性犯罪にあったら

最終更新日:2024.03.18

【被害者向け】性犯罪・性暴力とは?刑事告訴するとどうなる?

性暴力とは、望まない、同意のない性的な行為です。多くは不同意性交等罪、不同意わいせつ罪などの性犯罪に該当します。

性犯罪の被害を受けた際には、加害者を刑事告訴すれば刑事責任を追及できます。加えて、告訴によって相手が示談金の支払いに応じるケースも多いです。更なる被害の防止にもつながります。

この記事では、性犯罪・性暴力の意味や、刑事告訴するとどうなるかについて解説しています。性犯罪・性暴力の被害を受けた方は、ぜひ最後までお読みください。

性犯罪・性暴力とは?

性暴力とは、望まない、同意のない性的な行為です。「自分の身体について自分で決める権利」を損なう行為であり、重大な人権侵害といえます。

性暴力に該当する代表的な例は以下の通りです。

  • レイプ
  • 同意のない身体接触
  • 裸の写真を送信させる
  • リベンジポルノ
  • 痴漢
  • 盗撮
  • AVへの出演強制

これらの行為は、後述する通り、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪などの性犯罪に該当します。

被害を受けた方には、次の影響が出る場合があります。

  • 望まない妊娠、性感染症
  • フラッシュバック、自分を責める、孤独感
  • 眠れない、食欲が出ない
  • 周囲から理解してもらえない

性暴力・性犯罪は、被害者に身体的・精神的なダメージを長期間にわたって生じさせる場合が多く、決して許されない行為です。

男女ともに被害に遭う可能性がある

性犯罪に関して、社会的には「加害者=男性、被害者=女性」とのイメージを持たれがちです。

たしかに、女性が被害者になるケースが多いのは事実です。とはいえ、実際には男性が被害者になるケースも存在します。

かつての強姦罪(現在の不同意性交等罪)では「加害者=男性、被害者=女性」に限定されていました。法改正により、2017年以降は性別を問わず加害者・被害者のいずれにもなるようにルールが変わっています。異性間だけでなく、同性間でも罪になります。

男性の性被害については社会的な認知度が低く、声を挙げられない方が非常に多いです。性別を問わず、たくさんの方が性被害に悩んでいるのが実情です。

パートナー間でも同意がなければ犯罪行為にあたる

一般的には、性犯罪は「見知らぬ人から」「突然」被害を受けるというイメージがあるかもしれません。

しかし、性暴力の多くは顔見知りから受けると言われています。上下関係や信頼関係を利用した犯行であり、加害者との関係があるために被害を訴えられない場合も多いです。

単なる顔見知りではなく、夫婦・パートナーの間で性暴力が行われるケースもあります。夫婦間であっても、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は成立し得ます。2023年の法改正によって、夫婦間でも成立する点が明確化されました。

「相手が夫(妻)だから泣き寝入りするしかない」と考える必要はありません。意に反して性的行為をされた際には、相手が誰であれ犯罪になると認識しておきましょう。

性犯罪・性暴力被害にあった際は刑事告訴できる

性犯罪の被害に遭ったときには、刑事告訴ができます。刑事告訴とは、犯罪を受けた事実を捜査機関に申告し、加害者を処罰して欲しいとの意思を示すことです。

加害者に問える可能性のある犯罪は様々です。不同意性交等罪、不同意わいせつ罪など、代表的な性犯罪を中心に解説します。

不同意性交等罪

不同意性交等罪は、同意なく性行を強要する犯罪です。肛門性交や口腔性交なども処罰対象とされています。

かつては「強姦罪」という名称でしたが、2017年の法改正により「強制性交等罪」、2023年の法改正により「不同意性交等罪」と名称が変更されてきました。

2017年以前は、刑罰を科すのに告訴が必須となる「親告罪」と呼ばれるタイプの犯罪でした。現在は告訴がなくても刑罰を科せます。

2023年の改正では「同意しない意思を形成・表明・全うするのが困難な状態」でなされた行為に成立すると変更され、罪になる範囲が広がりました。上下関係を利用した性交など、従来は罪に問いづらかった類型も含まれています。

不同意性交等罪の刑罰は「5年以上の有期懲役」です(刑法177条)。基本的に執行猶予はつかず、実刑判決がくだされて犯人が刑務所に収監される重い犯罪です。被害者を死傷させたときには「不同意性交等致死傷罪」が成立し、「無期または6年以上の懲役」とさらに重くなります(刑法181条2項)。

不同意性交等罪の要件や法改正の内容について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:不同意性交等罪とは?刑事告訴の流れを弁護士が解説

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪とは、被害者が同意していないのにわいせつな行為をする犯罪です。

わいせつな行為とは、性交を除く、性的に嫌悪感を抱かせる行為をいいます。例としては以下が挙げられます。

  • 突然抱きつく
  • 強引にキスをする
  • 胸を触る
  • 下着の中に手を入れる

不同意性交等罪との違いは、性行があったか否かです。性行に及んでいれば不同意性交等罪、性行までしていないときは不同意わいせつ罪となります。

不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です(刑法176条)。懲役刑しかなく、重い犯罪といえます。被害者を死傷させたときには「不同意わいせつ致死傷罪」が成立し、「無期または3年以上の懲役」と大変重くなります(刑法181条1項)。

監護者わいせつ及び監護者性交等罪

18歳未満の被害者に対して、監護者としての影響力を利用してわいせつな行為をすると「監護者わいせつ罪」が成立します。性行をしたときには「監護者性交等罪」となります。

典型的なのは、親の立場を利用して子に対してわいせつな行為や性行に及ぶケースです。

法定刑は、監護者わいせつ罪では「6月以上10年以下の懲役」、監護者性交等罪では「5年以上の有期懲役」とされています(刑法179条)。

その他

その他の性被害についても、行為に応じて以下の犯罪が成立する可能性があります。

  • 痴漢:都道府県の迷惑防止条例違反
  • 盗撮:都道府県の迷惑防止条例違反
  • リベンジポルノ:リベンジポルノ防止法違反
  • 性的な姿を撮影:性的姿態撮影処罰法違反
  • 児童買春:児童買春・児童ポルノ禁止法違反
  • ストーカー:ストーカー規制法違反

これらの行為についても、刑事告訴が可能です。リベンジポルノ防止法違反のように、刑罰を科すために告訴が必須となる「親告罪」に該当する犯罪もあります。

「受けた被害がどの犯罪に該当するかわからない」「どうやって告訴すればいいかわからない」といった方は、弁護士までご相談ください。

性犯罪・性暴力事件で刑事告訴するとどうなるのか

性犯罪で刑事告訴をすると、以下のことを実現できます。

  • 加害者の刑事責任を追及できる
  • 示談すれば示談金を受け取れる
  • 更なる被害を防げる

順に詳しく解説します。

加害者の刑事責任を追及できる

刑事告訴をすれば、加害者の刑事責任を追及する道が開かれます。

近年の法改正により、ほとんどの性犯罪は、被害者による告訴がなくても処罰が可能な「非親告罪」と呼ばれるタイプの犯罪になっています。以前と異なり、法律上は刑罰を科すために告訴は必須ではありません。

もっとも、起訴して刑事裁判にかけるかを検察官が判断する際には、被害者の意思が極めて重要なポイントになります。したがって、刑事告訴によって処罰を望む意思を示せば、加害者が起訴されて刑罰が科される可能性が大幅に高まります。

そもそも、性犯罪は一般的に隠れて行われるものです。警察や検察であっても、被害の申告がないと気がついてくれません。刑事責任を追及したいのであれば、刑事告訴をするのが有効な方法です。

示談に応じる場合は示談金を受け取ることができる

刑事告訴をすると、加害者が示談金の支払いを申し出る場合があります。

加害者の立場からすると、刑事告訴がなされれば「刑罰を科されるのではないか」と考えるはずです。特に不同意性交等罪のような重大犯罪であれば、実刑判決がくだされて刑務所に収監される可能性が高まります。加えて、勤務先を解雇され転職が難しくなる、家族に知られて離婚されるといった事態も想定されます。

したがって、加害者が示談により処分を軽くしてもらおうとするケースが非常に多いです。

もちろん示談交渉を進めるかは被害者の方のお気持ち次第であり、無理に応じる必要はありません。仮に応じてもよいと考えるのであれば、示談金を受け取れます。性犯罪の示談金は特に高額になりやすいです。金銭を受け取っても心身の傷が癒えるわけではありませんが、ひとつの区切りとして、前を向くきっかけにする方もいらっしゃいます。

更なる被害を防げる

加えて、刑事告訴によって次の被害を防げます。

性犯罪は再犯率が高いです。放っておくと、ご自身だけでなく、別の被害者が生じる危険があります。

加害者が逮捕されたり刑務所へ収監されたりすれば、更なる被害が生じずにすみます。ご自身の安全を確保できるのはもちろん、新たな被害者も発生しません。

犯罪被害に遭った事実は消えなくても、刑事告訴によって未来の被害者を救えるのです。

性犯罪・性被害で刑事告訴するためには

刑事告訴をするには、警察に告訴状を提出します。しかし、警察が「証拠が足りない」「同意があったのではないか」などと理由をつけて、受理してくれないケースも残念ながら多いです。

警察に取り合ってもらえない場合には、刑事告訴に強い弁護士にご相談ください。弁護士に聞けば証拠の収集方法がわかり、告訴状の作成を任せられます。

被害によるショックの中で、ご自身だけで被害を訴えるのは大変なストレスになるかと思います。刑事告訴に際して、弁護士のサポートを受ける方法もご検討ください。

公訴時効に注意

刑事告訴する際に注意が必要なのが公訴時効です。公訴時効期間を経過すると、加害者に刑罰を科せなくなってしまいます。

とはいえ、被害者にとって告訴するか否かを判断するのには大きな精神的負担がかかり、容易ではありません。そこで、2023年の法改正により、性犯罪について公訴時効期間が5年間延長されました。

罪名改正前改正後
不同意性交等致傷罪など15年20年
不同意性交等罪など10年15年
不同意わいせつ罪など7年12年

また、未成年の被害者が被害を申告するのはより難しいです。そこで、被害者が18歳未満のときは、18歳になるまでの期間が公訴時効期間にプラスされるとのルールも新たに設けられました。

延長されてはいますが、公訴時効期間の定めは残っています。刑事告訴を考えている場合には、期間が経過しないかに注意してください。

まとめ

ここまで、性犯罪・性暴力について、該当する行為や刑罰の内容、告訴により実現できることなどを解説してきました。性犯罪は被害者の方々を深く傷つけ、決して許されない行為です。加害者に刑罰を科したいと考えている場合は、刑事告訴をご検討ください。

性被害に遭われた方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は被害者の方からご依頼を受け、性犯罪について刑事告訴を数多く受理させてまいりました。証拠収集、告訴状の作成、警察とのやりとり、加害者との交渉などをすべてお任せいただけます。

性犯罪・性暴力の被害に遭われた方は、泣き寝入りする前に、まずはお問い合わせください。

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