横領被害にあったら

最終更新日:2024.05.16

横領されたお金は返ってくる?返済されやすいケースと方法を弁護士が解説

「横領されたお金を取り返したい」とお考えでしょうか?

残念ながら、横領されたお金は使い切られており、民事訴訟をしても取り返せないケースが多いです。もっとも、刑事告訴をすれば回収できる可能性を高められます。特に加害者の社会的地位が高いときには、前科がついた際の不利益をおそれて返金に応じやすいです。

この記事では、横領されたお金が返済されやすいケースやとるべき方法などについて解説しています。横領の被害を受け、加害者からお金を取り返したいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。

横領・着服に成立する犯罪

そもそも横領とは、他人から管理を任された財産を自分の物にする行為です。着服と似た意味ですが、横領は法律用語であるのに対し、着服は一般的な言葉であるという違いがあります。横領と着服の違いについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考記事:横領と着服の違いとは?弁護士が事例でわかりやすく解説

横領・着服をすると、加害者の立場によって単純横領罪や業務上横領罪が成立します。まずは、両罪について簡単に解説します。

単純横領罪

単純横領罪は、個人的に管理を任されている財産を自分の物にする犯罪です。自分の懐に入れていなくても、本来は所有者でないとできないはずの行為をしていれば罪になります。

例としては以下が挙げられます。

  • 友人から管理を任されたお金を自分のギャンブルに使う
  • 借りたレンタカーを返却しないで使い続ける
  • 知人から預かったゲームソフトを売却する
  • 個人的に預かった腕時計を質に入れる

単純横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。罰金刑は規定されておらず、刑事裁判で有罪になれば必ず懲役刑が科されます。

単純横領罪について詳しくは、以下の記事を参照してください。

参考記事:【被害者向け】横領罪とは?類型と量刑、構成要件について解説

業務上横領罪

業務上横領罪は、業務上管理を任されている財産を自分の物にする犯罪です。主に仕事として管理を任されていた財産を着服などしたケースで成立します。

例としては以下が挙げられます。

  • クリーニング店の店主が、客から預かった洋服を売却する
  • 時計店を営む人が、修理のために預かった腕時計を質に入れる
  • 企業の経理担当者が、会社の口座から自己名義の口座に振り込みをする
  • 会社の集金担当者が、取引先から集めたお金を自分の懐に入れる

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。単純横領罪よりも責任が重く、被害額が大きいと、執行猶予がつかず実刑判決になるケースもあります。

業務上横領罪について詳しくは、以下の記事を参照してください。

参考記事:業務上横領罪とは?量刑と構成要件、背任罪との違いについて被害者向けに解説

横領されたお金は返ってくる?

では、横領されたお金は返ってくるのでしょうか?

民事訴訟をした場合と刑事告訴をした場合に分けて、返金される可能性を解説します。

使い切っていると民事訴訟で請求しても回収できない

横領されたお金を返してもらう方法として、すぐに思いつくのが民事訴訟ではないでしょうか。しかし、民事訴訟をしたとしても実際に返金を受けられる可能性は低いです。

証拠が揃っていて民事訴訟で勝訴しても、自動的に支払ってもらえるわけではありません。判決を無視して加害者が支払いに応じなければ、強制執行が必要です。もっとも、相手にめぼしい財産がなければ、執行は空振りに終わってしまいます。わざわざ時間とお金をかけて勝訴しても、判決は絵に描いた餅になるのです。

横領に手を染める人は、多くのケースでお金に困った結果として犯行に及びます。横領で得たお金も生活費やギャンブルなどですぐに使ってしまい、手元には残っていない可能性が高いです。民事訴訟をしても結局回収できず、被害者が泣き寝入りせざるを得なくなってしまいます。

刑事告訴すると返金されやすい

加害者に法的責任を追及する方法としては、民事訴訟の他に刑事告訴があります。刑事告訴をすると、返金される可能性を高められます。

告訴する意味

刑事告訴は、犯罪被害を受けた事実と犯人の処罰を望む意思を捜査機関に伝える行為です。本来は刑罰を求めるために行いますが、加害者が示談を申し出てきて返金を受けられるケースがあります。

捜査機関に告訴がなされると、警察や検察が捜査を進めるため、刑事告訴を受けた加害者は、刑事裁判になって刑罰を科され得る状態に置かれます。とりわけ、被害金額が400万円を超えると、犯人が初犯であっても執行猶予がつかない実刑となる可能性が高いです。実刑となれば犯人は数年間、刑務所に収監されることになります。

犯人が刑務所行きを逃れるための方法は一つしかなく、それが被害者と「示談」を結ぶことです。加害者からすると、示談せずに実刑判決を受けて刑務所に収監されるか、騙し取ったお金を返すして被害者と示談するかというの究極の二択を迫られます。こちらの要望に応じなければ犯人は刑務所に収監される可能性があるので、交渉に際して極めて強力な主導権を取ることができ、いわば急所を握った状態での交渉が展開できるのです。このように、刑事制裁を背景とした交渉が可能な点に、刑事告訴の強みがあるのです。

この際、本人はお金を持っていなくても、示談金を用意するために親族などから借金をする加害者もいます。

民事訴訟では回収できない事案でも、刑事告訴をしたうえで示談交渉をすれば、結果的に返金を受ける可能性を高められるのです。

横領罪の刑事告訴については、以下の記事も合わせて参考にしてください。

参考記事:従業員による業務上横領は刑事告訴すべき?メリット・デメリットを解説

横領での告訴は特に効果的

横領の場合は、他の財産犯と比べて告訴が効果的といえます。

横領では、財産の管理を任されている中で、魔が差して犯行に及ぶケースが多いです。場当たり的に犯行を重ねるのであり、加害者は発覚するリスクを十分に認識していません。証拠も残りやすいです。告訴を受けてようやく事の重大さに気がつき、処罰されるのを避けるために示談交渉に応じてきます。

他の財産犯、たとえば詐欺では、多くのケースで告訴されても責任を追及されづらいように計画的に犯行に及びます。あらかじめ逃亡の準備をする、少額を返還して「全額返すつもりだった」と弁明できるようにするなど、手口が巧妙です。検察官としても、無罪になるリスクを考えて起訴しづらい状況になります。刑事責任を追及されない状態であれば、告訴を受けても加害者は示談交渉や返金には応じてくれません。

他の財産犯よりも計画性のない横領に対しては、告訴が効きやすいといえるでしょう。

横領されたお金が返ってきやすいケース

横領されたお金を返してもらうためには、刑事告訴が有効な手段といえます。

特に返金されやすいのは、前科がつくことにより加害者に大きな社会的・経済的不利益が生じるケースです。平たくいえば「失うものが大きい」場合に、前科がつくのをおそれて、加害者が示談交渉や返金に応じやすくなります。

具体的には、以下のケースで横領されたお金が返ってきやすいです。

加害者が既婚者で子どもがいる

加害者が結婚して家庭を持っている場合には、前科を避けるために返金に応じやすいです。

横領が発覚して刑事裁判にまでなれば、配偶者から見限られて離婚される可能性があります。さらに子どもがいる加害者は、実刑判決がくだされて刑務所に収監され、子どもと長期間会えなくなる事態は避けたいと考えるはずです。特に子どもが幼いときは「刑務所に入るのだけは嫌だ」として、必死にお金を工面して返金しようとするでしょう。

反対に、独身で守るべき家庭がなければ、返金するモチベーションは湧きづらいかもしれません。

加害者が正社員

加害者が正社員のときにも返金を受けやすいです。

横領が発覚して前科までつけば、会社を解雇され転職も難しくなります。一般的に正社員は収入が多いので、今後働けなくなった場合のダメージも大きいです。正社員にとって前科がつく不利益は大きく、返金して示談に持ち込もうとしやすいといえます。また、大企業勤務である、役職が上位であるなど、収入が高ければ高いほど現実的にお金を用意しやすいでしょう。

対して無職・フリーター・パート・零細の個人事業主などであれば、解雇を気にする必要がなく手元にお金が少ないため、返金には応じづらいです。

親族に資産がある

本人が無職や学生などで財産を持っていなくても、親族が高い社会的地位や資産を有していればお金を用意してくれるケースがあります。

本人はもちろん、親族にとっても前科がつくのは一大事です。世間体や本人の今後の人生のために、代わりに支払ってくれる可能性は十分にあるでしょう。

民事訴訟では、基本的に本人の財産からしか回収できません。刑事告訴をすれば、親族の財産から返金を受けられるケースもあります。

従業員に業務上横領をされたら?

信頼していた従業員に業務上横領をされ、対応にお困りの方も多いでしょう。会社で横領が発生した際の対処法について詳しくは以下の記事で解説していますが、ここでは簡単に流れをご説明します。

参考記事:業務上横領が起きたらどうすればいい?会社の対応について弁護士が解説

証拠を集める

社内で横領の疑いが生じたときには、まずは証拠を集めましょう。いかなる措置をとるにせよ、証拠は不可欠となります。冤罪を防ぐためにも、証拠収集は非常に重要です。

横領の手口は多岐にわたるため、証拠になり得るものはケースバイケースです。例としては、以下が挙げられます。

  • 口座の入出金記録
  • 加害者が使用しているPCに残っている記録
  • 店舗の防犯カメラ映像
  • 取引先に渡した領収書

客観的な証拠を集めるとともに、従業員など周囲の関係者からの事情聴取も進めましょう。証拠を隠滅されないために、加害者本人に悟られないように注意してください。

社内の横領における証拠収集方法について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考記事:業務上横領が社内で起きた際の証拠の集め方・注意点を弁護士が解説

民事上の返還請求や刑事告訴をする

証拠が揃ったら本人への事情聴取を行います。認めるか否かにかかわらず、言い分は記録にとっておきましょう。

本人の対応を見て、民事上の返還請求や刑事告訴を検討します。

事件の影響が社外に広まるのをおそれて刑事告訴をためらう方もいらっしゃいます。とはいえ、被害の返還を求めるには単なる民事上の交渉や民事訴訟では不十分です。より強力な手段である刑事告訴も含めてご検討ください。

社内処分を決定する

民事・刑事上の責任とは別に、社内での処分も進めましょう。本人への制裁はもちろん、他の従業員にも横領を許さない姿勢を示し、再発防止につなげるためです。

業務上横領という犯罪行為に及んでいる以上、懲戒解雇が相当なケースが多いでしょう。とはいえ、「解雇は無効だ」と加害者が主張して争いになる事態を想定しなければなりません。社内処分は、就業規則に懲戒規定がある点を確認したうえで、手続きを踏んで慎重に行う必要があります。

横領・業務上横領の被害に遭われた方はリード法律事務所までご相談ください

ここまで、横領の被害に遭われた方に向けて、返済されやすいケースや方法を中心に解説してきました。

民事訴訟をしても返還が見込めないケースでは、刑事告訴が有効です。加害者が家庭を持っている、正社員であるなど、前科がつくと大きな社会的・経済的な不利益が生じる場合には、特に刑事告訴が効果的といえます。

横領の被害を受けた方は、リード法律事務所までご相談ください。

被害者が刑事告訴をしようとしても、「証拠が足りない」「民事不介入」などと理由をつけて、警察は簡単には受理してくれません。当事務所は犯罪被害者のために活動しており、証拠の整理、告訴状の作成、警察への提出、加害者との交渉など、刑事告訴をトータルでサポートしています。横領で刑事告訴を受理させた事例も多数ございます。

「横領の被害を取り返したい」とお考えの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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