最終更新日:2023.05.31
刑事告訴をしたいが証拠がない場合どうしたらいい?
一般的に「刑事告訴をする場合、証拠が必要」といわれます。ただ実際には客観的な証拠がなくても刑事告訴を受け付けてもらえる可能性はあります。
この記事では刑事告訴をしたいけれど証拠がない場合の対処方法をお伝えします。手元に十分な証拠がなくてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
客観証拠がなくても人証だけでも告訴できる可能性がある
刑事告訴をするときには、警察に事件があったことを伝えなければなりません。そのためにはある程度の説明資料が必要となります。
ただ被害者には犯罪の立証義務がありません。証拠を集めるのは警察や検察などの捜査機関の仕事です。よって被害者が完全な証拠を持参しなくても、捜査機関は刑事告訴を受理しなければなりません。捜査機関はそのことのみによって刑事告訴を拒むことはできません。
例えば被害者が「客観証拠」を持っておらず自分の主観的な証拠しかない場合でも、刑事告訴が受理される可能性があります。
客観証拠とは
客観証拠とは、客観的に事実を証明する証拠です。
例えば殺人事件のナイフや窃盗事件で家を荒らされたときの写真などの物証は客観証拠の典型です。客観証拠は人が作り出すのが難しいので、証明力の高い証拠とみなされます。
人証とは
証拠の種類は客観証拠だけではありません。
「人証」も証拠の一種となります。人証とは、人の主観的な認識をまとめた証拠のことです。供述調書や陳述書、証人尋問の結果などが人証となります。
刑事告訴をしたい場合、客観証拠がなくても人証だけなら用意できるケースが少なくありません。例えば客観的な物証が手元になくても、今までの被害の経過を自分でまとめた書面があれば、客観証拠はなくても人証が手元にある状態となります。
人証だけで告訴できるケース
手元に客観証拠がなく人証しかなくても告訴できるケースはあります。
例えば痴漢などの性犯罪ではもともと客観証拠が残りにくいものです。こういった類型の犯罪の場合、防犯カメラなどの客観証拠がなくても、被害者が作成した陳述書などの人証だけで刑事告訴できる可能性があります。
刑事告訴を行うとき、必ずしも客観証拠が手元になくても受理される可能性があるので、あきらめる必要はありません。客観証拠が手元にないなら、まずは時系列表やメモなどを作成しましょう。
証拠がない場合は事件の経過をまとめたメモを作成する
客観証拠が手元にない場合、具体的にどのような人証を作成すれば良いのでしょうか?この場合、まずは今までの経緯をまとめたメモを作成するようおすすめします。
時系列付きの詳細なメモがあれば、警察としても事件の概要を把握しやすくなります。
メモを作成するメリット
メモを作成すると、口で説明するより正確に警察へ事件の内容を伝えやすくなります。メモも一種の証拠になるので、何の証拠もない場合より刑事告訴を受理してもらいやすくなるといえるでしょう。
また、メモを提出するときに自分の控えを取っておけば、後に自分でも事件内容を思い出しやすくなります。事件から時間が経つと自分でもだんだんと事件の内容を思い出しにくくなるものです。メモを作成しておくと、自分の記憶を新鮮に保ちやすいメリットもあるといえます。
陳述書を作成する
人証としては「陳述書」の作成も重要です。陳述書とは、被害者や目撃者などの第三者の供述内容を録取した書面です。
単なるメモよりも詳細で、作成日付を入れて署名押印してあるので、信用性も高くなります。自分の陳述書だけではなく、事件の目撃者や関係者、事件について相談していた人などにも陳述書を作成してもらうとよいでしょう。
陳述書の作成方法
陳述書を作成するとき、本文はパソコンで作成してもかまいません。ただし日付部分と署名押印の部分は自筆しましょう。
友人や親族、目撃者などに陳述書を書いてもらう場合にも、署名押印部分だけは自筆で書いてもらうようにしてください。なお押印に使う印鑑は実意でなく、認印でもかまいません。
時系列表を作成する
刑事告訴を受理してもらうため、事件発生時や直前から現在までの時系列表を作成しておく方法もあります。メモや陳述書とは別途、時系列表があると、事件の概要を把握しやすくなるためです。
刑事告訴をするときに客観的な証拠がなければ、上記のように詳細なメモや陳述書、時系列表を用意すると良いでしょう。
メモを作成するポイント
刑事告訴を受理してもらうためには、まずは捜査機関へ状況を説明するためのメモを作成すべきです。
以下ではメモを作成する際のポイントをお伝えします。
メモに入れるべき項目
メモには以下のような内容を入れましょう。
- 事件に至る経緯
- 被害者と加害者の関係
- 犯罪が起きた時間
- 犯罪が起きた場所
- 具体的な加害者の行動・方法(犯罪行為)
- 犯行後の経過
メモに盛り込むべき事項の具体例
例えば加害者から殴られてケガをした傷害事件の証拠としてメモを作成するとしましょう。この場合、以下のような内容をメモにまとめます。
- 被害に至る経緯
- 相手との関係性
- 殴られた際の立ち位置
- 殴られたときの体勢
- ゲンコツか平手打ちか
- 右手で右の頬を殴られたなど、相手の詳細な動きや殴られた部位について
- ケガの内容
- 言い争いをしていたのか、相手は何と言っていたのか
時間、場所、方法は詳しく記載する
メモを作成するとき、犯罪が行われた時間や場所、加害方法はなるべく正確で詳しく書くことが望ましいといえます。詳細な内容であればあるほど信用性も高くなるからです。
なるべく早くメモを作成する
事件内容をまとめたメモは、事件後なるべく早めに作成するようおすすめします。事件から時間が経つと、どうしても記憶があいまいになってしまい、メモを作成しようとしても、うまく事件内容を思い出せないケースが多いためです。記憶は時間とともにどうしても鮮度が落ちてしまいます。
同じメモでも、事件直後に作成したものか、事件からある程度の年月が経過したものかによって証拠としての価値が全く異なります。
また事件から時間が経ってからメモだけもって来られても、捜査機関としては「なぜ事件が起こってすぐに告訴に来なかったのか?今頃メモだけ持って告訴に来るのはなぜなのか?」と疑念を抱く可能性があります。刑事告訴を受理してもらうためにも、とにかく早めにメモを作成することが重要です。
刑事告訴をすると、いずれは警察で供述調書が作成されるでしょう。それならわざわざ自分でメモを作成する必要がないと考えるかもしれません。
しかし告訴してもすぐに供述調書が作成されるわけではありません。ときには数か月後に呼び出されて調書を作成するケースもあります。供述調書を待っていると記憶が曖昧になってしまいやすいので、事件に遭ったらすぐにメモをまとめるべきなのです。
公証役場で犯罪事実を供述した書面に確定日付を付与する方法
自分で作成したメモに高い信用性を与えるため、公証役場で犯罪事実を供述した書面に確定日付を入れてもらう方法も有効です。公証役場の公証人は、元裁判官、元検察官であり、法律のプロであり犯罪事実を証明するためにどのような事実が必要かを良く心得ています。
自分でメモを作成するより、法律的に意味があり正確な内容を記載した書面を作成してくれます。
弁護士に相談する
メモを作成する場合には、弁護士に相談するようおすすめします。
弁護士であれば、後にどのような法的手続きを取るのかを考え、その為にどのような証拠が必要であるか、かつ、どのように証拠化すれば良いのかを熟知しています。必要であれば、被害者本人や目撃者、関係者の分の陳述書も作成します。弁護士に依頼した場合、刑事告訴のサポートもまとめて行えるので、結果的に刑事告訴も受理されやすくなるでしょう。
まとめ
刑事告訴を受理してもらいたい場合、証拠集めが重要です。犯罪に巻き込まれてしまった場合、どうすれば良いのか冷静に判断するのは難しいと思います。そんなときは、犯罪被害者サポートに力を入れているリード法律事務所にご相談頂ければ、何がご相談者様にとって最善の解決なのか一緒に悩み、どのような選択肢があるか、そのために今何をすべきなのか丁寧にご説明いたします。