詐欺被害にあったら

最終更新日:2024.07.22

詐欺の時効は何年?刑事・民事の時効期間や被害者がすべきことを解説

詐欺の被害に遭い、時間が経って気がついたときには時効に注意しなければなりません。刑事・民事ともに時効期間の定めが存在します。

刑事上の詐欺罪の公訴時効期間は7年です。犯行時からカウントされるので、気がついたときには時効が迫っているケースもあります。

民事上の損害賠償請求権の消滅時効期間は、被害と加害者を知ってから3年、あるいは行為時から20年です。

刑事・民事いずれについても、たとえ時効はまだ先でも証拠がなくなるリスクがあるため、早めの行動が肝心です。

この記事では、詐欺罪の刑事・民事の時効期間や被害者がすべきことを解説しています。詐欺被害に遭われた方は、ぜひ最後までお読みください。

成立要件や手口といった、詐欺罪に関する基礎知識を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

参考記事:詐欺罪とは?量刑や詐欺手口の種類、被害に遭ったらすべきことを解説

詐欺では刑事と民事の時効がある

詐欺の加害者に対しては、大きく分けて刑事と民事の両面で法的責任を追及できます。

  • 刑事:刑事告訴や被害届の提出により刑罰を求める
  • 民事:交渉や民事訴訟を通じて損害賠償や返金を請求する

いずれの方法についても、時効による期間制限があります。期限を過ぎると法的責任は追及できません。

まずは、刑事・民事それぞれの時効の意味を解説します。刑事事件と民事事件の違いについて詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

参考記事:刑事事件と民事事件の違いとは?民事訴訟を起こすベストなタイミングを解説

刑事の公訴時効期間

刑事上の時効は、正式には「公訴時効」という名称です。公訴時効期間を過ぎると、加害者を起訴して、刑事裁判を通じて刑罰を科すことはできません。期間の長さは、法定刑の重さや犯罪の性質に応じて、犯罪ごとに決まっています。

犯罪行為があったにもかかわらず時間が経てば処罰できないのは、被害者にとって納得がいかないでしょう。公訴時効期間が定められているのには、一般的に以下の理由があると考えられています。

  • 時間が経つと処罰感情が薄れる
  • 時の経過により証拠が散逸し、間違いのない裁判をするのが難しくなる
  • 犯人が一定期間訴追されなかったという状態を尊重する

こうした説明をされても「本当に妥当なのか」と疑問が湧くかもしれません。被害者の声を受けて、近年では時効期間の見直しが行われています。殺人罪などの時効が撤廃される、性犯罪の時効期間が延長されるといった法改正がなされました。

民事の消滅時効期間

民事上の時効は「消滅時効」と呼ばれます。消滅時効期間を経過すると、金銭支払いなど民事上の請求ができなくなってしまいます。

消滅時効についても、被害者からすると納得がいかないでしょう。制度の存在理由としては、以下の点が挙げられています。

  • 長い間続いた状態を尊重し、法律関係を安定させる
  • 時間の経過によって事実の立証が難しくなる
  • 長期間にわたって権利を放置した人は法律上保護するに値しない

刑事で公訴時効が定められている理由と似ています。民事における消滅時効では「長期間にわたって権利を放置した人は法律上保護するに値しない」との理由が挙げられるのが特徴的です。

詐欺の刑事の時効は何年?

詐欺にも、刑事と民事でそれぞれ時効の定めがあります。まずは、詐欺罪の公訴時効期間について説明します。

詐欺罪の公訴時効期間は7年

詐欺罪の刑事上の公訴時効期間は7年です。

犯罪ごとの公訴時効期間の長さは、主に刑罰の重さによって決まります。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり(刑法246条)、公訴時効期間は7年とされています(刑事訴訟法250条2項4号)。

詐欺の被害に遭ってから7年が経過すると時効になるため、加害者に刑罰は科せません。

時効の起算点

「時効が7年」といっても、いつから期間をカウントするかで時効の完成時点が変わります。時効のカウントを始める時点を「起算点」と呼びます。

詐欺罪の時効の起算点について詳しく見ていきましょう。

行為が終わった時

時効の起算点は「犯罪行為が終わった時」です(刑事訴訟法253条1項)。

詐欺罪(既遂)の場合には、被害者の財産が加害者に移転するという結果が発生した時点になります。加害者が騙すための行為をしてから被害者が財産を渡すまでにタイムラグがあったとき、時効の起算点は被害者が財産を渡したタイミングです。

詐欺は、被害者が騙されそうになっている事実に気がつき、未遂に終わっても処罰対象になります。詐欺未遂罪においては、加害者が騙すための行為をした時点が時効の起算点です。

共犯者がいるときは?

詐欺は組織的に行われ、共犯者がいるケースも多いです。共犯のときには、最後の行為が終わった時からすべての共犯者について期間のカウントが始まります(刑事訴訟法253条2項)。

たとえば特殊詐欺の「かけ子」の場合には、「かけ子」自身が電話をかけた時点ではなく、「受け子」が被害者から金銭を受け取ったタイミングが時効の起算点です。

時効がストップするケースもある

時効期間のカウントがストップするケースもあります。

代表的なのが、犯人が国外に逃亡したケースです。国外にいる期間は、時効のカウントがストップします(刑事訴訟法255条1項)。

他にも、共犯者のひとりが起訴されると、起訴された本人はもちろん、共犯者についても時効が停止されます(刑事訴訟法254条)。裁判が確定するまでは、共犯者の時効もストップしたままです。

いずれにしても、カウントがいったん止まるだけです。リセットされてゼロになるわけではありません。

詐欺の民事の時効は何年?

詐欺被害に対して民事上の請求をするときにも時効があります。

時効期間は、法律上いかなる権利を根拠に請求するかによって変わります。詐欺の場合、一般的には、不法行為に基づく損害賠償請求権が根拠です。ただし、契約関係がある場合には契約を取り消して返還を請求する方法も考えられます。

以下で詳しく解説します。

不法行為に基づく損害賠償請求の場合

詐欺加害者に支払いを求める場合、通常は「不法行為に基づく損害賠償請求権」を行使します。不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は「損害及び加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」のいずれか早い方です(民法724条)。

基本的には、被害を受けた事実と加害者を知ってから3年で時効にかかります。刑事とは異なり気がついていないと期間が進行しないので、刑事の時効が完成していても民事上の請求はできる可能性があります。

ただし、詐欺行為から20年が経過すると、気がついていないとしても民事上も時効になります。

契約を取り消す場合

加害者と契約を結んでいて、契約に基づいて財産を渡していたケースでは、詐欺による契約の取消しを主張して返還を請求する方法も考えられます。

取消権を行使できるのは、詐欺に遭ったと気がついてから5年、または契約から20年のうち早い方です(民法126条)。したがって、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間が経過していても、取消権は行使できる可能性があります。

詐欺が時効になる前に被害者がすべきこと

時効期間が経過すると、刑事告訴や民事上の請求ができなくなってしまいます。時効にかかる前に被害者がすべきことをまとめました。

すぐに行動を開始する

詐欺に気がつくと、落ち込んでしまい何もできなくなる方がいます。被害を受けた事実を誰にも話せない方も多いです。

しかし、何もせずに時間が過ぎると時効にかかってしまい、加害者への責任追及ができなくなります。お金を取り返せる可能性がある以上、何も行動を起こさないのはもったいないです。

悪いのは被害者の皆様ではありません。詐欺師の責任を追及するために、すぐに行動を開始しましょう。

証拠を集める

加害者の責任を追及するために、証拠を集めてください。民事にせよ刑事にせよ、法的手段をとる以上は証拠が不可欠です。

詐欺の証拠になる物の例としては、以下が挙げられます。

  • 詐欺師とのやりとりの記録(メール、LINE、SNSのメッセージなど)
  • 取引の際に作成した書面(契約書など)
  • 金銭支払いの記録(通帳、振込明細書、領収書など)
  • 振込先の口座情報
  • 相手の個人情報(名前、会社名、住所、電話番号など)がわかるもの

時間が経てば経つほど、証拠は失われていきます。すでに確認できない物もあるかもしれません。一刻も早く証拠を集め、残しておいてください。

損害賠償請求・刑事告訴をする

証拠が揃ったら、民事上の損害賠償請求や刑事告訴を検討します。いずれを選ぶかは自由であり、両方とも行っても構いません。

ただし、単に民事上の請求をしても、回収できないケースが多いです。

証拠が揃って民事訴訟で勝訴判決を得たとしても、自動的に支払いを受けられるわけではありません。相手が支払いに応じなければ強制執行を行いますが、詐欺は計画的に行われており、騙し取ったお金は執行できない財産になっている可能性が高いです。結果的に回収できなければ判決は絵に描いた餅であり、かけた時間や手間が無駄になってしまいます。

そこで、刑事告訴をご検討ください。

刑事告訴は、犯人に刑罰を求めるためにとる方法です。しかし、刑罰を科されるのを恐れた加害者が、示談交渉を申し入れてくるケースがあります。示談には示談金の支払いが伴うため、結果的に被害者は民事訴訟をせずとも被害の回復が可能です。

民事訴訟では回収ができなくても、刑事告訴をしたために返金を受けられるケースがあります。この点を踏まえて、いかなる法的手段をとるかを検討すべきです。

詐欺で刑事告訴するメリットについて詳しくは、以下の記事を参照してください。

参考記事:詐欺被害に遭ったら刑事告訴できる?事例と刑事告訴するメリットを解説

弁護士に相談する

詐欺被害に遭ったら弁護士にご相談ください。民事・刑事いずれの手段をとるにせよ、法的手続きをご自身で行うのは大変です。とりわけ時効が迫っているときには時間がないため、専門家に任せて迅速に進めてもらう必要があります。

弁護士に相談すると、状況や希望に応じて、いかなる法的手段をとるべきかのアドバイスを受けられます。手続きや加害者・警察とのやりとりも任せられるので安心です。結果的に、返金される可能性を高められます。

被害を受けると、警察への相談を検討する方もいらっしゃるでしょう。しかし、警察は「証拠が足りない」「詐欺罪にはならない」「単なる民事事件であり介入できない」などと理由をつけてなかなか取り合ってくれません。刑事告訴や被害届が受理されず、途方に暮れてしまう方も多いです。

そこで、弁護士に依頼して告訴状を作成してもらい、警察への説得も任せるのが得策です。ただし、刑事告訴に精通している弁護士は限られています。告訴に力を入れていて、受理させた実績が豊富な弁護士を探して、相談・依頼しましょう。

詐欺被害者側に強い弁護士や選び方については、以下の記事をお読みください。

詐欺被害者側に強い弁護士とは?刑事告訴に強い弁護士に依頼すべき理由

詐欺被害者側の弁護士費用や選び方|民事と刑事で異なる点を解説

詐欺被害に遭ったらすぐにリード法律事務所にご相談ください

ここまで、詐欺の時効について解説してきました。

詐欺罪の刑事上の時効は7年です。民事上の時効は、通常は気がついてから3年、行為時から20年です。契約を締結したケースでは、気がついてから5年までは取消権を行使できます。

時効にかかるまで時間があるとしても、証拠は消えていってしまいます。民事・刑事いずれにしても、被害に遭ったとわかったらすぐに行動を開始しましょう。

詐欺被害に気がついた方は、リード法律事務所までご相談ください。

当事務所は犯罪被害者弁護に力を入れており、刑事告訴に強い法律事務所です。証拠収集から告訴状の作成、警察への提出、加害者との交渉まで徹底的にサポートいたします。実際に詐欺罪で刑事告訴を受理させた事例も数多くございます。当事務所に詐欺罪の刑事告訴を依頼した際の流れを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

詐欺被害に遭われてお困りの方は、まずはお気軽にリード法律事務所までお問い合わせください。

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