最終更新日:2023.08.16
詐欺被害に遭ったら刑事告訴できる?事例と刑事告訴するメリットを解説
詐欺被害に遭ったときには、刑事告訴を検討しましょう。告訴すれば、刑罰や返金への道が開かれるメリットがあります。
もっとも、詐欺罪は立証が難しい犯罪です。証拠を確保したうえで、受理してもらえる告訴状を作成しなければなりません。
この記事では、詐欺罪で刑事告訴した事例や、刑事告訴のメリット・ポイントなどについて解説しています。詐欺被害に遭われた方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
詐欺罪とは?
詐欺罪は、他人から財産をだまし取る犯罪です。金銭や宝石などの財物をだまし取るほか、ウソをついて借金の返済を免れるなど、財産上の利益を得た場合にも詐欺罪が成立します。
特殊詐欺、結婚詐欺、投資詐欺など、様々な手口が知られています。ニュースで耳にする機会も多く、身近な犯罪のひとつといえるでしょう。
実際に、各種犯罪の中でも、詐欺罪の件数は多いです。認知件数、検挙人員ともに、刑法犯の6%近くを占めており、上位となっています。他の犯罪の多くが減少傾向にある中で、詐欺罪の件数はさほど減っていません(参考:令和4年版犯罪白書|法務省)。
法定刑は「10年以下の懲役」です。罰金刑は規定されておらず、重い部類の犯罪といえます。
参考記事:詐欺罪とは?量刑や詐欺手口の種類、被害に遭ったらすべきことを解説
詐欺罪は検挙率が低い
詐欺罪は、他の主要な犯罪と比べて検挙率が低いです。
強盗・傷害・暴行・脅迫・恐喝・横領・放火などの検挙率は8~9割程度あるにもかかわらず、詐欺は5割程度しかありません(参考:令和4年版犯罪白書|法務省)。被害が発覚しても、検挙に至る割合が低いということです。
詐欺罪の検挙率が低い原因としては、犯人が証拠を残さないようにしている点が挙げられます。たとえば特殊詐欺では、加害者の名前や住所などの情報がわからないうちに、金銭をだまし取られています。
犯人の特定に至らないケースが多いのが、詐欺罪の特徴です。したがって、証拠を集めるのが特に重要になります。
詐欺罪で刑事告訴した事例
詐欺罪は立証が難しいため、警察から「証拠が足りない」「民事の問題だ」と言われて告訴を受理してもらえないケースが多いです。
もっとも、弁護士に証拠収集から告訴状の作成、警察とのやりとりまで依頼すると、告訴を受理してもらいやすくなります。
当事務所にて詐欺罪で刑事告訴が受理された事例をご紹介します。
投資詐欺で刑事告訴が受理された事例
被害者は、加害者から投資運用を行う旨持ちかけられ、出資しました。当初は一定の配当があったものの、後に支払いが途絶えてしまいます。投資名目で出資を募るものの運用の実体がない、いわゆるポンジスキームと呼ばれる手法です。
被害者は当初警察に刑事告訴の相談に行きましたが、「証拠がない」「民事不介入」との理由で断られてしまいます。しかし、当事務所にて送金履歴やメール・LINEのやりとりを集めて警察を説得した結果、告訴は受理されました。
投資詐欺の事例においては、契約書が存在しないケースが多いでしょう。しかし、あきらめずに証拠を揃えて警察に理解してもらえば、告訴は可能です。
この事例について詳しくは、以下のページをご覧ください。
投資詐欺(ポンジスキーム)について詐欺罪で刑事告訴が受理された事例
架空の売買契約を締結させられた件で刑事告訴が受理された事例
被害者は、加害者から高級腕時計の購入を持ちかけられ代金を支払いましたが、腕時計の引き渡しや返金はなされず、連絡が途絶えてしまいます。だまされて架空の売買契約を締結させられたケースです。
被害者はまず警察に刑事告訴の相談に行きましたが、断られてしまいます。当事務所に依頼して当初は民事上の請求をしましたが、加害者と連絡がとれないうえ、めぼしい資産がなく強制執行も困難でした。
そこで刑事上の責任を追及することとし、告訴を受理させた結果、加害者は逮捕されます。逮捕後に示談の申出があり、最終的に購入資金の返還と慰謝料の支払いを受けられました。
詐欺被害に対しては、刑事・民事両面で責任追及が可能です。このケースのように、刑事告訴によって民事上の問題も解決する場合があります。
この事例について詳しくは、以下のページをご覧ください。
実体の無い架空の売買契約を締結させられたことについて詐欺罪で刑事告訴が認められた案件
詐欺被害に遭った際に、刑事告訴するメリット
詐欺被害に遭ったときに刑事告訴をすると、民事・刑事両面でメリットがあります。
加害者が返金する意欲を見せる可能性がある
刑事告訴によって、加害者が被害額を返金する場合があります。
告訴されて刑事処分が現実的になると、加害者としては重い処分を避けたいと考えるはずです。被害金を返還して告訴が取り下げられれば、不起訴処分になる、起訴されても執行猶予になるなど、刑事処分が軽くなる可能性が高まります。重い刑事処分を回避したい加害者に、告訴によって返金へのモチベーションが生じるのです。
加害者の手元にお金がないケースも多く、返金を受けられるとは限りません。また、重い刑事処分を望むときには、被害弁償を受けるかは慎重に検討する必要があります。
とはいえ、刑事告訴によって民事上の問題の解決にもつながるのは、大きなメリットです。
刑事処罰を科すことができる
告訴をすれば、刑事上の処罰を科せる可能性が高まります。そもそも刑事告訴とは、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、処罰を求めることです。告訴があった以上、捜査機関は刑事処分に向けて動き出さなければなりません。
詐欺罪は、公訴提起して刑事裁判にするために告訴が不可欠となる「親告罪」ではありません。しかし、バレないように行われる犯罪であるため、被害者が申告しなければ捜査機関に判明しないケースが多いです。加害者に刑事処分を科したいのであれば、告訴が有効な方法となります。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。被害額が大きいケースや、特殊詐欺など手口が悪質なケースでは、実刑判決がくだされます。
加害者に刑事処分を科したいのであれば、告訴を検討しましょう。
詐欺被害で刑事告訴するデメリットは?
詐欺被害について刑事告訴したからといって、特にデメリットはありません。
ただし、告訴しても被害金額が返ってくるわけではない点に注意してください。告訴した結果として起訴されて最終的に有罪判決が出ても、被害者に返金がなされるわけではありません。
たしかに、前述の通り、告訴を受けて加害者が示談したいと考え、被害弁償に積極的になる可能性はあります。しかし、あくまで可能性に過ぎず、加害者の手元にお金がないなど、現実には被害を一切回復できないケースも多いです。「告訴をしたら返金してもらえる」と期待しすぎないようにしてください。
また、そもそも詐欺罪の告訴は受理してもらえないケースが多い点も知っておきましょう。警察が告訴を受理しない理由としては、以下が挙げられます。
- 証拠が足りない
- 民事不介入
- 被害金額が少ない
- 他の事件処理で忙しい
これらの理由は、いずれも正当なものではありません。とはいえ、告訴を受理してもらえないと次のステップに進めないのも事実です。告訴に強い弁護士に依頼すれば、受理してもらいやすくなります。
詐欺被害で刑事告訴する際のポイント
詐欺被害に遭っても、警察に刑事告訴を受理してもらえないケースは多いです。受理される可能性を上げるためには、以下のポイントに注意してください。
証拠を残しておく
犯行の証拠は、できる限り残しておくようにしてください。
詐欺罪は、立証が難しい犯罪です。前述の通り、検挙率が5割程度であり、他の主な犯罪に比べて検挙率が低くなっています(参考:令和4年版犯罪白書|法務省)。
詐欺の加害者は証拠を残さないようにしており、契約書すら存在しないケースも多いです。だますつもりがあったかは内心の問題であるため、証明が特に難しく、「はじめは金を返すつもりだった」などと反論されてしまいます。
詐欺の証拠としては、たとえば以下が考えられます。
- 契約書
- メール・LINEなどやりとりの履歴
- 送金記録
- 振込先の銀行口座
- ウェブサイトに記載された情報
証拠が残っていれば、必ず保存しておくようにしてください。
受理される告訴状を作成する
告訴をする際には、証拠とともに、告訴状を提出しなければなりません。法律上は口頭でも告訴できるとされていますが、実際には書面の作成が必要です。
告訴状は、ただ書けばいいわけではなく、一定の記載事項を守る必要があります。犯罪事実や経緯等も記載しますが、警察・検察が捜査しやすいように書き方を工夫しなければなりません。告訴状の作成は、専門的な知識がないと難しい側面があります。
内容が不十分だと、警察は受理してくれません。実際に、「警察に告訴を断られた」として相談にいらっしゃる被害者の方が多いです。
詐欺被害者側の弁護に強い弁護士に相談する
スムーズに告訴を受理してもらうには、詐欺被害者の弁護に強い弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士は詐欺罪について専門的な知識があるため、証拠を揃えたうえで、受理されやすい告訴状を作成できます。警察とのやり取りもお任せください。
ただし、弁護士であれば誰でもいいわけではありません。刑事事件をほとんど扱わない事務所があるうえに、扱っていても多くの弁護士は加害者側に立って活動します。被害者の立場に寄り添って、告訴などのサポートができる弁護士は少ないのが実情です。
詐欺罪の告訴に際しては、被害者側の弁護に精通した弁護士を見つけて相談するのが重要なポイントになります。
まとめ
ここまで、詐欺罪の刑事告訴について、事例、メリット、ポイントなどについて解説してきました。
詐欺の被害を回復するために、告訴は民事・刑事両面で有効な方法です。もっとも、証拠を集めたうえで告訴状を作成し、警察に受理してもらうのは容易ではありません。
詐欺被害について刑事告訴をお考えの方は、リード法律事務所までご相談ください。
当事務所では、被害者の方々から依頼を受け、数多くの告訴を受理させてまいりました。ご紹介した通り、詐欺罪で告訴を受理させた事例もございます。
投資詐欺(ポンジスキーム)について詐欺罪で刑事告訴が受理された事例
実体の無い架空の売買契約を締結させられたことについて詐欺罪で刑事告訴が認められた案件
被害に遭った方に寄り添って、証拠収集、告訴状の作成、警察とのやりとりなどを徹底的にサポートいたします。
「詐欺の加害者を告訴したい」「警察に取り合ってもらえず困っている」といった方は、まずはお気軽にお問い合わせください。