刑事告訴の基礎知識

最終更新日:2023.05.31

刑事告訴・告発は誰ができるのか弁護士が解説

刑事告訴や告発をしようと検討する際、刑事告訴や告発は誰ができるのかは、重要な問題です。

万が一、刑事告訴や告発ができない人が、刑事告訴や告発を行っても、要件を満たさないものとして受理してもらえませんし、たとえ受理されても無効なものとなってしまいます。

せっかく告訴状や告発状を作成しても、受理してもらえないなら、準備した苦労が水の泡になってしまいます。

そのため、事前に自分が法律上、刑事告訴や告発ができる人なのかをきちんと確認しておく必要があります。この記事では、刑事告訴や告発は、誰ができるのかを解説します。

この記事を読めば、自分が刑事告訴や告発できる人なのかが判断でき、有効な刑事告訴や告発をすることができるようになります。

告訴は誰ができるのか

刑事告訴とは、犯罪の被害者やその他一定の者(告訴権者)が、検察官や警察官といった捜査機関に対して、犯罪が起こったことを申告して、犯人の処罰を求めることです。

つまり、刑事告訴は誰でもできるわけではないということです。

刑事告訴ができる人は、法律上、一定の告訴権者に限られています。では、その告訴権者とは、一体誰のことを指すのかを解説していきます。

誰でも告訴できるわけではない

前述のとおり、刑事告訴は、誰でもできるわけではありません。

刑事告訴ができるのは、犯罪の被害者その他告訴の権利のある者として刑事訴訟法に定められた範囲の人(告訴権者)に限られています。

告訴権者以外の人が行った刑事告訴は無効なものとなってしまうので、注意が必要です。

ただし、後述のとおり、告発は誰でも行うことができますので、告訴権者以外の人が誤って告訴をした場合には、告発として扱える可能性もあります。

被害者が生存している場合 (刑訴法230条、231条1項)

被害者本人

被害者が生存している場合には「犯罪より被害を被った者」、つまり被害者本人は、当然、告訴することができます。被害者とは、犯罪による直接的な被害者のことを指します。

たとえば、暴行を受けた本人や名誉毀損を受けた本人は、直接的な被害を被っているので、直接的な被害者といえます。

間接的な被害者にすぎない人は、告訴をすることはできません。

たとえば、妻の名誉が毀損された夫などは、間接的な被害を被ったにすぎないので、告訴権者にはなりませんので注意しましょう。

また、犯罪によっては、被害者が複数いる場合もあります。たとえば、共有物に関する犯罪であれば、共有者は全員被害者となります。

また、窃盗罪の場合は、窃盗された財物の所有者だけでなく、占有者も被害者となります。

このように、被害者が複数いる場合には、それぞれの被害者が告訴権者となります。

被害者であれば、告訴権者は個人に限られず、会社などの法人や団体も告訴できます。法人や団体が告訴する場合には、法人や団体の代表者が、法人や団体を代表して告訴をします。

被害者の法定代理人

被害者のほかに、被害者の法定代理人も、告訴することができます。

具体的には、被害者が未成年なら、親権者または未成年後見人が告訴でき、被害者が成年被後見人なら、成年後見人が告訴できます。

法定代理人の地位を有するかどうかは、被害時を基準とするのではなく、告訴時を基準として判断します。ここで言う親権者とは、たとえば継母など、事実上の親権者ではなく、法律上の親権者でなければいけません。

また、親権者が父母の2人いるときは、父と母がそれぞれ告訴することができます。

法定代理人の告訴権は、被害者本人とは関係なく、法定代理人が独自に告訴できることになっています。

そのため、被害者本人について、告訴期間の経過などにより告訴権がなくなってしまった後でも、法定代理人について告訴期間が経過していなければ、法定代理人は告訴することができます。

また、法定代理人がした告訴を被害者本人が取り消すことはできません。

さらに、法定代理人が告訴した後に、別途、被害者本人が告訴することもできます。

つまり、たとえ被害者本人が告訴しない意思を明らかにしていても、法定代理人はこの意思に反して、被害者本人から独立して告訴できるということです。

この点は、後述する被害者が死亡している場合における、配偶者、直系親族、兄弟姉妹が告訴できる場合とは異なっています。

被害者が死亡している場合

被害者が告訴をする前に死亡している場合には、配偶者、直系親族、兄弟姉妹が告訴することができます(刑訴法231条2項)。

ただし、被害者が告訴をしない意思を明らかにしていた場合は、告訴できません。この点は、被害者が生存している場合に、法定代理人が、被害者から独立して告訴することができることと異なっています。

配偶者、直系親族、兄弟姉妹というのは、民法の規定によることになります。つまり、配偶者とは婚姻関係にある人、直系親族とは6親等以内の血族及び3親等以内の姻族ということになります。

なお、被害者が自ら告訴をした後に死亡してしまった場合にも、告訴の効力は失われないので、親告罪であっても起訴することができます。

被害者の法定代理人が被疑者等である場合

次の場合には、被害者の親族が告訴できます(刑訴法232条)。

被害者の法定代理人が、

  • 被疑者(犯人として捜査の対象となっている人)であるとき
  • 被疑者の配偶者であるとき
  • 被疑者の4親等内の血族もしくは3親等内の姻族であるとき

このように被害者の法定代理人が被疑者と特殊な関係にある場合には、被害者の法定代理人が、被疑者の利益を図ろうとして、適正に告訴権を行使するとは一般的に期待できません。

そのため、被害者の法定代理人が被疑者と特殊な関係にある場合には、被害者の親族は、被害者の法定代理人から独立して告訴できるようになっているのです。

名誉棄損罪の場合

死者の名誉を毀損する罪(刑法230条2項)の場合、被害者の親族又は子孫が告訴をすることができます(刑訴法233条1項)。

死亡してしまった本人は、もう自分で告訴することはできません。

そのため、親族や子孫が、死亡した本人の代わりに告訴できるようになっているのです。

また、被害者が告訴前に死亡した場合も、被害者の親族又は子孫が告訴をすることができます(刑訴法233条2項)。

ただし、被害者が生前に告訴しない意思を明らかにしていた場合は、親族や子孫がそれに反して告訴をすることはできません。

親告罪で告訴できる人がいない場合

親告罪で告訴できる人がいない場合は、検察官が、利害関係人の申立てによって、告訴できる人を指定できます(刑訴法234条)。

告訴できる人がいない場合とは、告訴権者がいない場合や、告訴権者がいても告訴能力(告訴の意味や効果を理解できる知的能力)がない場合をいいます。

ただし、告訴権者がいるのに告訴期間を経過してしまって告訴できない場合や、被害者の生前の意思に反して告訴をすることができない場合というのは、利害関係人の申立てはできません。

ここで言う利害関係人とは、事実上の利害関係がある人とされています。

そのため、友人や告訴権のない親族、雇用主、債権者、破産管財人なども、利害関係を証明することができれば、申立てができます。

告発は誰ができるのか

刑事告訴とよく似ているものとして、告発があります。

告発も、検察官や警察官などに対して、犯罪があったことを申告して、犯人の処罰を求める点では、刑事告訴と同じです。

しかし、刑事告訴と告訴は、できる人が異なっているので注意が必要です。

告発は誰ができるのかについて詳しく解説します。

誰でも告発できる

告訴が被害者や限定された告訴権者のみができるのに対して、告発は、法律上「何人でも」することができると規定されています(刑訴法239条1項)。

つまり、告発は誰でもすることができるということです。

ただし、親告罪における告訴と同様に、特定の官公庁や公的機関のする告発なしでは起訴が許されないという犯罪があります。

たとえば、公職選挙法253条1項の罪(選挙人等の偽証罪)や、関税法の犯則事件(関税法148条1項)、労働関係調整法39条の罪などです。

このような犯罪の場合には、告発ができるのは、その法律で規定された特定の官公庁や公的機関だけで、一般国民は告発できません。

告発は、個人だけではなく、法人や、権利能力なき社団や財団、その法人又は団体の代表者でもできます。

親告罪の場合

親告罪の場合には、告訴がなければ、検察官は起訴することができません。

したがって、親告罪について第三者から告発をしても、意味がないということになります。

親告罪について、犯人に処罰を求める意思があるのであれば、告発ではなく、告訴権者から告訴をしなければいけません。

その際、親告罪の告訴期間は、原則として犯人を知ってから6か月以内と制限されていることに注意しましょう(刑訴法235条1項)。

他方で、親告罪ではない犯罪についての告発には、親告罪の告訴のような期間制限はありません。

公務員の場合

公務員には、その職務内容に関連して発見した犯罪があるときは、これを告発する一般的義務があるとされています(刑訴法239条2項)。

もっとも、実際に公務員が告発するかどうかは、その公務員に裁量があると解釈されています。

公務員が告発を行うべきか否かは、犯罪の重大性、犯罪があると思料することの相当性、今後の行政運営に与える影響等の諸点を総合的かつ慎重に検討して判断することとされています。

刑事告訴は弁護士に相談しましょう

刑事告訴を検討しているとき、自分が告訴権者であるかどうか、事前にきちんと確認することが必要です。

自分が告訴権者かどうかわからないときは、弁護士に相談して、確認してもらうことがおすすめです。

また、たとえ自分が告訴権者であっても、告訴状を作成したり、捜査機関とやりとりをしたりするのは、法律の専門的な知識が必要になります。

刑事告訴をするのであれば、法律の専門家である弁護士に依頼すると、スムーズに刑事告訴を受理してもらえます。

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