刑事告訴の基礎知識

最終更新日:2023.06.14

被害者が、犯人(加害者)を刑事告訴するメリット6選

犯罪の被害に遭ってしまったときに取るべき方法としてもっともよく知られているのは警察に被害届を出すではないかと思います。

あるいは侮辱罪や名誉毀損罪・親子間での窃盗など「親告罪」に分類される犯罪については、被害者本人が黙っている限りは事件扱いにならないまま、つまり「特になにもしない」という選択肢もあります。

しかしそれ以外にも、犯罪被害者が取れる方法がもう1つあります。

それが、被害者が警察や検察に対し事件の捜査と犯人(加害者)の処罰を要求する「刑事告訴」です。

今回は他の選択肢と刑事告訴との違いや、犯罪被害者にとって刑事告訴はどのようなメリットがあるのかを解説します。

刑事告訴とは?なぜなかなか受理されないのか

刑事告訴とは、犯罪の被害者やその他一定の者(被害者の親権者や相続人など)が、検察官や警察官といった捜査機関に対して犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求めることです(刑訴法230条)。

「刑事告訴とは」を説明する画像

法律上は口頭でも刑事告訴はできますし、文書で刑事告訴を行う場合においても「告訴状はこの内容を満たさなければ受理しない」などといった規則もありません。

しかし、なかには「民事上のトラブルを有利に運びたい」「もめごとの腹いせに、虚偽の犯罪をでっちあげて告訴する」など刑事告訴を悪用しようとする人もいるため、告訴状さえ出せば無条件に受理されるとはいかず、事実上、警察が認めた告訴状だけが受理されています。

それどころか、すんなり受理されることはめったにないのが現状で、書類の不備や証拠不十分など何かと理由をつけて断られることがほとんどといえるでしょう。

なかなか告訴状が受理されない背景には、刑事告訴特有の性質があるからだと考えられます。

その性質とは「告訴状を受け取れば、捜査機関(=警察や検察)には、すみやかに捜査を行う義務が発生する」という点です。

これがもし被害届であれば、警察は「この内容なら捜査の必要はない」と判断すれば、捜査や犯人逮捕などに動く必要はありません。

しかしひとたび告訴状を受け取れば、捜査機関は告訴人(被害者)の求めに応じて必ず捜査を行わないといけないのです。

被害者にとっての刑事告訴のメリット

刑事告訴の持つ効力は、犯罪被害者にとって次のような様々なメリットをもたらします。

「刑事告訴が被害者にもたらすメリット」を説明する画像

刑事告訴のメリット 1)確実に捜査をしてもらえる

被害届を出しただけでは、捜査をする・しないの判断は警察に委ねられているため、場合によってはまったく捜査を進めてもらえず、犯人は平気で日常生活を送っていることに悔しい思いをしたり、不安を感じたりするかもしれません。

刑事告訴が受理されれば警察は法に基づいてすみやかに捜査を開始する義務があるので、確実に捜査をしてもらえるという大きなメリットが得られます。

刑事告訴のメリット 2)犯人を逮捕できる可能性がある

犯人(加害者)が分かっていて、被害を与えたにもかかわらずまったく反省の色がないような場合、被害者は憤りを覚えるでしょう。法に基づいてきちんと処罰し罪を償わせたいと思うのであれば、刑事告訴することで捜査や逮捕に結びつきます。

また、二度と手に入らない大切なものを壊されたり盗まれて戻ってこないような場合や、侮辱・強制性交などで心身を傷つけられた場合、仮に示談金を提示されても、お金では被害が回復できず、犯人(加害者)の刑罰をもって償ってほしいと感じる人もいるでしょう。

このような場合「逮捕できる可能性がある」というのは大きなメリットといえます。

刑事告訴のメリット 3)民事で解決できない事件も刑事事件で解決する可能性がある

民事事件では被害者は加害者に対して損害賠償を請求し、裁判で認められれば加害者に金銭等の支払いが命じられます。

しかしたとえば投資詐欺に遭った場合、仮に民事の判決で一千万円の勝訴判決を得たとしても、まったく支払おうとしない相手もいます。

このような場合、詐欺罪で刑事告訴し有罪判決が下りれば相手に処罰を与えることができます。

あるいは逮捕されたり前科ができてしまうリスクを恐れた加害者が示談を申し出てくるかもしれません。とりわけ被害金額が数百万以上の詐欺事件や横領事件などの財産犯の場合、示談交渉を行うと、事実上相手方に刑務所に行くか示談金を支払うかの極めて厳しい二択を迫ることを意味します。そのため、相手方は刑務所に行くことを恐れて民事では回収できなかった金銭を回収できる能性もあります。

刑事告訴のメリット 4)精神的な被害回復が期待できる

犯罪被害の回復には色々な形があります。

犯人(加害者)に奪われた金銭や物品を取り戻したり、犯罪がなければ得られていたはずの収入や負担した医療費などの損害賠償請求をしたりするほか、犯人の心からの謝罪や反省・二度としないという約束・そしてきちんと犯人が罰を受けることによって、犯人に負わされた精神的な傷が癒えることも回復の1つの形といえます。

被害届を出したまま捜査が行われる様子もなく犯人は平気で暮らしていたり、「微罪処分」と決まれば前科がつくこともなく生きていけたりするのと比べ、強い強制力を持つ刑事告訴からの逮捕や処罰が行われれば、被害者にとってはより精神的にも納得のいく結果となるでしょう。

関連記事:加害者の「微罪処分」に納得がいかないときに取るべき方法

刑事告訴のメリット 5)金銭的な被害回復も期待できる

会社の売上金を不当に着服していた(業務上横領罪)従業員を刑事告訴した結果、裁判で有罪となれば、その横領金を返済したかどうかで刑の重さが変わってきます。そのため、横領された金銭が戻ってくる確率が高くなるでしょう。

また直接抗議や被害届では知らんふりをしていた犯人(加害者)が、告訴したことにより刑罰や前科を恐れて示談を申し出てくることもあります。

はじめから示談を念頭に置いて、金額を有利にしたいがためだけに告訴を行うのは望ましくありませんが、結果的に示談となれば告訴の影響で比較的被害者にとって有利な内容になりやすく、これもメリットの1つといえます。

刑事告訴のメリット 6)今後の犯罪被害を防止できる

痴漢やセクハラ(強制わいせつ罪)、悪質な運転による交通事故(過失傷害罪)などの犯罪は、常習的に行う者も多く、放置しておけば今後も他の人を含め被害が続く可能性があります。

しかし犯人の逮捕や刑罰といった強い対応はそれらを未然に防ぐことにつながるでしょう。

「犯罪被害に遭った事実は消えなくても、未来の被害者を守れるかもしれないと思うと、少し心が軽くなる」と語る被害者は少なくありません。

また会社内で起こった盗難や横領などについても、犯人を解雇で済ませるのではなく刑事告訴して厳しい罰を与えることで、今後同様の犯罪への抑止力となります。

弁護士のサポートで刑事告訴や犯人逮捕に近付きます

刑事告訴は必ずしも弁護士の協力を得ることなく、1人で告訴状を作成して行うこともできます。以下の記事でも解説していますので参考にして下さい。

関連記事:自分で刑事告訴をする方法と受理されるためのポイント

しかし、一般の方が刑事告訴を行うには相当なエネルギーを費やすのも事実で、とりわけ犯罪被害のダメージを受けた状態では、警察に告訴状を断られて心が折れてしまいそうだ……という声もよく耳にします。

そんなときも、なんとしても犯人を逮捕してほしい、処罰を与えたいという思いがあるのであれば、弁護士のサポートを受けるのも良い方法です。

弁護士や法律事務所にはそれぞれ特に詳しいジャンルや分野があるので、刑事告訴や被害者の支援に力を入れていて実績のある弁護士に相談するのが成功のコツです。

▼当事務所での刑事告訴の成功例はこちら

https://lead-law-office.com/keijikokuso/case/

リード法律事務所では、犯罪被害に遭われた方のため、刑事告訴に精通した経験豊富な弁護士が相談を受け付けています。お気軽に以下までご連絡ください。

メニュー

お問い合わせ・相談

記事カテゴリー

03-6807-5708 受付時間 平日 9:00~21:00 LINE相談 相談フォーム