最終更新日:2023.07.21
刑事告訴にはいくら費用がかかる?自分で・弁護士・行政書士・司法書士を比較
「刑事告訴」は、犯罪被害に遭ったとき、警察や検察にその事実を報告し加害者の捜査や処罰を求めるための手続きです。
法律上刑事告訴は誰でも行うことができるため、個人での告訴ももちろん可能ですが、実際に告訴状を提出しようとすると、書類の不備・証拠不足・軽微な犯罪だから該当しないといった理由で受理してもらえなかったという話もしばしば耳にします。
それなら弁護士や行政書士・司法書士といった専門家に依頼してみようかと考えたものの「高額な費用がかかるのでは……」と躊躇している方もいるかもしれません。
そこで本記事では、刑事告訴を行うにはどのような手続きが必要なのか、それぞれの手続きを個人で行った場合と弁護士・司法書士・行政書士などにサポートしてもらった場合に費用はどのくらいかかるのか、目安を紹介します。
また、自分で全てを行うのと専門家の力を借りるのとでは、単純に金額だけで比較できないメリットやデメリットもあります。ぜひ読んでみて、迷った時の参考に役立てて下さい。
目次
刑事告訴の方法と必要な手続き
まずは、加害者を刑事告訴したい場合にやるべきことを順を追って解説します。
1:資料や記録を揃える
刑事告訴の目的は犯罪捜査や犯人の逮捕・処罰であるため、「犯罪があった」ということが明確に伝われば伝わるほど受理されやすくなります。
もちろん、目に見える証拠品などが残っていない場合もありますが、少なくとも以下の点について可能な限り情報を集め、揃えておきましょう。
- 被告訴人(告訴する相手)の情報…氏名・住所・職業など、わかるかぎりの情報
- 告訴の趣旨…どういった犯罪にあたるのか
- 事件の詳細…いつ/どこで/誰によって/何が起きたのか、その理由や前後の状況など
- 証拠品…現場の写真、録音、映像、診断書、目撃者の証言など
2:告訴状を作成する
刑事告訴は法律上は口頭でも可能ですが、窓口で告訴を断られることも少なくない中、しっかりと犯罪の事実を伝えて捜査を開始してもらえるよう、特段の事情がなければ書類(告訴状)を作成するのが望ましいでしょう。
告訴状には決められた書き方はありませんが、できるだけ警察で使われている様式や用語と合わせることをおすすめします。
▼告訴状の詳細な書き方については、こちらの記事も参考にして下さい。
3:告訴状を提出する
告訴状を作成したら、通常は捜査機関である警察へ提出します。提出先は以下のいずれかにある警察署が良いでしょう。
- 犯罪が起きた場所
- 被害者の居住地
- 加害者の居住地
なお、交番や駐在所では告訴状を受理できないので注意して下さい。検察も捜査機関なので提出は可能ですが、捜査の機動力は警察の方が高く署の数も多いため、基本的には警察署へ提出しましょう。
刑事告訴と告発や被害届との違い
なお、告訴とよく似たものに「告発」や「被害届」の提出などがありますが、以下のような点が刑事告訴とは異なります。
「告発」とは、当事者(被害者やその遺族など)以外の第三者が犯罪の事実を知り、捜査や加害者の処罰を求める行為です。
「被害届」は、被害に遭った当事者が警察署に提出する点は刑事告訴と同じです。しかし刑事告訴では、受理した捜査機関は必ず捜査を行い、すみやかに起訴・不起訴の判断をして告訴人(被害者)へ報告する義務が発生するのに対し、被害届では捜査するかどうかは警察の判断に委ねられており、必ずしも犯人逮捕に向けて動いてもらえるとは限らないのが大きな違いです。
▼刑事告訴と被害届の違いについて、さらに詳しい解説はこちらから
そして、さまざまな犯罪の中でも、名誉毀損罪や侮辱罪、同居親族からの窃盗罪などは「親告罪」に分類され、捜査を行うには必ず被害者からの刑事告訴が必要となります。
親告罪の告訴期間は「犯人を知った日から6ヶ月まで」と定められています(刑事訴訟法235条)ので、告訴したい内容が親告罪にあたる場合は期限のことも意識しておく必要があります。
▼親告罪にあたる犯罪の一覧はこちらの記事で確認できます
▼「親告罪」の告訴可能期間についてはこちらの記事でも詳しく解説しています
刑事告訴に費用はどのくらいかかるのか
刑事告訴を行う際、金銭的にはどの程度の費用が発生するのでしょうか。ここでは、誰にも頼らず1人で刑事告訴を行った場合と、専門家やその他のサポートを利用した場合に、何をしてもらえるのか、またどのくらい費用がかかるのかの例を紹介します。
1:すべて自分で行った場合の費用の目安
警察で告訴状を提出すること自体には、手数料や印紙などの支払いは一切必要ありません。
かかるとすれば、書類作成のための紙やインク代、警察署までの交通費や駐車場代などの諸費用のみです。
また告訴状を警察署へ持参するのではなく郵送する場合、内容証明郵便料金として1枚あたり440円(2枚目からは260円)が必要になります。加えて資料等を送る書留料金なども必要です。
ただ、現金での出費は少ないとはいえ、慣れない書類の作成には時間がかかりますし、仕事を休んで警察まで出向くとその分収入が減ってしまう人もいるでしょう。受理してもらえず、何度も書き直して警察に行くのであればなおさらです。
自分で刑事告訴をする場合、こういった「見えない出費」のことも考えておく必要があります。
また何度も足を運んだにも関わらず肝心の告訴状がどうしても受け取ってもらえないという事態も、個人ではより起こりやすいといえるでしょう。
▼自分で刑事告訴をする方法と受理されるためのポイントは、こちらの記事でも解説しています
2:行政書士にできることと費用の目安
刑事告訴の告訴状を「業」として作成できるのは弁護士・司法書士・行政書士の3者のみと法律で定められています。
そのうちの行政書士の業務は、おもに官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること(行政書士法第1条の2第1項)です。
刑事告訴の告訴状(警察署に提出)は「官公署に提出する書類」に該当するため、行政書士に作成を依頼することも一応可能です。
費用には幅がありますが、多くの場合、作成のみであれば3~5万円前後というケースが多いでしょう。
ただし、行政書士が遂行できるのはあくまで書面の作成に限られるため、肝心の警察に対して刑事告訴を受理させるための交渉は依頼することができないので注意しましょう。また、書類の「作成」が業務範囲であるため「これは民事訴訟にするべき内容でしょうか」「そもそもこの事件は犯罪にあたるのですか?」といった法律上の相談をすることはできません。
3:司法書士にできることと費用の目安
次に、司法書士の業務は裁判所若しくは検察庁に提出する書類を作成すること(司法書士法第3条4号)です。
刑事告訴は警察署または検察庁に対して行うため、検察庁に提出する告訴状の作成であれば司法書士に依頼することも可能です。
費用は事務所によって異なりますが、行政書士と同様に、作成のみであれば3~5万円前後の価格設定をしているケースがよく見られます。
ただし、検察庁に提出するのが向いている事件はごく一部に限られており、ほとんどの犯罪では告訴状が受理された後のすみやかな捜査が期待できるのは警察署のほうですので、司法書士への告訴状作成依頼は慎重に検討する必要があります。
4:弁護士にできることと費用の目安
最後に、弁護士は法律に関する業務の制限がないため、告訴状の作成はもちろん、刑事告訴に関連する相談やアドバイス全般を「業」として行うことができます(弁護士法第3条)。
告訴状を作成するだけではなく、捜査官との告訴相談へ代理人として同席すること・告訴を受理させるための働きかけや交渉なども弁護士だけに許された業務です。
また犯罪による経済的被害が大きい場合には、刑事告訴と並行して損害賠償を求める民事訴訟を起こすことも可能ですが、弁護士であればその両方をサポートしてもらうことも可能です。
こういった包括的な支援が受けられることから、弁護士の告訴状作成費用は40万円〜と、他の2士業と比べて高額になります。
しかし、一番の目的は告訴状がきちんと警察に受理されて捜査が開始され、加害者がしかるべき処罰を受けることですから、弁護士に依頼することでその可能性が高まるのは大きなメリットです。
▼リード法律事務所の刑事告訴の費用はこちら
▼弁護士に支払う費用の詳しい内訳や相場についてはこちらの記事でも解説しています
被害者が刑事告訴する時や相談する時の弁護士費用・相場はどのくらい?
5:その他の団体や機関ができることと費用の目安
刑事告訴の告訴状を「業」として作成できるのは弁護士・司法書士・行政書士の3者のみです。
それ以外の職業、例えば探偵事務所には、告訴状とともに提出する書類に記載する証拠や証言の調査などを依頼することができますが、告訴状は上記の3者に依頼するか、自分で作らなくてはなりません。
費用は調査内容や調査員の人数、調査に要する時間に応じてケースバイケースですが、日本探偵業協会が行ったアンケートでは、調査員2名につき1時間当り1~2.5万円と報告されています。仮に10時間で依頼すれば10~25万円に諸経費を加えた金額となります。
刑事告訴でそれぞれの士業で受けられるサポートをまとめると以下のようになります。
刑事告訴を検討するなら、弁護士に相談を
犯罪被害者が加害者の刑事告訴を検討している場合、できるだけ費用をかけずに進めたいのであれば、まずは個人でチャレンジしてみるのも良いかと思います。
しかし「警察で告訴状を受け付けてもらえなかった」という人は非常に多いのも事実です。
そんな時も、あきらめず刑事事件に力を入れている弁護士に相談してみて下さい。
告訴状を出すときに必要な資料や証拠の精査、告訴状の作成方法や記載事項、提出の方法まで、専門知識を生かしたサポートが受けられます。
また弁護士は、単に書類を作成するだけではなく、告訴状が受け付けてもらえないときの署への同行や警察との交渉、加害者や関係者との代理交渉など、事件で精神的なダメージを受けている被害者の支えとなって活動することができます。
リード法律事務所では、刑事事件の被害者支援に豊富な経験と実績を持つ弁護士が相談を受け付けています。お気軽に以下までご連絡ください。