刑事告訴の基礎知識

最終更新日:2023.05.31

刑事告訴・告発ができる期間を弁護士が解説

これから刑事告訴や告発をしようと思っている人の中には、いつまで刑事告訴や告発ができるのか疑問に思う人もいるかもしれません。刑事告訴や告発の準備に時間をかけすぎて、刑事告訴や告発ができる期間を過ぎてしまっては、本末転倒です。刑事告訴や告発をするか迷っている人にとっては、いつまで刑事告訴や告発ができるかどうかというタイムリミットは非常に重要となります。

この記事では、刑事告訴や告発ができる期間や、公訴時効について解説しますの。刑事告訴や告発がいつまでできるのか、刑事告訴や告発をするかどうかの決断や準備にどのくらい時間をかけられるのかが把握できます。

親告罪には告訴期間の制限がある

親告罪とは、告訴がないと起訴することができない犯罪のことです。

名誉毀損罪や器物損壊罪などが親告罪と規定されています。

親告罪では、犯人を知った日から6ヶ月を過ぎると、告訴できなくなります(刑訴法235条1項本文)。

犯人を知った日から6か月を過ぎてから告訴しようとしても、そもそも告訴状を受理してもらえませんし、仮に受理してもらえても、告訴自体が無効になります。

告訴・告発は公訴時効内であればできる

親告罪以外の犯罪には告訴期間の制限はないので、その犯罪の公訴時効(刑訴法250条)の期間が過ぎていない限り、いつでも告訴できます。

公訴時効とは

公訴時効とは、犯罪が終わってから一定期間が経過することにより、起訴することができなくなる制度です。

公訴時効が存在する理由は、時間の経過とともに刑罰を加える必要性が減少するという見解(実体法説)や、証拠が散逸して正しい裁判ができなくなるからという見解(訴訟法説)などがありますが、未だ論争があり、はっきりとした結論は出ていません。

公訴時効の改正

2010年に刑訴法が改正され、人を死亡させた罪のうち、一部の犯罪については、次のとおり、公訴時効が延長・廃止されました。

特に、死刑にあたる罪の時効の廃止は、被害者の遺族に対する配慮によるところが大きいと言われています。

この延長・廃止された後の公訴時効については「人を死亡させた場合の公訴時効」の解説において詳しく説明します。

この改正法は即日施行されましたが、改正法が施行された時に時効が未完成の罪についても、改正法を適用すると規定しています。

民法の時効との違い

公訴時効と似た言葉として「消滅時効」というものがあります。

刑事事件の加害者は、被害者に対して、損害を生じさせています。たとえば、怪我の治療費や壊した物の修理代、精神的苦痛を与えた慰謝料などが、損害にあたります。

刑事事件の加害者は、被害者から、この損害について、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求をされることになります。

消滅時効期間を過ぎてしまうと、被害者は、時効によって損害賠償請求ができなくなります。

消滅時効の期間は、何についての不法行為なのかによって変わってきます。

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間です。

その他の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間です。

また、不法行為の時から20年を経過したときも、不法行為に基づく損害賠償請求権は時効により消滅します。

刑の時効との違い

刑事上の時効には、公訴時効のほかに、刑の時効というものがあります。

確定判決前の時効が公訴時効であるのに対して、刑の時効は確定判決後の時効です。

刑の時効は、刑事裁判で刑の言渡しを受けた者が、一定期間、刑の執行を受けないことによって、その刑の執行が免除されるという制度です(刑法31条)。

刑の時効の期間は次のとおりです。

刑の時効期間
死刑なし
無期懲役又は禁錮30年
10年以上の有期の懲役又は禁錮20年
3年以上10年未満の懲役又は禁錮10年
3年未満の懲役又は禁錮5年
罰金3年
拘留、科料、没収1年

公訴時効の期間

公訴時効の期間は、人を死亡させた場合か否かと、法定刑の上限が何なのかによって変わります。

人を死亡させた場合の公訴時効

人を死亡させた犯罪の公訴時効をまとめると、次のとおりです。

法定刑の上限公訴時効具体例
死刑公訴時効なし殺人罪強盗殺人罪
無期の懲役又は禁錮30年強制わいせつ致死罪強制性交等致死罪
長期20年の懲役又は禁錮20年傷害致死罪危険運転致死罪
上記以外10年業務上過失致死罪自動車運転過失致死罪

人を死亡させていない場合の公訴時効

人を死亡させていない犯罪の公訴時効をまとめると、次のとおりです。

法定刑の上限公訴時効具体例
死刑25年現住建造物等放火罪
無期の懲役又は禁錮15年通貨偽造罪、身代金目的略取誘拐罪
長期15年以上の懲役又は禁錮10年傷害罪(他人所有の)非現住建造物放火罪強制性交等罪
長期15年未満の懲役又は禁錮7年窃盗罪、業務上横領罪、恐喝罪、詐欺罪強制わいせつ罪、営利目的等略取誘拐罪
長期10年未満の懲役又は禁錮5年横領罪、背任罪、私文書偽造罪
長期5年未満の懲役又は禁錮3年暴行罪、脅迫罪、強要罪、業務妨害罪住居侵入罪
罰金3年過失傷害罪
拘留又は科料1年侮辱罪

公訴時効の計算方法

公訴時効の計算にあたっては、公訴時効の起算点はいつなのか、公訴時効の停止があるかという点が関係してきます。

公訴時効の起算点

公訴時効の起算点は「犯罪行為が終わった時」です(刑訴法253条1項)。

共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、共犯全員について起算します。

また、犯罪行為が終わった日が1日として計算されます。

「犯罪行為が終わった時」の意味は、犯罪の種類によって変わってきます。

挙動犯や未遂犯では実行行為終了時、結果犯では結果発生時とされています。

挙動犯とは、刑法などで犯罪として定められた行為類型(構成要件)としての行為があるだけで犯罪になり、結果の発生を必要としない犯罪のことです。たとえば、住居侵入罪や偽証罪が挙動犯にあたります。

未遂犯とは、犯罪の実行に着手したけれども、犯罪を最後までやり遂げなかった場合をいいます(刑法43条本文)。

結果犯とは、構成要件にあたる行為だけでなく、一定の結果の発生が必要とされる犯罪のことです。たとえば、殺人罪や窃盗罪など大部分の犯罪が結果犯にあたります。

また、刑事訴訟法上は、期間の計算をする場合、原則として初日を算入しないルールとなっていますが、時効期間の計算の場合は例外として初日を算入することになっています(刑訴法55条1項)。

公訴時効の停止

公訴時効は、一定の要件のもとで「停止」すると定められています。

刑事訴訟法上、次のような場合に、公訴時効が停止します。

  • 公訴が提起された場合(起訴された場合)
  • 犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合

公訴時効が停止すると、その期間は、時効期間の進行が一旦ストップします。

時効の中断との違い

時効の中断とは、一定の事由が起こった場合に、それまで進行していた時効期間がリセットされて、最初から時効期間がカウントされることをいいます。

刑事上は時効の中断という制度はありませんが、2020年に改正される前の民法には時効の中断の制度が定められていました。

改正前の民法上の時効の中断事由としては、請求、承認、差押え、仮差押えまたは仮処分がありました。

告訴・告発の期間に悩んでいるなら弁護士に相談

親告罪でない場合、告訴や告発は、公訴時効の期間であればすることができます。

公訴時効は、人を死亡させたか否かと、その犯罪の法定刑の上限によって変わります。

また、公訴時効の起算点や公訴時効の停止について正しく理解していないと、いつ公訴時効が完成するか、わからなくなってしまいます。

公訴時効の期間がいつまでなのかわからない場合には、弁護士に相談してみましょう。

公訴時効が過ぎてしまっては、告訴や告発ができなくなってしまいますので、公訴時効の期間が過ぎてしまいそうだと思うのであれば、一刻も早く告訴や告発を行うことが重要です。

捜査機関に、公訴時効が過ぎる前に告訴や告発を受理してもらうためにも、告訴や告発を弁護士に依頼して、効率的に告訴や告発をすることをおすすめします。

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