最終更新日:2023.06.23
刑事告訴をしたら犯人は必ず逮捕される?告訴後の流れを解説
「自分が刑事告訴をしたら、加害者はどうなるのか」と気になっていませんか?
刑事告訴をすると捜査が始まり、必要に応じて加害者が逮捕される可能性があります。逮捕された後は最大20日の勾留期間を経て、起訴されて裁判にかけられるかが決まるという流れです。
この記事では、刑事告訴が受理された後の流れや、どういったケースで逮捕されるかを解説しています。刑事告訴をした、あるいはこれからする予定の方にとって参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
刑事告訴が受理されたら?その後の流れ
刑事告訴が受理されると、おおむね次の流れで加害者に対する処分が決まります。
- 捜査が開始される
- 必要に応じて、任意同行・逮捕がなされる
- 逮捕後の勾留期間で、起訴されるかが決まる
- 起訴されれば裁判になり、判決がくだされる
これは一例です。他にも、逮捕されずに在宅で捜査が進められて起訴されるなど、場合によって流れは異なります。
以下で、刑事告訴した後の流れについて詳しく解説します。
捜査機関による捜査が開始される
刑事告訴が受理されると、それをきっかけにして捜査機関による捜査が開始されます。告訴とは犯人の処罰を求める意思表示であり、捜査機関は捜査を進める必要があるためです。
捜査機関とは検察・警察ですが、通常は始めに警察が捜査を行います。関係者への事情聴取、現場検証など捜査には様々な態様があり、状況に応じて適切な方法が選択されます。
告訴を受けた警察官は関係する書類や証拠物を検察に送付しなければならないとされており、勝手に処分を決めることはできません(刑事訴訟法242条)。
なお、加害者のした犯罪が親告罪という類型に該当する場合には、告訴がなければ起訴して裁判にかけることはできません。たとえば、名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪などが親告罪にあたります。
親告罪では起訴するために告訴が必要ですが、捜査の開始のためには告訴が条件となりません。通常は告訴を受けて親告罪の捜査が始まる場合が多いですが、告訴がない状態で捜査が始まる可能性もあります。
必要に応じて任意同行・逮捕される
捜査が進むと、犯人と疑われる人に任意同行を求めたり、場合によっては逮捕したりして取り調べを行います。
最初は任意同行を求めて応じない場合に逮捕するケースもあれば、いきなり逮捕するケースもあります。
任意同行とは
任意同行とは、犯罪をした疑いのある人に対して警察官が同行を要求し、要求に応じれば警察署などに一緒に行くことです。任意同行に応じるかは自由であり、逮捕とは異なり強制ではありません。同行を拒否されるケースもあります。
もっとも、任意同行を拒む行為そのものが犯行への関与を疑わせます。任意同行を繰り返し拒んだ結果、逮捕に至るケースも多いです。また、任意同行により事情聴取をした結果容疑が固まり、逮捕に至るケースもよくあります。
逮捕の種類
身体拘束が必要だと判断されれば、犯人が逮捕されます。
逮捕には、以下の3種類があります。
通常逮捕 | 逮捕状の発布を受けてする、一般的な逮捕 |
緊急逮捕 | 急速を要し、逮捕状を求める時間がないときにする逮捕 |
現行犯逮捕 | 犯行の最中や犯行直後に、逮捕状なしでする逮捕 |
通常逮捕は、捜査機関が裁判所から逮捕状の発布を受けたうえで行う逮捕です(刑事訴訟法199条)。逮捕するには裁判官による事前審査を受けなければならないとされ(憲法33条)、通常逮捕は逮捕の原則的な形態になります。逮捕する際には、原則として逮捕状を示さなければなりません(刑事訴訟法201条1項)。
緊急逮捕とは、裁判官に逮捕状を求める時間的余裕がない場合に、逮捕状なしで行う逮捕です(刑事訴訟法210条)。緊急逮捕ができるのは「死刑」「無期懲役・禁錮」「3年以上の懲役・禁錮」といった重い刑罰が科される犯罪に限られます。緊急逮捕をした後には、直ちに裁判官に逮捕状を求める手続きをしなければなりません。
現行犯逮捕とは、犯行中や犯行直後になされる逮捕をいいます(刑事訴訟法213条)。犯罪をしたことが明らかであり、時間的な余裕もないため、現行犯逮捕の際に逮捕状は不要です。告訴を受けてする逮捕では犯行から時間が経過しているため、現行犯逮捕にはなりません。
逮捕後48時間以内に検察官へ
逮捕は一般的に警察によってなされます。逮捕したとき、警察は犯行の内容や弁護士をつけられる旨を告げたうえで、犯人に弁解の機会を与えなければなりません。
逮捕中は、警察による取り調べなどが行われます。逮捕してから48時間以内に、警察は検察に犯人の身柄を送致しなければなりません(刑事訴訟法203条1項)。
警察から身柄の送致を受けた検察官は、弁解の機会を与えたうえで、24時間以内に裁判所に対して勾留請求か公訴提起(起訴)をしなければなりません(刑事訴訟法205条)。どちらもしない場合には釈放となります。実際には多くのケースで勾留請求がなされ、犯人の身柄拘束が続きます。
最長20日間の勾留後、起訴・不起訴が決まる
逮捕に引き続き勾留が認められると、犯人は10日間身柄を拘束され、取り調べなどの捜査が進められます。勾留期間は10日間まで延長でき、合わせて最大20日間です。
検察官は、勾留期間中に捜査を進め、犯人を起訴して裁判にかけるか、不起訴として罪に問わないかを決定します。
不起訴処分になった場合
不起訴になった場合には犯人は釈放され、罪には問われません。
不起訴となる理由は様々ですが、主な理由は以下の通りです。
嫌疑なし | 真犯人が判明したなど、犯行をしていないと明らかになった |
嫌疑不十分 | 犯行の疑いは残るが、証拠が不十分だった |
起訴猶予 | 犯行が明らかで証拠もあるが、罪に問う必要がないと判断された |
特に多いのが、起訴猶予のケースです。犯行が明らかで十分な証拠があっても、検察官の裁量によって起訴猶予となる場合があります。起訴猶予になりやすいのは、被害が軽いケースや示談が成立したケースなどです。
なお、親告罪では告訴がないと起訴できないため、告訴を取り下げると必ず不起訴になります。告訴の取り下げをするかは慎重に検討してください。
起訴処分になった場合
起訴された場合には、通常はそのまま裁判まで勾留が続きます。犯人からの保釈請求が認められて、釈放されるケースもあります。裁判は公開の法廷でなされ、最終的には判決がくだされる流れです。
もっとも、100万円以下の罰金となる事件においては、略式起訴になる可能性もあります。略式起訴の場合には書面審査で刑罰が決まり、犯人が罰金を納付すればすぐに釈放されます。
告訴後、犯人が逮捕される場合とは?
ここまで解説してきたのは、告訴の後に犯人が逮捕された場合の流れです。もっとも実際には、逮捕されずに在宅で捜査が進められるケースもあります。犯行の疑いがあったとしても、逮捕されるとは限らないのです。
では、告訴の後に逮捕されるか否かは、いかなる事情から決まるのでしょうか?
加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合
逮捕されるのは、加害者に逃亡や証拠隠滅をするおそれがある場合です。逃亡や証拠隠滅の可能性があるときには、身柄を拘束して捜査する必要性が高いといえます。
以下の事情があると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されやすいです。
- 定職に就いていない
- 家族がいない
- 犯行を否認している
- 任意同行を理由なく繰り返し拒否する
- 犯した罪が重い
これらの事情を総合的に考慮して、逮捕するか在宅で捜査をするかが判断されます。
もちろん、すべての要素を満たす必要はありません。たとえば殺人・強盗などの重大犯罪では、職に就いていて家族がいたとしても、逮捕されます。
ただし「30万円以下の罰金、拘留、科料」しか科されない軽い罪で逮捕されるのは、住居が定まっていない、あるいは正当な理由なく任意同行に応じないケースに限られます。
在宅事件になれば逮捕されない
逮捕がなされずに、加害者が在宅のまま捜査が進むケースもあります。
最新のデータによると、逮捕される割合を表す「身柄率」は34.1%であり、おおむね3割台で推移しています(参考:令和4年版犯罪白書|法務省)。反対にいうと在宅事件の割合は6~7割であり、在宅で捜査がなされるケースの方が、逮捕されるケースよりも多いです。
在宅事件になったときには、逮捕・勾留がなされた場合とは異なり、時間制限はかかりません。逮捕72時間、勾留20日間といった制限に関係なく捜査が進められるため、起訴・不起訴の判断まで時間がかかるケースも多いです。
したがって、逮捕されるか在宅になるかは、捜査の流れやスピードに大きな影響を及ぼします。
告訴を取り下げた場合
告訴を取り下げたときには、親告罪であれば起訴ができません。逮捕・勾留されていたとしても不起訴処分となり、加害者は釈放されます。
親告罪以外の場合には、告訴がなくても起訴が可能です。もっとも、告訴は処罰を求める意思表示である以上、取り下げにより起訴・不起訴の判断に大きな影響を与えます。告訴の取り下げによって、加害者が逮捕されなくなったり、不起訴になって釈放されたりする可能性が高まります。
告訴の取り下げは加害者の処分の行方を大きく左右するため、慎重に判断してください。
刑事告訴後の流れでよくある質問
刑事告訴後の流れについて、よくいただく質問と回答をまとめました。
逮捕されたら相手の会社や家族にも伝わりますか?
会社が事件に関係なければ、逮捕されたからといって加害者の会社に直接連絡がいくわけではありません。もっとも、無断欠勤が続いたり実名報道がなされたりすれば、会社側が逮捕の事実を把握するでしょう。勾留までなされて身体拘束が長引けば、会社に伝わる可能性がより高いです。犯行内容によっては、会社に伝わった後に解雇などの処分がくだされる場合もあります。
家族については、警察や加害者についた弁護士から連絡があって伝わるケースが多いです。
逮捕された後に出てくることはありますか?
逮捕されても、勾留請求がされなかったり、勾留後に不起訴処分になったりして釈放される可能性があります。勾留後に起訴されると勾留が続きますが、保釈請求が認められるケースも少なくありません。
加害者が外に出てきたときに注意が必要なのが、加害者からの接触です。加害者が逆恨みにより危害を加えてくるおそれもあり、非常に危険です。加害者から連絡があっても反応せず、すぐに警察や弁護士に相談してください。
どのくらいの期間逮捕されますか?
逮捕には警察で48時間、検察で24時間という期間制限があります。逮捕は最大で72時間です。
逮捕に引き続いて勾留がなされたときには、原則10日間で、延長10日間と合わせて最大で20日間です。逮捕と合計で、最大23日間の身体拘束になります。
勾留期間が終わるまでに起訴されるか否かが判断され、起訴されれば身体拘束が続きます。
示談をした場合どうなるの?
示談をして告訴を取り下げた場合には、加害者が不起訴になる可能性が高まります。
特に、親告罪で告訴を取り下げれば必ず不起訴です。
親告罪以外であっても、示談は検察官による起訴・不起訴の判断に大きな影響を与えます。犯行が重大であれば示談があっても起訴される可能性は残るものの、裁判の判決では刑を軽くする方向で考慮されます。
いずれにせよ、示談の有無は加害者の処分を決めるにあたって大きな要素です。判断は慎重にしてください。
勾留されている犯人は、起訴後に必ず保釈されるの?
たしかに、起訴後に犯人が保釈される可能性はあります。しかし、犯罪が重い場合や逃亡・証拠隠滅が疑われる場合などには、保釈請求は認められません。また、身元引受人や保証金を用意できないと保釈されません。
最新のデータによると、起訴後に勾留された犯人の保釈率は31.4%です(参考:令和4年版犯罪白書|法務省)。以前よりは増加しているものの、保釈されるケースの方が少ないといえます。
刑事告訴に関するご相談はリード法律事務所へ
ここまで、刑事告訴後の流れについて解説してきました。刑事告訴は逮捕や起訴につながる可能性があり、有効な手段です。もっとも、警察が受理を拒否するなど、犯人処罰のために十分な対応をしてくれないケースもあります。
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