最終更新日:2023.05.31
自分で刑事告訴をする方法と受理されるためのポイント
刑事事件において、証拠が足りない、犯罪にあたらない、民事事件で解決できるという理由から、捜査機関が刑事告訴を受理しないことがあります。本記事では、自分で刑事告訴をする際の準備や告訴状の記載方法、受理されやすくなるポイントなどについて解説していきます。
目次
刑事告訴をするための事前準備
告訴を自分でしようとしても、捜査期間は何かしらの理由をつけて受理しないことがあります。そのため、告訴を自分でするには、捜査機関に受理してもらえるよう、事前準備を念入りにしておく必要があります。
告訴するために事前にやっておくべき準備について解説します。
告訴の要件を満たす
一般的に、告訴は、告訴の要件を満たした告訴状を作成して、その添付書類を用意しなければいけません。
告訴状や添付書類を用意しているうちに、足りていない事項や添付書類に気付くことがありますので、告訴状を作成しながら足りないものを補充していきましょう。
まず、告訴状に、犯罪の日時、場所、被害の態様、犯人の特徴などの具体的な犯罪の内容をできるだけ正確に記載します。次に、犯罪が起きた背景や関係者の人間関係などをできる限り調査して、捜査機関に対して適切な情報を提供できるように準備しておきます。
さらに、親告罪の場合は、犯人を知った日から6か月が告訴期間となるので、告訴期間内であるかも念のために確認しておきましょう。被害者以外の人が告訴をするのであれば、告訴権があるかを証明するための戸籍謄本などが必要です。
捜査を進めやすくするために、犯罪があったことや犯人について、有力な証拠があれば、その写しも添付しておきましょう。
証拠収集する
告訴するためには、客観的な証拠を確保するため、できる限り早く証拠を収集して、保管しておかなければいけません。
例えば防犯カメラの映像などは、一定期間経つと消えてしまうので、速やかに消えないように保存しておきましょう。他にも、帳簿やレシート、契約書などの書類は、日々の業務や生活の中でどこかに紛れ込んでしまうこともあり得ます。
そのようなことがないように、あらかじめ証拠となりそうな書類は、他の書類と分けて厳重に保管するのが望ましいです。
また、目撃者や関係者の証言は、時間が経つと記憶が薄れてしまうため、メモや手控えとして記録しておいた方が良いです。そのメモや控えは失くさないように保管しましょう。
事前に警察に相談する
告訴する際、いきなり警察署に告訴状を持って行っても、その場ですぐ受理してもらえないことが多いです。そのため、告訴する前に、警察署の担当者に、事前に告訴状や添付書類のコピーを渡して、告訴したい旨を相談しましょう。
担当者から、告訴状に不備がないか、告訴が受理されるためにどんな証拠を集めればいいかなどのアドバイスをもらうと、効率的に告訴の準備ができます。
ただし、親告罪には、犯人を知った日から6か月が告訴期間となるので、相談に時間を費やしすぎて告訴期間を過ぎてしまわないように注意しましょう。
また、親告罪以外でも、犯罪から時間が経てば経つほど、犯人の特定や証拠収集も難しくなるので、告訴のタイミングをきちんと見極めることが重要です。
告訴状の作成と受理
告訴は、通常、警察署の担当者などに告訴状を提出し、受理してもらいます。
そのため、告訴するには告訴状を作成しなければいけません。
告訴状を作成する
告訴状を作成するのは、犯罪があったことを特定して明示し、処罰を求める意思を明確にするためです。
告訴状には、決められた書式はありませんが、作成者や作成年月日などは文書として形式的に記載しなければいけません。
また、告訴状には、どのような犯罪によって、どのような被害を受けたのかを特定できる程度の記載が必要です。特定する必要があるといっても、一般人である被害者が、犯罪の日時、場所、態様、被害の内容等の全てを詳細に特定することは無理なので、不特定な部分があったり、幅のある記載であったりしても構いません。
ただし、全く犯罪の特定ができていないと、警察なども捜査しようがないので、告訴を受理してもらうためには、ある程度は特定できるように努力しましょう。
また、告訴には、犯人を処罰してほしいという意思表示が必要ですから、告訴状にも犯人の処罰を求める旨をしっかりと記載しておく必要があります。
告訴状を提出して受理してもらう
告訴は、告訴状が警察官や検察官の手元に届くだけでは意味がなく、告訴状を受理してもらうことが必要です。
告訴の要件を満たしている場合に、警察官や検察官が告訴状の受理を拒絶することは許されないのが原則です。
しかし、告訴状の中には、告訴の要件が欠けていて、有効な告訴として取り扱えないものもあります。たとえば、告訴状に書いている事実について犯罪が成立していないもの、文書の意味が不明なもの、告訴期間が過ぎているものなどです。このような場合は、告訴が受理されなくてもやむを得ません。
また、警察官や検察官が、告訴状のコピーをとりあえず預かって、必要な事項を追完した後に正式に受理するといった場合があります。
捜査機関が告訴を受理すると捜査義務が生じるため、受理した後にすぐに捜査してもらえるよう、捜査に必要な事項は、告訴の際から情報提供できるようにしておきましょう。
刑事告訴の費用
自分で刑事告訴をする場合
証拠収集から告訴状の作成、提出まですべて自分で行うのであれば、刑事告訴の費用はかかりません。
行政書士に告訴状を作成してもらう場合
告訴状の作成だけであれば、行政書士にも依頼することができます。行政書士に告訴状の作成を依頼する相場は、犯罪の種類にもよりますが、5万円から10万円程度です。
弁護士に依頼する場合
他方で、弁護士であれば、代理人となることができるので、告訴状の作成だけではなく、警察署への事前相談、証拠の確保・収集、告訴状の提出など、告訴状の受理までの一連の流れを全て任せることができます。
弁護士に告訴を依頼する場合には、着手金・報酬金あわせて50万円~100万円程度が費用の相場ですが、事案が複雑だったり、特殊な犯罪だとさらに費用は高くなります。
受理されるためのポイント
告訴をすると、捜査機関に一定の捜査義務が生じます。そのため、捜査機関は、被害届などと比べて、告訴を受理しない傾向があります。
自分で告訴をするときに、捜査機関に受理されやすくなるためのポイントを解説します。
告訴状の記載事項に漏れがないようにする
法律上は、告訴状の記載事項や様式について決まりはありません。
しかし、告訴は、犯罪の被害者等の告訴権者が、捜査機関に対して、犯罪が起きたことを申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。
そのため、告訴状には、少なくとも、次の事項の記載が必要です。
- 告訴する人の住所・氏名・連絡先
- 告訴状の提出先(例「〇〇警察署長殿」「〇〇検察庁検察官殿」など)
- 犯罪があったという事実
- 犯人の処罰を求める意思表示
ただし、これらは最低限の記載事項なので、実際には、捜査を進めやすくするため、犯人が特定できるときは、その犯人を被告訴人として記載しなければいけません。
また、同様に、捜査を進めやすくするため、事件の背景事情や経緯、登場人物の人間関係などを詳細に記載しておいた方が良いでしょう。
ほかに、そもそも書類としての体裁を備えている必要があるため、提出年月日の記載と告訴する人の署名・押印も必要です。もっとも、親告罪以外の場合には、記名・押印でも構いません。
示談金目的ではないことを示す
捜査機関は、被害者が犯人から示談金を支払ってもらう目的で告訴することを非常に嫌がります。示談金による被害の回復は、本来であれば民事訴訟等の民事手続きによるべきです。
また、捜査機関が告訴を受理して捜査を進めている途中で、示談によって告訴を取り下げると、これまでの捜査をした意味がなくなってしまうからです。
そのため、告訴を受理してもらうためには、捜査機関に、示談金目的で告訴をしているわけではないとしっかりと示す必要があります。
特に、告訴する前から、犯人と示談交渉を始めている場合、捜査機関から「示談交渉がまとまらないから告訴したのではないか」と思われることがあります。
このような場合には、示談交渉を先にしているが、あえて告訴することになった理由や事情を捜査機関にしっかりと説明しなければいけません。
もっとも、示談金による被害の回復を完全に諦めないと告訴してはいけないわけではなく、結果的に、示談交渉がまとまれば、示談金を支払ってもらうことは問題ありません。
捜査機関からの協力要請に速やかに応じる
捜査機関に告訴前に事前相談をした結果、告訴状の記載が不十分であったり、添付資料が足りなかったりすると、告訴状の追記や資料の補充をアドバイスされることがあります。
そのようなアドバイスをされたら、速やかに対応して、修正したものを準備して提出しましょう。
捜査機関から関係者に直接話を聞きたいと言われることもあるので、その際は、関係者に協力を依頼して、関係者との間ですぐに日程調整をするべきです。
告訴を受理すると、捜査機関には捜査義務が生じますが、そもそも被害者や関係者に協力しようとする意思が見られないと、捜査機関もやる気がなくなってしまうのは当然です。
捜査機関から何か協力を求められた場合は、速やかにきちんと対応して、協力する意思があることをアピールしましょう。
また、捜査機関が告訴状のコピーを預かって、受理自体を保留にされたときには、頻繁に捜査機関に連絡を入れて、進捗を確認することで受理を促します。
受理されない場合は弁護士に相談
告訴の前に準備をして、告訴状を作成して提出しても、捜査機関が受理してくれない場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、そもそも告訴の対象となる事実が、法律的に犯罪を構成するものなのか、証拠によって立証ができそうなのかを、専門家の視点から判断してくれます。告訴状の作成の際も、弁護士なら、ただ被害者の言い分をそのまま記載するのではなく、事実を整理したうえで、犯罪を構成していると捜査機関が判断できるような形で記載します。
また、警察などへの事前相談にも弁護士が行って、担当者に事案の内容を説明したり、担当者の疑問点を聞き出してくれたりします。
告訴が受理されなくて困ったときは、刑事告訴を得意とするリード法律事務所にご相談ください。