刑事告訴の基礎知識

最終更新日:2023.05.31

【被害者向け】刑事告訴に関する専門用語を弁護士がわかりやすく解説!

犯罪被害にあってしまった場合、警察に知らせるだけで警察が動いてくれると思っている方も多いでしょう。しかし、実際には被害者側が行動を起こさないと、調査してもらえないことの方が多いのです。

この記事では加害者を刑事告訴し、法的な処罰を与えてもらいたいとお考えの被害者の方向けに、刑事告訴に関する専門用語をわかりやすく解説いたします。

刑事告訴に関する専門用語〜告訴前〜

加害者を法的に裁いてもらうためには、まず犯罪被害にあったということを司法警察・検察官などが属する国の捜査機関に伝える必要があります。それが刑事告訴です。告訴を行える人を告訴権者と呼びます。

告訴権者の定義や刑事告訴をするまでに必要な流れ、またその際に頻出する専門用語について解説いたします。

告訴権者

まず、告訴権者とは告訴権を持つ人、つまり刑事事件の被害を受けた人(被害者)・またはその法定代理人のことをさします。法定代理人には親権者や未成年後見人、成年後見人が含まれるため、被害者が未成年者の場合は親権者や未成年後見人にも告訴する権利があるということです。

被害者が成人している場合は、被害者本人のみが告訴権者となります。被害者の家族や親族が代わりに告訴することはできません。被害者が亡くなっている場合は、被害者の遺族である家族が告訴権者となりますが、生前に被害者が「告訴を希望しない」と明言していた場合には告訴できません。

また、被害者が複数人いる場合は、各被害者が告訴権者となり告訴権を有するため、被害者各自が告訴を行うことが可能です。

犯罪被害にあった人告訴権者
未成年被害者本人・法定代理人
成人被害者本人
亡くなっている場合被害者の配偶者・直系の親族・兄弟姉妹

告訴状

告訴権者が告訴をするためには、捜査機関に口頭または書面で犯罪被害の事実を申告する必要があります。口頭で行われることは稀で、一般的には事前に準備した書面を捜査機関に提出し告訴します。この際に作成する書面が告訴状です。

書式や記載事項は決められていませんが、どういった被害を受けたのか、刑事事件としての概要や加害者の氏名や住所、証拠などを具体的な情報を記載し、犯罪が成立していることを証明する必要があります。

法律上は、告訴権者が告訴状を提出した場合、捜査機関である警察は受理する義務がありますが、受理すると捜査を開始しなくてはいけなくなるため、不備があると告訴状を受理してもらえないのが実情です。そのため、告訴権者の代理人として弁護士が告訴状を作成し、捜査機関に提出するのが確実な方法とされています。

被害届

被害届とは犯罪被害にあったという事実を捜査機関に知らせる書面です。被害届には決められた書式があるため、最寄りの交番や警察署に行き書類をもらい、記入します。

捜査機関に犯罪被害にあったことを届け出るという意味では告訴状と同じですが、被害届は「犯罪にあった事実を伝える」ためだけの書面です。加害者である犯人に法的処罰を求める効果はなく、受理した捜査機関側にも捜査義務は生じません。

親告罪

親告罪とは被害者が告訴しない限り加害者が罪に問われない犯罪です。犯罪にあった事実がおおやけになることで、被害者が不利益をこうむったり被害者のプライバシーが侵害される恐れがある事件や親族間での刑事トラブルなどが含まれます。

親告罪には不注意により人に怪我をさせてしまった時に適用される過失傷害罪や大勢の人前で根拠なく他人を侮辱した時に適用される侮辱罪などがあります。

刑事告訴に関する専門用語〜告訴後〜

犯罪被害にあった場合、告訴権者である被害者が告訴状を作成し捜査機関に提出、告訴が受理された後は、刑事裁判に向けた捜査が開始されます。

ここからは告訴後に頻出する専門用語について詳しく解説いたします。

起訴

加害者を告訴する場合、刑事事件として裁判を起こす「起訴」を望む人が多いでしょう。つまり「起訴」できるように告訴するのが肝心ということです。

起訴とは加害者に処罰を下すために裁判所に対し訴えを起こすこと(公訴提起)です。ここで訴えを起こすのは告訴権者ではなく検察官になります。

告訴状が受理されると必ず捜査が開始され、捜査の過程で検察官が加害者が有罪であると判断した場合に起訴し、刑事裁判が始まります。略式起訴の場合は、裁判を行わずに簡易裁判所からの略式命令が判決となり、処罰が下されます。

証拠が不十分な場合など、加害者が有罪である確証がない場合は、「不起訴」になる場合もあります。不起訴については後述する「刑事告訴に関する専門用語〜不起訴〜」で詳しく解説いたします。

被疑者と被告人

法的には、加害者のことを被疑者、あるいは被告人と呼びます。告訴前は「被疑者」、起訴後からは「被告人」に呼び名が変化します。ニュースで使われる「容疑者」や「被告」という呼び名は、いわゆるマスコミ用語ですので、ここでは使用されません。

告訴前の加害者=被疑者、告訴が受理され起訴されれば加害者=被告人になるということだけ覚えておけば大丈夫です。

逮捕

告訴が受理されると、加害者(被疑者)が逮捕される可能性があります。逮捕とは、警察などの捜査機関が被疑者を強制的に拘束することで、逃亡・証拠隠滅などを防ぐために行います。告訴による刑事事件の捜査では、捜査機関が裁判所に逮捕状の発布を請求し、裁判官が逮捕を許可した場合に行われます。逮捕されると、一般的には、警察署内の留置場に収容されます。

逮捕で拘束できる時間は、警察で48時間、検察で24時間、合わせて最長72時間と決められています。原則、逮捕後72時間以内に起訴・不起訴を決める必要がありますが、72時間以内に被疑者が罪を認めない場合などは、検察が裁判所に勾留請求を行い、拘束期間を最大20日延長することが可能です。

勾留

逮捕後、加害者(被疑者)が検察に移されてからも罪を認めない場合などは、裁判所に勾留請求が出されます。裁判官が勾留を許可すると10日の勾留を行うことができ、期間終了後は必要に応じてさらに10日間延長することが可能です。つまり、検察が起訴・不起訴を決めるまで、最長で23日間の身体的勾留ができるということです。

検察官は勾留期間中に起訴か不起訴かを決定します。不起訴処分になれば、ただちに釈放されるでしょう。

刑事告訴に関する専門用語〜不起訴〜

告訴状が受理されると、捜査機関が捜査を開始しますが、告訴状が受理されたからといって、必ずしも起訴されるとは限りません。万が一、起訴されなかった場合は、加害者に刑事的処罰を受けさせることは不可能になってしまいます。

不起訴になった場合に頻出する専門用語について解説いたします。

不起訴処分

捜査機関が告訴状に基づき捜査をしたものの、被疑者(加害者)を起訴しないことを不起訴処分といいます。不起訴処分になると、被疑者は起訴されないため、刑事処罰を受けることはなく、捜査機関に前歴(犯罪の嫌疑をかけられ、捜査対象となったという記録)は残るものの、前科はつきません。また、逮捕・勾留されていた場合はただちに保釈されます。

不起訴処分になる理由には、嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予・示談などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

嫌疑なし

嫌疑なしの場合は、被疑者が犯罪を犯していなかった場合や被疑者を間違えて逮捕した場合などに使用される不起訴理由です。嫌疑なしで不起訴となった被疑者は、罪を犯していない、ということになります。

嫌疑不十分

嫌疑不十分は、被疑者を有罪だと断定するのに証拠が足りない時に使用される不起訴理由です。捜査機関も被疑者が罪を犯している可能性があると考えているが、証拠が不十分で、起訴は難しいというシチュエーションです。

日本では「無罪推定の原則」があるため、十分な証拠がない人を起訴するのは大変難しくなっています。

起訴猶予

起訴猶予とは、十分な証拠があり有罪だと考えられる被疑者を起訴しないことです。嫌疑なしや嫌疑不十分と違い、検察官も被疑者が有罪だと考えていますが、被疑者の性格や年齢、境遇などを考慮し、起訴して裁判するまでの必要はないと判断した場合に起訴猶予にします。

初犯の場合や軽犯罪、または示談の有無などが影響します。検察官が自らの裁量で決める事が可能です。

示談

刑事事件における示談とは、裁判をせず当事者間で問題を解決する話し合いのことを指します。主に加害者側が和解を求め、慰謝料や解決金、被害額を支払う形で被害者の許しを求める交渉が行われます。

刑事事件の場合、告訴状が受理された後に示談を申し込まれることが多いでしょう。被害者側が謝罪を受け入れ金銭を受け取る代わりに、告訴状や被害届を取り下げることを打診されます。示談に応じると、和解が成立したとみなされるため、加害者が罪を犯していたとしても、起訴猶予になる可能性が高いでしょう。また、親告罪の場合は、示談により告訴を取り下げると起訴される可能性は0になります。

告訴を取り下げた場合、同じ罪状で再告訴はできません。

検察審査会への不服申立

被疑者が不起訴処分になった場合、検察審査会へ不服申立をすることができます。

日本では検察官のみが起訴・不起訴の判断をする権利を持つ起訴独占主義が採用されており、検察官の判断が適切であったかどうかを審査する組織として、1948年に検察審査会が発足しました。検察審査会は選挙権を持つ国民の中から選ばれた11人で構成される組織で、各地方裁判所など全国に165箇所あります。現在までに、延べ18万人以上の被疑者が審査されています。

不起訴処分の判断に不服がある場合、管轄の検察審査会に審査申立書を提出し、不起訴処分が正しい判断であったのか審査してもらいます。審査の結果が起訴相当または不起訴不当となれば、再度検察による捜査が開始され、捜査結果により改めて起訴・不起訴が言い渡されます。

刑事告訴に関する専門用語〜起訴後〜

告訴状が受理され、捜査機関が起訴すると、刑事事件として裁判所で裁かれることになります。

起訴には、刑事事件として法廷で裁判を行うことを公判請求と刑事裁判を省略し書面で刑罰を科す略式請求の2種類があります。

違いについて以下で詳しく解説いたします。

公判請求

加害者(被告人)が裁判所に出頭し、法廷で審理を求めます。刑事裁判ですので、被害者(告訴権者)は裁判に関わる必要はありません。ただし、一定の刑事事件の場合は、被害者参加制度を利用し、意見陳述や被告人質問を行うこともできます。

一連の審理が終了すると、裁判官が判決を下し、有罪・無罪が言い渡され、有罪の場合は刑罰も同時に決定します。判決に不服がある場合、被告人と検察官が控訴することができます。量刑に不服があったとしても、被害者の意思で控訴することはできません

略式請求

略式請求とは、刑事裁判を開かず、検察官が作成した起訴状に基づいて簡易裁判所が処罰内容を書面で決定する方法です。加害者(被疑者)が罪を認め、なおかつ100万円以下の罰金・科料に相当する事件の場合に請求されます。禁固刑や懲役刑などに相当する場合や被疑者が罪を否認している場合は請求できません。

略式請求は簡易的な処罰ですが、略式請求になった場合は被疑者が必ず有罪になるのが特徴です。

まずは弁護士に相談を!

犯罪被害にあった時には、なるべく早く弁護士に依頼し告訴することで、速やかに加害者に刑事処罰を与えることができます。しかし、告訴から起訴、裁判まではさまざまな手順があり、どう動くべきなのかわからないという方も多いでしょう。

法律問題は専門用語が多いため、自分一人で解決するのは大変です。

当事務所では、丁寧にヒアリングをすることで、捜査機関が捜査・起訴しやすいよう告訴状を作成し、問題解決に向け親身なサポートをいたします。わからない事があれば、どんなことでもお気軽にお尋ねください。弁護士が丁寧に解説いたします。

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