窃盗・強盗被害にあったら

最終更新日:2024.01.05

窃盗被害にあったら刑事告訴すべき?親告罪になるケースも

窃盗被害に遭われてお困りでしょうか?

窃盗の被害を受けた際には、刑事告訴が可能です。刑事告訴をすれば、犯人に罰金・懲役の刑罰を科せる可能性が高まるとともに、示談交渉が進んでお金を返してもらえるケースもあります。

通常の窃盗罪では、刑事裁判にするために告訴は必須ではありません。もっとも、犯人が一定の範囲の親族であれば「親告罪」と呼ばれる類型になり、刑罰を科すために刑事告訴が不可欠となります。

この記事では、窃盗罪の刑罰や親告罪になるケースなど、刑事告訴する際に必要な知識を解説しています。窃盗被害に遭われた方は、ぜひ最後までお読みください。

以下の記事では、窃盗罪の手口や強盗罪との違いについて解説しています。合わせて参考にしてください。

参考記事:窃盗罪と強盗罪の違いとは?被害に遭ったらどうするべき?

窃盗被害に遭ったら

窃盗被害に遭った際には、できる範囲で証拠を揃えたうえで、警察に被害届や告訴状を提出するのが有効です。窃盗事件が起きてもすべてを警察が把握できるわけではないため、被害の事実を申告する必要があります。

被害届だけでは警察が動いてくれない場合もあるため、確実に捜査を進めてもらえる刑事告訴をするのがベストです。捜査されている事実を犯人が知れば、処罰されるのを回避するために示談交渉を持ちかけてきて、被害額が返ってくる可能性もあります。

窃盗被害を受けてお困りであれば、被害を回復するために、被害届や告訴状の提出をご検討ください。

窃盗の被害に遭った際の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参考記事:【窃盗被害】盗まれた物が返ってきた場合も刑事告訴できる?未遂についても解説

窃盗被害で刑事告訴した事例

ひとくちに窃盗といっても、様々なパターンがあります。

ここでは、一般的な事例を2つご紹介します。

【事例1】空き巣のケース

空き巣は、窃盗罪の中でも典型的なパターンのひとつです。

他人の家から現金・通帳や貴金属などを盗む行為は窃盗罪に該当します。勝手に他人の敷地に入っているため、住居侵入罪も成立します。

空き巣は被害額が大きくなりやすく、被害者に恐怖を与えます。厳しい刑事処分を望む方も多いでしょう。

犯罪に該当する以上、被害届の提出だけでなく刑事告訴も可能です。告訴をすれば検察への送致が義務づけられ、警察限りで微罪処分で済まされる心配はありません。厳しい処分を望むのであれば、刑事告訴が有力な選択肢になります。

とはいえ、警察が告訴を受理してくれない場合は多いです。弁護士に依頼することで、証拠の収集や告訴状の作成だけでなく、警察との交渉も任せられます。弁護士に依頼した結果、告訴が受理されて捜査が進み、刑罰につながるケースもあります。

【事例2】自宅に招いた人が盗みをはたらくケース

友人や業者などを自宅に入れたところ、ふとした隙をつかれて部屋から財布や腕時計などの財産を奪われてしまうケースです。信頼して部屋に入れたのに裏切られてしまい、被害者のショックは大きくなります。

空き巣とは異なり、自宅に入ること自体は許可しているため住居侵入罪は成立しません。物を盗んでいる以上、もちろん窃盗罪には該当します。

ところが、警察が「証拠が足りない」「民事不介入」などの理由をつけて、刑事告訴を受理してくれない場合も多いです。弁護士に依頼して証拠収集や告訴状作成のサポートを受ければ、刑事告訴が受理される可能性が高まります。

なお、同様のケースで犯人が一定の範囲内の親族であれば親告罪になり、告訴をしないと刑罰を科せません。窃盗罪が親告罪になるケースについては、後ほど詳しく説明します。

窃盗罪の刑罰

窃盗罪で有罪判決がくだされたときの刑罰は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(刑法235条)。刑罰の種類や重さは、被害額、示談の有無、前科の有無や内容などによって決まります。

以下で、窃盗罪で科される刑罰の種類や相場について解説します(以下参考:令和4年版犯罪白書|法務省p.43〜44)。

罰金刑

窃盗罪で罰金になるときは「50万円以下」とされています。実際には、20万円から30万円程度のケースが多いです。

窃盗罪の罰金刑は、略式裁判でも科すことができます。

公開の法廷で被告人が出席して行われる正式裁判とは異なり、略式裁判は書面審理です。犯人が事実を認めているケースで、100万円以下の罰金を言い渡たす際に利用できます。窃盗罪の罰金刑は、略式裁判で決定するケースが多いです。

懲役刑

窃盗罪では懲役刑になる場合もあります。懲役刑とは、刑務所に入って刑務作業をする刑罰です。刑務作業が強制される点が、禁錮刑との違いになります。

窃盗罪で懲役刑になるときは「10年以下」です。もっとも、3年を超える懲役になるケースは少なく、多くの場合で3年以下となります。3年以下の懲役だと、執行猶予がついて刑務所に入らないケースも多いです。

なお、懲役刑は禁錮刑と統合され、2025年に「拘禁刑」として一本化される予定です。

量刑の相場

被害額が少ない窃盗の場合には、起訴されたとしても罰金になる可能性が高いです。罰金額は20万円から30万円程度が相場になります。示談している場合など、そもそも起訴されないケースも多いです。

被害額が多い、前科がある、被害者の処罰感情が強いなどの条件が重なると、懲役刑になる可能性が高まります。特に悪質な場合には3年を超える実刑判決がくだされ、犯人が刑務所に収監されます。もっとも、実際には3年以下の懲役となり、執行猶予がつくケースも多いです。

窃盗罪が親告罪になるケースとは

窃盗罪は通常は非親告罪であり、告訴がなくても起訴は可能です。もっとも、犯人が親族の場合には、親告罪となったり、そもそも刑を科せなかったりします。

以下で、窃盗罪が親告罪になるケースや刑が免除されるケースについて解説します。

窃盗罪は非親告罪

窃盗罪は他人の財産を盗む犯罪であり、通常は「非親告罪」という類型に該当します。

犯罪は、起訴して刑事裁判にするために告訴が必要か否かによって、「親告罪」と「非親告罪」に分けられます。

親告罪に分類される犯罪の場合には、起訴するために被害者等による告訴が不可欠です。親告罪で告訴がなければ、犯人を起訴して刑罰を科すことはできません。

親告罪は、被害者の名誉・プライバシーの保護や、犯罪の軽微性などを理由に定められています。親告罪の例は、名誉毀損罪や器物損壊罪です。

反対に、非親告罪の場合には告訴がなくても検察官の判断により起訴ができます。大半の犯罪が非親告罪です。

窃盗罪も、通常は非親告罪にあたります。したがって、告訴がなくても起訴は可能です。

窃盗罪における親族間の特例とは

一般的に窃盗罪は非親告罪であり、起訴して刑罰を科すために告訴は必須ではありません。もっとも、窃盗罪には「親族間の犯罪に関する特例」が定められており、一定の場合には親告罪になります。

窃盗罪が親告罪となるのは、犯人が「同居していない親族(配偶者と直系血族は除く)」だったケースです(刑法244条2項)。

法律上、親族とは以下の人を指します(民法725条)。

  • 配偶者
  • 3親等内の姻族
  • 6親等内の血族

「配偶者」は、夫や妻のことです。配偶者側の親族を「姻族」、自分側の親族を「血族」と呼びます。

「親等」は親族関係の近さを表す単位です。親子で1親等、兄弟で2親等などとなります。

6親等の例は「はとこ(親同士がいとこ)」であり、血族については相当の範囲が親族に含まれます。姻族については、配偶者の甥姪など、3親等までが法律上の親族です。

窃盗罪が親告罪になるのは「同居しておらず、かつ、配偶者や直系血族に該当しない」親族が犯人だったケースです。「直系血族」とは、自分の親、祖父母、子、孫など、直通する系統の血族をいいます。

以上より、窃盗罪が親告罪になるのは、同居していない兄弟姉妹や甥姪などが窃盗の犯人だった場合です。

ちなみに、加害者が親族のときに親告罪となるのは「法は家庭に入らず」との考えによります。親族間の問題はまず家庭での解決に委ね、国家がむやみに介入すべきではないとの考えです。

親族が窃盗の加害者であり、家庭内での解決が難しく刑罰を求めるのであれば、刑事告訴をする必要があります。

窃盗罪の刑が免除になる場合とは?

窃盗の犯人が「配偶者」「直系血族」「同居の親族」のいずれかの場合、刑が免除されます(刑法244条1項)。

これらの親族については窃盗の刑が免除されるため、告訴して刑罰を求めることもできません。より近い関係の親族の犯行であるため、家庭内で解決すべきとされています。

したがって、夫・妻、親・子、同居している兄弟などが犯人であったときには、窃盗罪で処罰できないのです。

加害者と被害者の関係ごとに窃盗罪の刑を科せるかをまとめると、以下の通りになります。

加害者と被害者の関係刑を科せるか
配偶者(夫・妻)直系血族(親・子など)同居している親族免除(刑罰を科せない)
上記以外の親族親告罪(刑罰を科すには告訴が必要)
親族関係にない非親告罪(告訴しなくても刑罰を科せる)

窃盗被害で弁護士に相談するメリット

窃盗被害を受けた際には、弁護士への相談をおすすめします。弁護士に依頼すれば、警察に動いてもらいやすくなり、加害者との示談交渉も進められます。

具体的には、以下の点が弁護士に相談・依頼するメリットです。

被害届・告訴状を受理させることができる

弁護士に任せれば、警察に被害届や告訴状を受理してもらいやすくなります。

本来であれば、被害者から求めがあれば、警察が被害届や告訴状を受理するのは当然のはずです。しかし実際には、「証拠が足りない」「被害額が少ない」などの理由で、警察が受理してくれないケースもよくあります。頼りになるはずの警察から相手にしてもらえず、途方に暮れている被害者の方もいらっしゃるでしょう。

刑事告訴に強い弁護士に依頼すれば、必要書類を作成したうえで、受理するように警察を説得できます。警察とのやりとりによるストレスも軽減されるはずです。

弁護士に告訴を任せて受理させれば、捜査の進展や犯人への厳しい処分が期待できます。

犯人を特定する証拠を自力で得られないときにも

窃盗の被害を受けても、犯人を特定するための証拠がないケースもあります。証拠がないために、告訴を断られた方もいらっしゃるでしょう。

弁護士は、防犯カメラ映像などの、犯人につながる証拠収集もいたします。当事務所では、弁護士が入って証拠を得たことにより、告訴受理につながった事例もございます。

自力で証拠を集めるのには限界があるでしょう。時間の経過とともに証拠は消えていってしまいます。告訴のために証拠が必要であれば、早めに弁護士にご相談ください。

示談を求められたときに不利な内容ではないか判断できる

被害届や告訴状が受理されると、加害者が刑罰をおそれて示談交渉を申し入れてくる場合があります。

示談が成立すれば示談金を受け取れ、金銭的な被害回復が可能です。もっとも、加害者の処分が軽くなるデメリットもあります。示談を受け入れるかは、慎重に検討しなければなりません。

とはいえ、被害者の方が、示談内容が法的に不利でないかを判断するのは難しいです。冷静に判断できない、加害者と直接会いたくないなどの理由で、自分で交渉をしたくない方もいらっしゃるでしょう。

弁護士に示談交渉を任せれば、相手と直接会わずにすみます。法的に不利な内容と知らずに示談をする心配もありません。安心して示談交渉を進めてもらえます。

示談金の相場

示談の際に気になるポイントのひとつは、示談金の額ではないでしょうか。金額はケースバイケースですが、ある程度の相場はあります。

窃盗罪の場合、示談金の相場は「被害金額+数十万円」です。被害額を弁償してもらうのは当然として、精神的ショックに対する慰謝料がプラスされます。被害額に罰金相当額を加えた金額を参考にするケースもあります。

まとめ

ここまで、窃盗罪について、刑罰や親告罪になるケースなどについて解説してきました。

窃盗罪では、加害者に罰金や懲役が科される可能性があります。通常は非親告罪ですが、犯人が「同居していない親族(配偶者と直系血族は除く)」であれば親告罪となり、刑罰を科すために告訴が必須になります。

窃盗の被害に遭われてお困りの方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は犯罪被害者の方のサポートに力をいれており、窃盗罪で刑事告訴を受理させた事例も多数ございます。証拠収集、告訴状の作成、警察とのやりとり、示談交渉などをお任せいただけます。

窃盗の被害を受けた方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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