最終更新日:2023.09.13
犯罪被害に遭ったとき、刑事告訴をする5つのデメリットとは
もし、あなたが犯罪の被害に遭ってしまったらどうすればよいでしょうか。
多くの方は「警察に被害届を出す」ことを考えると思います。
しかし、実は被害届を出しただけでは警察は必ず捜査や犯人の逮捕に動いてくれるとは限りません。被害届はあくまでも、警察に犯罪があったこと(あるいはその可能性)を知らせるのが役割で、実際に捜査するかどうかは警察の判断に委ねられているためです。
「犯人の逮捕や処罰を強く望んでいるのに、どうにもならないのか……?」
と思われるかもしれません。
そんなとき、警察や検察に対し事件の捜査と犯人(加害者)の処罰を要求できる方法が「刑事告訴」です。
ただ、刑事告訴は受理されれば必ず捜査につながるものの、いくつかのデメリットも存在します。
今回はそのデメリットについて具体的に解説します。メリットとデメリットを正しく理解すれば、どのようなケースで刑事告訴を検討するべきかの指標となりますので、ぜひ目を通してみて下さい。
目次
刑事告訴の特徴と手続きの方法
刑事告訴とは、犯罪の被害者やその他一定の者(被害者の親権者や相続人など)が、検察官や警察官といった捜査機関に対して犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求めることです(刑訴法230条)。
刑事告訴と被害届との最大の違いは、刑事告訴を受理した警察などの捜査機関は、告訴人(被害者)の求めに応じて必ず捜査を行わないといけない点です。
手続きはシンプルで、告訴状を作成し、居住地や犯罪の起きた地域の警察署へ提出するだけです。
告訴状には決まった書式や記載事項などがあるわけではありませんが、できるだけ警察が「捜査が必要だ」と判断できるような、具体的な犯罪の状況や必要事項が記載された告訴状を作り、証拠なども可能な限り多く揃えておくのが望ましいです。
刑事告訴の5つのデメリット
刑事告訴を出すことで、なにか被害者側にデメリットがあるのか、気になる方もいらっしゃるかと思います。
たしかに、その人の立場によっては刑事告訴のデメリットも存在します。
ここでは、5つのデメリットの例を挙げて解説します。ただし、それを上回るメリットが得られたり、方法を変えて被害を回復できたりする場合もありますので、まずは1つずつ確認してみて下さい。
デメリット1:受理の難易度が高い
前述したように、告訴状が受理されると、被害届とは異なり「すみやかに捜査を始める」「結果を告訴した被害者に知らせる」という義務が発生します。
捜査機関の人員や時間にも限りがありますので、もし本当に犯罪かどうか疑わしい刑事告訴まですべて受け付けてしまうと、より緊急性の高い事件の捜査に手が回らなくなってしまう可能性があります。
そのため、被害届と比べると告訴状は厳しく内容をチェックされる上、きちんと内容を記載しているにも関わらず「書類不備」「証拠不十分」といった理由で受理されないことも多々あります。
デメリット2:弁護士に依頼すると費用がかかる
警察に告訴状を受け付けてもらえないとき、弁護士に相談すると、告訴状の作成代行やアドバイス、提出時に同行して受理を促してもらえるなど、受理される確率を大幅に高めることができます。
ただし、刑事告訴で弁護士のサポートを受けるには、数十万円の弁護士費用が必要です。
また司法書士や行政書士も告訴状の作成を代行できますが、一定の費用がかかりますし、弁護士と違って法的なアドバイスをもらったり提出に同行してもらったりすることはできません。
最終的に刑事告訴が受理され、裁判で判決が下ったとしても、金銭的な被害の補償が弁護士依頼費用を下回る可能性もあります。
▼刑事告訴の費用について、詳しくはこちらの記事でも解説しています
刑事告訴にはいくら費用がかかる?自分で・弁護士・行政書士・司法書士を比較
「金銭の問題ではなく、犯人には必ずしかるべき処罰を与えたい」という思いが強い場合は問題ありませんが、金銭的賠償を求めていて、それが弁護士費用よりも少額の場合は、民事訴訟など他の方法も検討してみましょう。
デメリット3:金銭面での被害回復ができないこともある
刑事告訴が受理されて捜査が進み、犯人(加害者)が逮捕された場合、裁判で争点となるのは、犯罪の有無や内容・それに対する刑罰という部分で、被害者が受けた金銭的な被害回復については問われません。
もし有罪判決で罰金の支払い命令が出たとしても、それは被害者に対してではなく国庫に納められます。
ただし、一部の犯罪では、刑事事件の裁判終了後に同じ裁判所で損害賠償の審理を続けて行える「損害賠償命令制度」もありますので、一概に「まったく金銭的な損害賠償がされない」というわけではありません。
デメリット4:不起訴になり責任を追及できないこともある
刑事告訴は、受理されにくいかわりに、いったん受理されれば必ず捜査は行われます。
ただし捜査の結果、検察官が「今回は起訴には及ばない」と判断する「不起訴処分」になることもあり、その場合は、それ以上犯人の責任を追及できなくなってしまいます。
不起訴になった場合も、そのままあきらめるのではなく、検察審査会へ審査の申立てや民事裁判に切り替えて損害賠償を請求する方法もあります。
デメリット5:社内事情などが公になることがある
たとえば社内で起きた横領事件などでは、個別の交渉や民事の損害賠償訴訟であれば当事者間だけで進めることができますが、刑事告訴して捜査が始まると、警察などの捜査機関が会社に立ち入ることがあれば、直接関係のない社員や取引先、周辺の住民などに内部事情が知られてしまう可能性があります。
またニュースで報道されれば広く社会に事件が知られてしまいます。だからといって泣き寝入りする必要はありませんが、刑事告訴する場合の前提知識として知っておきましょう。
それでも刑事告訴にはメリットが多い
とはいえ、刑事告訴には、デメリットを上回るメリットも数多く存在します。
- 確実に捜査をしてもらえる
- 犯人を逮捕・処罰できる
- 精神的な被害回復が期待できる
- 金銭的な被害回復も期待できる
- 今後の犯罪被害を防止できる
- 民事で解決できなかった事件も解決できる可能性がある
▼刑事告訴のメリットについて詳しくはこちらの記事もご覧下さい
特に加害者側に反省や悔悟の様子がなく、しかるべき処罰を与えたいと考えるなら、刑事告訴に踏み切る価値は十分にあります。また結果的に示談金などの金銭的な補償につながることも少なくありません。
また、被害届だけでは捜査に動いてもらえなかった事件でも、刑事告訴なら捜査や犯人逮捕の可能性が高まります。
加害者や警察の対応、自分自身の望む結果などを考え合わせて、刑事告訴を行うかどうか決定しましょう。
刑事告訴を考えたら弁護士に相談を
刑事告訴には、なかなか受理されない・金銭の被害回復ではなく犯罪そのものの有無や刑罰が主目的となる…といったデメリットもありますが、捜査や逮捕につながる可能性が高まり、場合によっては民事の損害賠償よりも多額の示談金を受け取れるといったメリットも存在します。
特に、しっかりと犯人(加害者)に処罰を与えたいときや、被害額が大きく個人的に民事訴訟を起こしても回収が難しいような場合には、弁護士のサポートを受けるのも良い方法です。
弁護士や法律事務所にはそれぞれ特に詳しいジャンルや分野があるので、刑事告訴や被害者の支援に力を入れていて実績のある弁護士に相談するのが成功のコツです。
▼当事務所での刑事告訴の成功例はこちら
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