽減されるはずです。

参考記事:【被害者向け】刑事事件の示談金の相場と被害者が示談に応じるメリット・デメリット

時効に注意

被害を申告する際に注意が必要なのが時効期間です。法律で定められた公訴時効期間を経過すると、加害者に刑事責任を問えません

不同意性交等罪の時効期間は15年、不同意性交等致傷罪では20年です。2023年の法改正により、それぞれ5年延長されました。「被害時に18歳未満の場合には、18歳になったときからカウントがスタートする」とのルールも追加されています。

被害から時間が経っていても、時効期間を経過していない限り、加害者への責任追及は可能です。もっとも、時間が経つと証拠がなくなっていくため、できるだけ早めに弁護士にご相談ください

不同意性交被害に遭ったらリード法律事務所にご相談ください

ここまで、不同意性交等罪の証拠を中心に解説してきました。

証拠になるものはケースバイケースです。たとえば、防犯カメラ映像、被害時の着衣や持ち物、相手とのLINEのやりとりなどが挙げられます。証拠が消えないよう、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。

不同意性交の被害を受けた方は、リード法律事務所までご相談ください

当事務所は被害者の方々からご依頼を受け、不同意性交等罪を含む性犯罪について、刑事告訴を数多く受理させてまいりました。証拠収集だけでなく、告訴状の作成、警察とのやりとり、加害者との交渉などをすべてお任せいただけます。

「証拠がない」「どう加害者の責任を追及すればいいかわからない」などとお悩みの方は、まずはお問い合わせください。

メニュー

お問い合わせ・相談

記事カテゴリー

03-6807-5708 受付時間 平日 9:00~21:00 LINE相談 相談フォーム