刑事告訴の基礎知識

最終更新日:2023.05.31

【被害者向け】示談を持ちかけられた時の判断ポイントと注意点とは

犯罪や迷惑行為に遭ってしまったら、被害者は警察に訴える(告訴する)ことで捜査や起訴・裁判が行われ、裁判の判決にしたがって加害者に刑罰を与えることができます。

これを逃れようと、加害者側が「示談(じだん)」を申し出てくることがあります。

今回は、あなたが被害者の立場にあり加害者から示談を持ちかけられた時に最低限知っておきたい基本的な知識と、言われるがまま示談に応じてしまいあとで後悔しないための注意点やチェックポイントを解説します。

刑事事件における「示談」とは

示談とは、紛争や事件を当事者同士の話し合いによって解決することです。

交通事故や不貞行為による離婚などの民事事件では、民事裁判を起こさずに慰謝料の金額など諸条件を双方が話し合い、和解で解決するケースが大部分を占めています。

いっぽう刑事事件では、お金(示談金)以外に「被害回復の実現(または見込み)」と「被害者が加害者を許す」という結果が得られることも示談の条件となります。

被害者が示談の内容に納得し、双方が合意すれば、裁判前・裁判中にかかわらず告訴を取り下げることができ、事件はそこで解決となります。

ただしすべての刑事事件が示談で解決できるわけではなく、重大犯罪や社会に大きな影響を与えるような事件では、警察や検察が引き続き捜査や裁判を行います。

また検察官は公訴を取り下げるかどうかを判断する権利を持つため、仮に被害者が示談に同意したとしても、検察官が裁判の継続を決めるケースもあります。

示談の条件にはどのようなものがある?

示談は被害者・加害者の当事者同士が合意すればどのような条件でも成立しますが、一般的には以下のような条件が提示されることが多いです。

加害者側

  • 事件により被害者がこうむった物質的・身体的・精神的被害を回復する
  • 心から謝罪し、被害者からの許しを得る

加害者は、被害回復に必要な費用(損害賠償金、修理代、治療費、迷惑料、慰謝料、解決金などの名目)やお詫びの気持ちを金銭に換算し、示談金として支払います。

金銭以外にも、対面や手紙などで謝罪する・再犯防止プログラムや研修に参加するといった行動も示談の条件として扱われます。

被害者側

被害者は、提示された示談金などの内容が妥当なものであり、誠心誠意の謝罪や更生の意思が認められて加害者を許しても良いと考えた場合、示談金を受け取り、以下のような対応をします。

  • 刑事責任を宥恕(許す)する
  • 加害者の情報を第三者に知られないようにする など

(※「第三者へ情報を知らせない」は示談の必須条件ではなく、話し合いで決まります。)

加害者にとっては裁判で有罪になれば「前科」が残ってしまいますし、裁判には時間や費用など多大なコストがかかります。

このことから、一般的に示談で示される示談金の額は、裁判で認定される賠償金額よりも高額であるケースが多く見られます。

示談では必ず「示談書」を作成しよう

示談は、法的には口頭や電話・メールなどでも、双方が「合意しました」と言えば成立します。

しかし口頭や電話では後になって加害者側が「そんなことは言っていない」などと主張し、約束した示談金を支払わないといったリスクがあります。

そのような事態を避けるため、示談の条件や内容は必ず書面に残しておきましょう。

この書面を示談書といいます。

示談書には厳密な書式・様式はありませんが、以下の点について明記しておくことをおすすめします。

  • 被害者と加害者の氏名、住所、連絡先
  • 事件の概要(日時、場所、内容、罪名)
  • 示談の条件(賠償金額、支払い方法、謝罪方法など)
  • 示談の目的(告訴取り下げ、公訴取り下げなど)
  • 宥恕文言(被害者が加害者の刑事責任を許す旨の文言)
  • 清算条項(刑事事件に関して、お互いに請求し合わないという約束)
  • 署名または押印

氏名や事件の概要が書かれていないと、誰の何の事件についての示談条件なのか分からないため、のちのち証拠として機能しない可能性があります。また示談金(賠償金・慰謝料)は金額だけでなく支払い期限もはっきり記載しておきましょう。

示談書が完成したら、お互い署名捺印し、写しを保管します。

加害者側が用意した示談書の内容に不安がある場合や、加害者が口約束で済ませようとしているのできちんとした示談書を作りたいがやり方がわからない……という方もいらっしゃるかと思います。

そのような場合は、告訴や示談について詳しい弁護士にぜひご相談下さい。お問い合わせは以下より、電話・インターネット・LINEで受け付けています。

示談内容の判断ポイントと気をつけるべき点

加害者から示談の申し出があった場合は、以下のような点を見て受け入れるかどうかを判断しましょう。

  • 誠意のある反省や謝罪の意思が見て取れるか
  • 示談金や損害賠償金額は、被害に対して妥当な金額か
  • 示談金の支払い方法や期限は明確か
  • 示談にすることで将来的な悪影響(再犯の可能性など)はないか など

刑事処罰を免れたい、刑を軽減したいという動機によって謝罪を申し出る加害者も少なくありません。

謝罪と同時に減刑を求める嘆願書や示談書へ署名捺印を急がされるような場合、その場で受け入れる必要はありません

最終的な判断は被害者本人が行うとしても、家族や専門家の意見も参考にしながら慎重に判断することが大切です。

ただし、告訴の取り下げのうち、親告罪にあたる名誉棄損罪や器物損壊罪は、いったん起訴にいたってしまうとたとえ被害者本人でも取り下げることができません。

これらの事件で「示談に応じてもよい」と思った場合は、いつまで取り下げが可能なのか時期を把握しておく必要があります。

▼告訴の取り消しについて、さらに詳しい解説はこちらの記事もお読みください

告訴・告発の取消し方法について詳しく解説(書式・文例付き)

示談についての不安や疑問は、まず弁護士に相談を

犯罪やトラブルの被害にあってしまい、ただでさえ怒りや不安などで心が不安定な時に、加害者から謝罪や示談の申し出があったとしても冷静に判断や対応ができる自信がない……そんな方は非常に多いのではないでしょうか。

また加害者側が用意した示談書などの書類の内容が被害者にとって不利なものではないか、法律の専門家でなければなかなか気付きにくいものです。

そういった注意すべきポイントの発見や相手との交渉、法的な手続きのサポートについては告訴や示談に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

さらに、加害者に対し恐怖心や嫌悪感がある、連絡先を知られたくない、感情的になってしまいそうなどの事情から、直接交渉をしたくない方も多いかと思います。

そのような場合は、弁護士を代理人に立てて、直接加害者に会うことなく示談交渉を進めることができます

リード法律事務所では、示談についてのさまざまな疑問について、経験豊富な弁護士が相談を受け付けています。少しでも不安や疑問があればお気軽にご連絡ください。

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