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最終更新日:2024.10.16

病院の口コミが名誉毀損になるケース|誹謗中傷への対処法を解説

最近では、ネット上の口コミを参考に病院・歯科医院・美容クリニックを選ぶ患者が多いです。口コミにマイナスの内容を書き込まれていると、売上げの減少や職員のモチベーションの低下といった問題が生じます。

口コミの中には、医療機関側が真摯に受けとめて反省すべき内容も含まれています。しかし、内容が事実無根であったり、単なる誹謗中傷であったりする場合も少なくありません。

悪質な口コミが名誉毀損に該当すれば法的措置をとれます。削除請求のみならず、投稿者への損害賠償請求や刑事告訴も可能です。

この記事では、病院・クリニックの口コミが名誉毀損になるケースや対処法を解説しています。悪質な誹謗中傷にお悩みの病院・クリニック関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。

病院・クリニックへの口コミが名誉毀損になるケース

Googleマップをはじめとするネット上の口コミを参考に、病院・クリニックを選択する患者は増加しています。口コミに病院を非難する内容が含まれていると、患者が受診をためらい、売上げが減少するリスクが大きいです。

働いている職員や求職者も口コミを見るため、マイナスの内容が多いと離職や採用難につながりかねません。とりわけ職員を名指しで誹謗中傷する口コミがあれば、当該職員への心理的ダメージは計り知れないでしょう。

口コミが名誉毀損などの違法行為に該当すれば、病院側が法的措置をとれます。まずは、名誉毀損の要件、病院・クリニックへの口コミが名誉毀損になるケース・ならないケースを解説します。

名誉毀損の要件

刑法上の名誉毀損罪の成立要件は以下の通りです。

①公然と

②事実を摘示し

③人の名誉を毀損する

①「公然」とは、不特定あるいは多数の人が知り得る状態です。Googleマップなどに掲載されたネット上の口コミは誰でも閲覧できる状態にあるため、通常は公然性の要件を満たします。SNSのDMなど、特定かつ少数の人に伝えただけで広まる可能性がないときには該当しません。

②「事実を摘示」とは、具体的に人の社会的評価を低下させる事実を示すことです。証拠により証明できる事実を示す必要があり、「バカな医者だ」などと個人的な意見を示しただけのときには、刑法上の名誉毀損罪は成立しません(侮辱罪の成否が問題となります)。ただし、意見・論評であっても民事上は名誉毀損にあたる可能性があります。

③「人の名誉を毀損」とは、人の社会的評価を低下させることです。「人」には個人だけでなく法人も含まれるため、病院を対象とした名誉毀損も成立します。刑法では外部的名誉(社会的評価)だけが保護されており、名誉感情(プライド)が傷つけられても社会的評価が下がっていなければ犯罪にはなりません。民事上は、名誉感情を侵害されただけでも損害賠償を請求できるケースがあります。

名誉毀損の要件について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考記事:名誉毀損で刑事告訴をする条件とは?匿名で名誉毀損された場合はどうすれば良い?

医療機関に対する名誉毀損の具体例

医療機関に対する名誉毀損にあたる具体的な口コミとしては、以下が挙げられます。

  • 医師免許を持っていないヤブ医者だ
  • 国に認可されていない治療・投薬を行っている
  • 院長と看護師が不倫している

これらは社会的評価を低下させる事実を示しており、民法上の不法行為になるだけでなく、刑法上の名誉毀損罪にも該当すると考えられます。

名誉毀損にならないケース

病院にマイナスになる口コミであっても、名誉毀損に該当しないケースも存在します。

まずは、単なる意見や感想に過ぎないものです。「医師の方針が私には合わなかった」「他の病院をオススメする」といった表現だけでは、刑法上の名誉毀損罪には該当しません。証拠によって証明できる事実を示してはいないためです。もっとも、度が過ぎていれば民事上の責任を問える可能性はあります。

他にも、刑法230条の2により名誉毀損罪が成立しない場合があります。以下の3つの要件をすべて満たしたケースです。

①公共の利害に関する事実である

②公益を図る目的である

③真実であることの証明があった

特に問題になりやすいのは③です。たとえば、過去の医療事故について口コミに記載しているときは、①や②は満たすと考えられます。したがって、記載された事故が真実であれば③も満たし、名誉毀損罪には問われません。

なお、名誉毀損罪が成立しなくても侮辱罪など他の犯罪には該当し得ますし、民事上の責任を問える場合もあります。

誹謗中傷をされても罪にならないケースについて詳しくは、以下の記事をお読みください。

参考記事:誹謗中傷されたら刑事告訴できる?告訴できない場合とは?

病院が受けた名誉毀損に対してできること

医療機関が名誉毀損の被害を受けた際には、まずは証拠を確保するのが重要です。証拠がないと、法的手段をとれません。

口コミの場合には、URLが分かるようにスクリーンショットを撮影するのが一般的です。証拠の確保は、削除する・される前に早めに行ってください。

投稿を削除したいときは、サイトへの削除要請や裁判所への削除仮処分申立てが考えられます。削除だけでなく投稿者の責任を追及したいときは、発信者情報開示請求により相手を特定したうえで、損害賠償請求や刑事告訴が可能です。

以下で、病院がとれる方法を詳しく見ていきましょう。

サイトへの削除依頼

病院側がまず望むのは、口コミを削除して閲覧できない状態にすることでしょう。時間が経つと目にする人が増え拡散されるリスクが高まるため、早めに動かなければなりません。

手軽なのは、サイトへの削除要請です。問い合わせフォームなどを通じ、理由を示して削除を依頼しましょう。

サイト側が応じてくれれば、迅速かつ簡単に口コミを削除できます。拡散される前に削除できれば効果的です。もっとも、必ず対応してくれるとは限りません。

削除仮処分

サイト側が対応しないときは、裁判所に削除仮処分の申立てを行います。裁判所が認めれば、サイトが削除に応じるのが通常です。

裁判所での手続きになるため、必要な書面や証拠を提出しなければなりません。一般の方が行うのは大変ですので、弁護士への依頼をオススメします。

発信者情報開示請求

悪質な口コミに対しては、削除だけでなく投稿者本人への責任追及を望む場合もあるでしょう。もっとも、ほとんどの口コミは匿名でなされており、投稿者が誰かはわかりません。

投稿者を特定するために必要になるのが「発信者情報開示請求」です。サイトに直接請求しても応じてもらえない可能性が高いため、通常は裁判所を通じて請求します。裁判所が認めれば、サイト側に投稿者の情報を開示させられます。

裁判所での発信者情報開示請求の手続は複雑であり、かつ、IPアドレスの保存期間との関係でスピード対応が求められ、自らこれを実行するのは現実的ではありません。弁護士を通じて行うとよいでしょう。

損害賠償請求

投稿者が特定できたら、民事上の損害賠償請求ができます。精神的苦痛に対する慰謝料のほか、金銭的な損害の賠償も請求可能です。

もっとも、認められる慰謝料額は一般的には数十万円に過ぎず、多くても100万円程度です。病院側が受けたダメージや請求にかけた手間を考えると、決して高くはありません。慰謝料のほかに営業上の損害も請求できますが、実際に口コミと損害の因果関係を証明するのは難しいです。

刑事告訴

口コミの記載内容が名誉毀損罪をはじめとする犯罪を構成する場合には、刑事告訴ができます。刑事告訴とは、犯罪被害を受けた事実を捜査機関に申告し、加害者への処罰を求める意思を伝える行為です。

告訴しないと刑罰を科せない

名誉毀損罪は「親告罪」と呼ばれる類型の犯罪です。親告罪に該当する犯罪では、犯人に刑罰を科すためには刑事告訴が必須となっています。すなわち、名誉毀損罪では、告訴しない限り刑罰は科せません。

名誉毀損罪が親告罪とされているのは、被害者の名誉やプライバシーを守るためです。刑事裁判になれば公開の法廷で事実が明るみになり、かえって被害者を傷つけるおそれがあるため、罪に問うかを被害者の判断に委ねています。

名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪であるため、刑罰を科したいのであれば刑事告訴をしなければなりません。

親告罪について詳しくは、以下の記事をお読みください。

参考記事:親告罪とは?告訴の仕方や裁判までの流れを解説

示談を通じて再発防止を図れる

刑事告訴は一義的には刑罰を科すために行いますが、結果的に示談を通じて再発防止を図れるケースもあります。

口コミの投稿者は、多くのケースで軽い気持ちで書き込みをしており、罪悪感はさほどありません。しかし、名誉毀損罪で告訴がされると、加害者が「刑罰を科されるかもしれない」と考えるようになります。示談をして告訴を取り消してもらえば刑罰を免れるため、加害者としては示談に積極的になりやすいです。

示談交渉においては、投稿の削除、損害賠償の支払い、再度行った場合に削除等に要する費用の負担など、様々な条件をつけられます。相手は刑罰を科されるリスクを抱えた状態であるため、有利に交渉を進めやすいです。

結果的に、刑事告訴をきっかけに被害の回復や再発防止が可能になります。名誉毀損罪での告訴について詳しくは、次の記事をお読みください。

参考記事:名誉毀損で刑事告訴をする条件とは?匿名で名誉毀損された場合はどうすれば良い?

名誉毀損された医療機関が弁護士に相談・依頼するメリット

口コミによる名誉毀損の被害を受けた際には、弁護士にご相談ください。弁護士に相談・依頼するメリットとしては、以下の点が挙げられます。

とるべき手段がわかる

前述の通り、口コミで名誉毀損された際には、様々な法的手段をとれます。とはいえ、実際にいかなる手段をとるべきかを判断するのは難しいのではないでしょうか?

弁護士に相談すれば、口コミが名誉毀損に該当するか、いかなる法的手段をとれるかがわかります。手段ごとのメリット・デメリットや費用対効果についても説明を受けられるため、状況や希望に応じてとるべき手段が明らかになります。

対処方針のアドバイスを受けられる点は、弁護士に相談するメリットのひとつです。

各種手続きを代わりにしてもらえる

とるべき手段がわかっても、手続きを自力で進めるのは容易ではありません。とりわけ悪質な口コミへの対処はスピード勝負であり、時間がかかると被害が拡大するリスクが高いです。

弁護士に依頼すれば、各種手続きを任せられます。証拠の準備や裁判所への提出・出廷はもちろん、警察への刑事告訴のサポートも受けられます。

弁護士に面倒な手続きを任せてしまえば、時間が節約できるのみならず、精神的ストレスも軽減されるでしょう。法律面を任せられ本来の業務に集中できる点も、弁護士に相談・依頼する大きなメリットです。

交渉で優位に立てる

加害者への対応も弁護士に任せられます。

口コミで誹謗中傷をする人は、病院に何らかの不満を抱えており、直接やりとりするのに困難を伴います。代わりに弁護士が交渉すれば、ストレスから開放されるうえに、損害賠償や再発防止など、病院側に有利な条件をつけやすいです。

弁護士がつくとプレッシャーをかけられ、交渉でも優位に立てる効果があります。

誹謗中傷にお悩みの病院関係者はリード法律事務所にご相談ください

ここまで、口コミによる病院・歯科医院・美容クリニックへの誹謗中傷について、名誉毀損になるケースや対処法などを解説してきました、

医療機関の社会的評価を低下させるような事実が記載されていれば、名誉毀損に該当する可能性があります。投稿の削除、加害者の特定、損害賠償請求、刑事告訴といった選択肢から、状況や希望に応じて対処法を検討しましょう。

口コミによる名誉毀損にお悩みの病院関係者の方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は、犯罪被害者の皆様に寄り添って活動してきました。投稿の削除や民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事告訴を通じた責任追及も可能です。実際に、名誉毀損罪で刑事告訴に成功した実績も数多くございます。

ネット上の誹謗中傷に対しては、迅速な対応が不可欠です。「悪質な口コミを削除したい」「投稿者の責任を追及したい」などとお考えの病院関係者の方は、お早めにお問い合わせください。

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