横領被害にあったら

最終更新日:2023.11.06

【被害者向け】横領罪とは?類型と量刑、構成要件について解説

「会社のお金を従業員が私的に使った」「貸したものを勝手に売却された」このような被害に遭った場合は、横領罪に該当し、刑事告訴できる可能性があります。

横領罪には単純横領罪や業務上横領罪など複数の類型があり、また窃盗罪・背任罪・詐欺罪など横領罪とまぎらわしい犯罪が複数あるため、違いを理解をしておくと告訴をする際にも役に立つでしょう。

この記事では、横領罪の類型や量刑、構成要件、窃盗罪や背任罪との違いなど、横領罪について、わかりやすく解説いたします。

横領罪とは

横領とは自己が他人の財物を占有(所持・支配している状態)している時に、その物を自分の財物のように利用・処分をすることを意味します。使い込み持ち逃げ借りパクなどと言われるような「人の持ち物を横取りする行為」が該当します。ニュースや新聞などでは、横領行為のことを「着服」と表現することもあります。

横領罪は相手の信頼を裏切り、不当に利益を得る犯罪です。「不法領得の意思」があること、つまり他人の物を占有している人が、権限がないのにも関わらず所有者のように財物を不法に利用・処分し、利益を得ようとした意思がはっきりと表れた時点で成立するとされています。

▼横領と着服の違いついては、こちらの記事も参考にして下さい。

横領と着服の違いとは?弁護士が事例でわかりやすく解説

横領罪の類型と量刑

横領罪は、横領した物の種類や性質により以下の3類型に分けられます。

  1. 単純横領罪(刑法第252条)
  2. 業務上横領罪(刑法第253条)
  3. 遺失物等横領罪(刑法第254条)

それぞれ、罪状が適用される条件と量刑について、詳しく解説いたします。

単純横領罪(刑法第252条)

横領罪は他人から委託され、自分が占有している他人の財産を不正に処分した場合に成立します。業務上横領罪や遺失物等横領罪と区別するために、単純横領罪と呼ばれています。

単純横領罪に該当する犯罪例
・知人から預かったお金を自分の口座で保管し、そのお金を知人に無断で口座から引き出し使った
・他人から預かっている物をフリマアプリに出品・販売し、借金の返済費用に充当した
・レンタルサービスで借りた品物を返却せずに所持し続けている
・車をローンで購入し、ローン会社が所有権を有する車を、ローン完済する前に無断で売却した

後述する遺失物等横領罪と異なり相手からの信頼を得て自身が占有する財物を、着服・持ち逃げ・処分した場合に適用されます。そのため後述する業務上横領罪とまとめて委託物横領罪とも呼ばれます。

横領罪の法定刑は5年以下の懲役、公訴時効は5年とされています。罰金刑はありませんが、詐欺罪・窃盗罪よりは軽い処罰になります。

業務上横領罪(刑法第253条)

業務上横領罪は、単純横領罪と同じように、他人から委託され、自分が占有している他人の財産を不正に処分した場合に適用されます。単純横領罪との大きな違いは、「業務」として他人の財物を占有している人が横領した場合に適用されるという点です。質屋や運送会社、クリーニング業者など、人の財物を預かる業務を行う場合や、公金を補完する公務員や金銭を取り扱う業務を請け負う会社員・銀行員などが預かっている財物を勝手に着服したり処分した場合、業務上横領罪となります。

業務上横領罪に該当する犯罪例
・売上金を管理する従業員が、売上額を事実より少なく申告し、差額を領得した
・従業員が架空の請求書を作成し、その資金をローン返済に当て私的に費消した
・クリーニング店従業員が、客から預かった衣類をフリマアプリで転売した
・修理品として他人から預かっている時計を質屋に売却した

業務上横領罪は10年以下の懲役、公訴時効は7年です。「業務」として他人の財物を預かり管理していたという責任がある分、単純横領罪よりも重い刑罰が与えられています。

▼従業員の着服ついては、こちらの記事も参考にして下さい。

従業員が横領したら刑事告訴すべき?メリット・デメリットを解説

占有離脱物横領罪・遺失物等横領罪(刑法第254条)

占有離脱物横領罪は何らかの事情により他人の占有を離れたものを横領した場合に適用されます。遺失物等横領罪とも呼ばれます。

「何らかの事情により他人の占有を離れたもの」とは、①占有者の意思によらず占有を離れ、だれの占有にも属さないもの(遺失物・漂流物)②占有者に委託された訳ではないが占有するに至ったもの、上記2種に分けられます。①の例としては、道に落ちている財布や放置自転車など、②の例としては間違って多く渡されたおつり、誤配送された荷物などが当てはまります。

占有離脱物横領罪・遺失物等横領罪に該当する犯罪例
・公園のベンチに置かれていた鞄を持ち帰り、リサイクルストアに売却した
・放置自転車を持ち帰り、使用している
・間違えて届けられた荷物を開封し、処分してしまった

占有離脱物横領罪・遺失物等横領罪は、1年以下の懲役、または10万円以下の罰金、もしくは科料が処せられます。横領罪の中では占有者との信頼関係がなく、また他人の占有も侵害していないことから、業務上横領罪や単純横領罪よりも軽い処罰となります。

落とし物や忘れ物を拾った場合、遺失物法第4条により、速やかに警察署に届け出ることが義務付けられています。遺失物を警察に届けるために保有していた場合は、「不法領得の意思」がない為、横領罪に該当しません。しかし、遺失物を拾ったあとに、自分の所有物として扱ってしまうと、横領罪に該当します。

横領罪の構成要件

横領罪の構成要件は、他人の財物を占有する人が、委託信任関係を裏切り、故意に財物を自分のものとして所有者でなければできないような処分をすることです。物を売却し換金したり、財産を着服したりするだけでなく、廃棄処分も横領にあたります。

単純横領罪は、信頼関係に基づき財物を委託され占有する人が犯人となりますが、業務上横領罪の場合は、他人の財物を預かり占有・補完する業務を継続的に行う人が犯人となります。この場合も「不法領得の意思」の有無が構成要件に含まれるため、ずさんな管理により財物が紛失した場合などは処罰の対象となりません。伝票のねつ造をしていたり、売上金の数字を改ざんしていたり、「隠蔽の作為」が認められる場合は「不法領得の意思」があるとされ、業務上横領罪に該当すると考えられます。

横領罪は不法領得の意思が外部に発現した時点で既遂(犯罪が完成していること)となります。そのため「未遂」という概念はなく、着手時期も問題になりません。つまり、横領するという意思を持ち他人の財物を自身の預金口座に移したり、他人の財物をもったまま行方をくらまそうとした場合、その時点で横領罪の処罰対象となります。

横領罪は窃盗罪・詐欺罪・背任罪と見分けがつきにくい犯罪です。以下で構成要件と事例を比較し、違いを確認していきましょう。

横領罪と窃盗罪の違い

他人の財物を故意に盗み、自分の財物にすることを「窃盗」と言います。他人の財物を自分の所有物のように扱うという点で横領罪と似ていますが、横領罪は他人の財物が自己の占有下にある時に、その物を自分の所有物のように利用・処分をすることに対する刑罰であるのに対し、窃盗罪は他人が占有している財物を自分の所有物のように利用・処分することに対する刑罰です。つまり、窃盗罪は他人の占有も侵害するという点で横領罪と大きな違いがあります。

経理担当の社員が、自身が管理している売上金を着服するのは業務上横領罪になりますが、他の部署の従業員が経理担当社員が管理する売上金を盗んだ場合は窃盗罪になります。また、道に落ちていた財布を拾い、自分の物として利用するのは遺失物等横領罪になりますが、スーパーのレジで買い物客が目を離した隙にレジ台に置いてある財布を盗むのは窃盗罪になります。

窃盗罪は「他人の占有を侵害すること」が加わるため、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。

▼窃盗罪については、こちらの記事も参考にして下さい。

窃盗罪と強盗罪の違いとは?被害に遭ったらどうするべき?

横領罪と詐欺罪、背任罪の違い

横領罪と詐欺罪、背任罪は、他人を裏切り自己が利益を得るという点で共通点があります。

まず、詐欺罪は大まかに「他人をだまして財物を自分のものにする行為」を指します。そのため、他人を欺いて、他人が占有している財物を、自己の占有下に移すことが詐欺罪にあたります。最初から返す気が無いのにも関わらず、友人からお金を借り、返さない場合は詐欺罪に、返すつもりだったが返せなくなり持ち逃げした場合は横領罪に該当します。

詐欺罪は10年以下の懲役に処されます。

▼詐欺罪については、こちらの記事も参考にして下さい。

詐欺罪とは?量刑や詐欺手口の種類、被害に遭ったらすべきことを解説

背任罪は他者のために仕事をしている者が、自己(もしくは第三者)の利益のため、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、財産上の損害を加える犯罪です。横領罪と同じく委任信頼関係に背き、相手に財産上の損害を与える犯罪ですが、横領罪が「不法領得の意思」が構成要件に含まれるのに対し、背任罪は不法領得の意思の有無が問われません。自己が利益を得ない場合でも、損害を加える目的で任務に背く行為をした場合には背任罪に問われます。また、横領罪のように「財物」を得る行為だけでなく、情報流出などで損害を与える行為も罪に問われます。

相場より高い費用で下請け会社に仕事を回し、リベートを受け取った場合は背任罪になります。また、会社の顧客情報を競合会社に漏洩させた場合は背任罪に、自身が管理していた顧客データを会社の備品にコピーし、持ち出した場合は業務上横領罪に該当します。

▼詐欺罪については、こちらの記事も参考にして下さい。

背任罪・特別背任罪とは?構成要件や横領罪との違いなど、事例付きで解説

横領被害にあった時の対処法

横領被害にあった場合は、犯人を刑事告訴・民事訴訟することができます。刑事告訴することで、犯人の刑事責任を追求し、懲役刑や罰金刑などの刑事処罰を与えることができます。刑事告訴する場合は、告訴状を捜査機関に提出し、受理されてから捜査が行われ、起訴・不起訴が決まります。横領は親告罪ではないため、第三者による告発で刑事責任を追求することも可能です。

また、横領被害に遭った場合は民事訴訟により、横領被害で生じた損害額を請求することもできます。または刑事訴訟し、示談金として損害額を全額支払ってもらうことも可能です。

親族間で横領が行われた場合

犯人が配偶者や直系血族、同居の親族の場合、親族相盗例が準用されるため、親告罪となります。(刑法第244条、刑法255条)ただし成年後見人や未成年後見人による被後見人財産横領の場合は準用されません。これは成年後見人や未成年後見人がその財産を誠実に管理すべきという公的な法的義務を負っており、刑法第244条の「法は家庭に入らず」といった考えを準用するにはふさわしくないという判断です。

また、親族から預かっているクレジットカードを相手に無断で使用した場合、親族相盗例が準用されるため、横領罪に関しては親告罪となりますが、クレジットカード会社への詐欺罪には該当します。

横領罪の時効

横領罪にはそれぞれ時効があります。単純横領罪の公訴時効期間は5年、業務上横領罪の公訴時効期間は7年、遺失物横領罪の公訴時効期間は3年です。民事訴訟の損害賠償請求権の消滅時効は20年、犯人を知っている場合は3年間です。

公訴時効期間を過ぎると起訴できなくなりますので、告訴・告発ができなくなります。また民事訴訟の損害賠償請求権の消滅時効が過ぎた場合は損害賠償請求を起こせなくなります。

横領被害に遭ったら弁護士に相談を!

横領被害にあった場合は、犯人を刑事告訴・民事告訴することができます。刑事告訴することで、犯人の刑事責任を追求し、懲役刑や罰金刑などの刑事処罰を与えることができます。

刑事告訴する場合は、告訴状を捜査機関に提出し、受理されてから捜査が行われ、起訴・不起訴が決まります。横領は親告罪ではないため、第三者による告発で刑事責任を追求することも可能です。

また、横領被害に遭った場合は民事告訴により、横領被害で生じた損害額を請求することもできます。または刑事訴訟を起こし、示談金として損害額を全額支払ってもらうことも可能です。

リード法律事務所はこれまで多数の横領事件、業務上横領事件について刑事告訴のうえ事件を解決してきました。横領被害にあった場合は、お気軽にリード法律事務所までご相談ください。

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