最終更新日:2023.06.06
【弁護士が解説】被害届を出したのに警察が捜査しない・動いてくれない場合どうしたらいい?
盗難(窃盗)・暴行・詐欺・ストーカー被害など、さまざまな犯罪の被害に遭ってしまった場合、皆さんは警察に被害届を出し「捜査して犯人を逮捕してもらいたい」と考えるでしょう。
しかしその後、いくら経っても犯人を捕まえたという連絡もなく、捜査が進展しているのかどうか分からない、そもそも捜査をしているのかも疑わしい……そんなときにはどうすればいいのでしょうか?
この記事では、被害届を提出したにもかかわらず警察が動いてくれないときの理由や対処方法について解説します。
目次
被害届は捜査を約束するものではない
テレビのニュース番組などでは、車に傷をつけたり店舗に侵入したりした犯人の映像が防犯カメラに映し出され、アナウンサーが「持ち主は警察に被害届を提出しました」等と読み上げる報道をよく見かけます。
そのため「被害届を出せば必ず警察が犯人捜しの捜査に乗り出してくれる」と思っている方がいるかもしれません。
しかし被害届というのは、捜査の端緒(きっかけ)の1つではあるものの、役割としてはあくまでも「事実を申告する」ものにとどまります。
被害届を受け取った後に捜査するかしないかは警察が判断してよいのです。
また被害者へ捜査の有無や進捗を報告する義務もありません。
つまり「警察が動いてくれない」と感じている場合、「この件は現状捜査の必要なし」と判断されて放置されている可能性が高いといえます。
(※その後、別件で同じ犯人が証拠を持っていたなどで急に捜査が始まるケースもあります)
被害届すら受け取ってもらえないこともある
被害届が出されたら、捜査するしないは別として警察は必ずそれを受理しなくてはなりません。
ただし、借金・不倫・騒音トラブル・私有地での無断駐車といった犯罪性が無い純粋な「民事事件」の内容で被害届を出すことはできません。これを「民事不介入の原則」といいます。
上記のような場合「警察が動いてくれない」というのは正当で、民事裁判等によって解決することになります。
しかし明らかに犯罪の被害に遭っているにもかかわらず、被害届を受け付けてもらえないケースもあります。
実際、当事務所にも「警察は民事には介入しないから受け付けることができないと言われました。こんなひどい被害に遭ったのに、犯罪ではないのですか?」と困って相談に来られる方が多くおられます。
平成31年には警察庁から全国の警察署に向け「被害の届出に対しては、被害者・国民の立場に立って対応し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理するこ
と(出典:警察庁|迅速・確実な被害の届出の受理について)」と通達が出ていることからも分かるとおり、しばしば不適切な対応が取られ、警察が動いてくれないという事例が起こっています。
警察が動かない場合の対処方法
1 捜査を促す
被害届を出したのに警察が何もしてくれていないように思える場合、1つめの対処としては、警察へ問い合わせて捜査の進捗をたずねたり、捜査をしてくれるよう促す方法があります。
その結果「現在捜査を行っているが、なかなか有力な証拠が見つからず進展しない」といった情報を教えてもらえることもあります。
しかし「被害届の内容を検討したが、緊急に捜査を行うものではないと判断した」と言われたら、「いや、ちゃんと捜査をして下さい」と訴えても叶わない可能性が高いでしょう。
交渉するのであれば、それが捜査すべき内容であることを専門知識に基づいて強力に交渉できる、弁護士などの専門家とともに行うことをおすすめします。
2 刑事告訴する
捜査するかしないかが警察の判断にゆだねられる被害届とは異なり、必ず捜査を行いすみやかに結果を報告する義務があるのが「刑事告訴」です。
刑事告訴とは、刑事事件の犯罪被害者本人または法定代理人等、法で定められた人が、捜査機関(=警察と検察)に対して犯罪の事実を申告し、捜査と犯人の処罰を要求することです。
親告罪の告訴について
犯罪の中には、被害者による刑事告訴によってのみ捜査が開始される「親告罪」も存在します。
名誉毀損罪や侮辱罪、同居する親族内での窃盗罪などが親告罪にあたり、この場合、まわりの人がどれだけ「許せない」「犯人を罰するべき」と思っても、被害者から刑事告訴がされない限り、警察は動くことはできません。
また、親告罪には刑事告訴できる期限が定められています。刑訴法第235条に定められた期限「犯人を知った日から6ヶ月以内」を過ぎてしまうと、警察も動いてくれないことになります。
被害届を出していても刑事告訴できる?
なお「すでに被害届を出したのに、告訴状も同時には出せないのではないか」と疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
警察の窓口担当者も「出せない」と言ってくることがしばしばありますが、そんなことはなく、被害届を出した上で刑事告訴しても良いのです。
告訴状は受理のハードルがさらに高い
刑事告訴の告訴状は、被害届と同様に警察は必ず受理しなくてはならないのですが、以下のような理由で受け付けてもらえないことが非常に多く、被害届以上に受理のハードルは高くなります。
- 告訴状の記載内容に不備がある
- 証拠がない、足りない
- 犯罪にあたらない
- 民事事件である
- 本当に起きたことなのか不明確
- 被害が軽微である など
関連記事:警察が告訴を断る理由と告訴を受理してもらうための5つのポイントを弁護士が解説
3 弁護士に相談する
刑事告訴では、すみやかな捜査および報告義務があるため「警察が動いてくれない」といった心配や不満はなくなりますが、それだけに、非常に受理されにくいのが現状です。
受理されるためには、警察のいう「受理できない理由」について1つ1つクリアしていくことが必要ですが、それには時間も知識も足りない……。
そんな時は、刑事告訴や被害者の支援に注力しており実績のある弁護士に相談する方法もあります。
弁護士は、より受理されやすい告訴状の作成や証拠集めのアドバイスなど、専門知識に基づいて刑事告訴までの支援を行います。
それでも警察が動いてくれない場合、警察の窓口に同行し、法に則って正しく告訴状を受理するよう強く働きかけたり、上位組織や検察への告訴(直告)を行ったりと、幅広い手段で力強く被害者の支援を行います。
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