最終更新日:2023.05.31
告訴・告発は代理人に委任できる?委任の流れについて解説【委任状作成例付き】
目次
告訴・告発できる人とは?
初めに、告訴と告発できる人について、確認しておきましょう。告訴は、刑事訴訟法(刑訴法)により規定された告訴権を有する人(告訴権者)が行うことができます。
まず、犯罪被害に遭った被害者本人は告訴することができます。被害者が未成年の場合は、親権者または未成年後見人が、被害者が成年被後見人なら、成年後見人が告訴権を独立して有します。つまり、被害者本人に告訴の意思がなくても、親権者や後見人などの法定代理人は独自で告訴することが可能です。
被害者の法定代理人が被疑者あるいは被疑者の配偶者、被疑者の血族もしくは姻族であるときなど、被害者の法定代理人と被疑者の間に関係がある場合は、被害者の親族が被害者の法定代理人とは独立して告訴権を有します。
被害者が死亡している場合には、被害者の配偶者や直系の親族、兄弟姉妹が告訴権者になります。しかし、法定代理人のように独立して告訴権を有するわけではないので、生前の被害者が明示した意思に反して告訴することはできません。すでに亡くなった人に対する名誉毀損で告訴する場合は、死者の親族や子孫が独立して告訴権を有します。
まとめると以下のようになります。
告訴をする権利がある人(告訴権者)
- 被害者(刑事訴訟法230条)
- 親権者や後見人など、被害者の法定代理人(刑事訴訟法231条)
- 条件により…被害者の親族(刑事訴訟法232条)
- 被害者が死亡した場合…被害者の配偶者や直系の親族、兄弟姉妹(刑事訴訟法231条2項)
- 死者に対する名誉毀損で告訴する場合…死者の親族、子孫(刑事訴訟法233条)
告訴する権利がない場合は、告訴ではなく告発することで処罰を求めることができます。
- 告発をする権利がある人…告訴権者以外の第三者(刑事訴訟法239条)
告訴は代理人に委任できる
告訴権者は刑訴法第240条により、告訴を代理人(任意代理人)に委任することが可能と定められています。代理人に関する規定はありませんが、報酬を払って委任する場合は、行政書士・司法書士・弁護士、いずれかの資格を有する人にしか委任できません。
それぞれ依頼できる範囲が異なりますので、下記で詳しく解説いたします。
弁護士に委任する
弁護士は弁護士法3条により、告訴に関する一切の法的事務を代理することが可能です。具体的には、捜査機関(警察・検察等)に提出する告訴状の作成・捜査官との告訴相談へ代理人として同席すること・告訴を受理させるための働きかけや交渉などができます。
弁護士に告訴の代理を委任する場合は、委任状を作成します。委任状の作成方法は、のちほど作成例と共に詳しく解説いたします。
行政書士・司法書士に委任する
行政書士・司法書士も、業務として告訴状の作成が可能ですが、それぞれ提出先が限られています。
行政書士は行政書士法1条の2により「官公署に提出する書類等の作成をすること」が業務に含まれています。ですので、行政書士は告訴権者の代理人として警察署や労働基準監督署などに提出する告訴状の作成が可能です。
司法書士は、司法書士法第3条4項4号により「裁判所・検察庁に提出する書類を作成すること」が業務に含まれています。そのため、司法書士は告訴権者の代理人として検察庁に提出する告訴状の作成が可能です。
行政書士が作成した告訴状を検察庁に提出したり、司法書士が作成した告訴状を警察署に提出することはできません。また、基本的に行政書士・司法書士は各種書類作成が業務になりますので、弁護士に委任するよりも、対応範囲が狭まるというデメリットがあります。
司法書士・行政書士に委任する際のデメリット
司法書士・行政書士は、法律事務の一部を行うことが認められていますが、あくまでも一部ですので、弁護士のように「法律事務全般」を行うことはできません。業務の範囲外の法律事務を行うのは非弁活動にあたり、弁護士法72条に違反してしまいます。
そのため、司法書士や行政書士に告訴状作成を委任した場合は、「告訴状の作成のみ」対応してもらうことができると考えておくと良いでしょう。司法書士や行政書士は事件解決に向け交渉を行なったり、今後の流れや・方針等のアドバイスを行うことはできません。
提出同行を行なっている事務所もありますが、告訴状が受理されるために警察や検察に事前相談を行うことはできないため、受理してもらえない可能性もあります。
刑事告訴の難しさは、刑事告訴受理を拒む警察官や検察官を、法的知識をもっていかに説得・交渉するかという点にあります。
しかし、司法書士・行政書士に依頼した場合、肝心の警察官や検察官に対する説得・交渉は自分で行わなければならない為、その点十分に注意する必要があります。また、作成した告訴状が受理されなかったとしても、「告訴状作成料金」は発生する可能性が高いでしょう。
代理人(弁護士)に委任するメリット
弁護士は法律事務全般を行うことが可能ですので、告訴権者に代わって警察や検察に相談したり、告訴権者にとって最適と思われる解決方法を提示することが可能です。
下記で弁護士に代理人を委任するメリットについて詳しく解説いたします。
法的根拠に基づき、受理される告訴状・告発状を作成できる
警察は告訴を受理する義務があります。しかし、個人で告訴状を作成しても、なにかしらの理由をつけて、受理を拒まれることが多いのが現状です。
【関連記事】警察が告訴を断る理由と告訴を受理してもらうための5つのポイントを弁護士が解説
弁護士に告訴の代理を委任すれば、可能な限り証拠を集め選定し、捜査機関が捜査しやすい法的書面を作成することで受理されやすい告訴状を作成することが可能です。
警察・検察への事前相談から紛争解決までを依頼できる
弁護士は司法書士・行政書士と異なり、書類作成以上の法的事務を行うことができます。ですので、告訴状提出前に警察や検察に事前相談をしたり、紛争解決に向けあらゆる法的手段での解決方法を提示したり、また示談交渉や刑事事件での弁護を行うことも可能です。
告訴は犯人に対し、刑事処罰を負わせたいという意思表示でしかありません。刑事処罰を与えたい場合は、告訴状が受理され起訴されなければ意味がありませんし、示談で解決させたい場合でも告訴状が受理されなければ、加害者側が動かないということもあるでしょう。
弁護士に委任することで、「告訴した事件そのものの解決を目指すことができる」ということです。
告発の代理について
先述した通り、告訴の代理は刑訴法240条により認められていますが、告発の代理については明記がありません。よって、告発の代理ができるのか、という点について議論があり、一般的には告発は代理が認められないと考えられています。
しかし、リード法律事務所ではこれまで多くの告発事件を弁護士として代理して行ってきました。告発の代理については学説上は否定されていますが、実務上は可能なのです。
告発状の作成や提出を依頼することは可能
しかし、受理される告発状を作成するには、法的知識が必要です。そこで、告発状の作成に関しては、告訴状同様、専門職に依頼することが可能と考えられています。
告発状も司法書士・行政書士・弁護士に作成を依頼することができ、依頼できる業務範囲の違いも告訴状作成時と同じです。司法書士は検察に提出する告発状の作成のみ、行政書士は警察に提出する告発状の作成のみ、弁護士はヒアリングによる法律相談から告発状の作成、告発が受理されるよう働きかけることなど法律事務全般が可能です。
委任状の書き方
警察官の捜査活動の手順を定めた規則、犯罪捜査規範66条によれば、告訴権者が委任した弁護士などの代理人から告訴を受ける場合、委任状を差し出させなければいけないと明記されているため、告訴を弁護士などの代理人に委任する場合、代理権を授与する委任状を作成する必要があります。
代理権を授与する際の委任状の書き方例と書き方のポイントを解説いたします。
告訴代理権授与の委任状例
告発を委任する場合の委任状例
①委任状の作成年月日
委任状の作成年月日は、代理権授与があった日とするのが好ましいでしょう。そうすると、理論上、委任状の作成年月日は、告訴状・告発状の作成日よりも前、もしくは同日になるはずです。
上記を踏まえて、委任状と告訴状または告発状の作成日は、捜査機関に提出する日と一致するよう記載するのが一般的です。
②告訴人・告発人の欄
告訴人・告発人が法人の場合、住所欄に本店所在地を、告訴人の欄には法人名と代表者名を記します。(例:株式会社◯◯ 代表者代表取締役〇〇 〇〇)
告訴人・告発人が法人格のない団体の場合は、住所欄に事務所所在地を、告訴人の欄には代表者名を記します。
③委任する代理人
代理権を授与する相手についての情報を記します。住所や氏名、弁護士・司法書士等の肩書を記載しましょう。
④犯人について
犯人についての情報が特定できている場合は、犯人の住所と氏名を記載します。(例:△県△市△町0丁目居住の△△ △△を傷害罪で告訴する件及び告訴の取消しの件)
⑤代理権の授与
「告訴する件」や「告訴する一切の件」、または「告訴する権限」などと記載しても問題ありません。しかし、この場合は告訴の取消しについての代理権は授与したことになりません。告訴を取り消す際には、別途委任状の作成が必要となります。
【関連記事】告訴・告発の取消し方法について詳しく解説(書式・文例付き)
告訴の代理権と告訴取消しの代理権を同時に授与するなら、「告訴する件及び告訴の取消しの件」と記載すると良いでしょう。
⑥印紙税の課税
委任状は非課税文書のため、収入印紙の貼り付けは不要です。
告訴・告発に関するお悩みは、リード法律事務所へご相談ください
告訴・告発の代理を委任する方法について解説いたしました。
リード法律事務所では、刑事告訴についての手段や方法を熟知しており、刑事告訴手続きに精通している弁護士が受理される告訴状・告発状を作成し、受理された後も紛争解決に向け、さまざまな選択肢を提案しながら告訴・告発をサポートいたします。
告訴・告発に関するお悩みは、お気軽に当事務所にご相談ください。